2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K09394
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
林田 真理 杏林大学, 医学部, 助教 (60754364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久松 理一 杏林大学, 医学部, 教授 (60255437)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小腸潰瘍 / SLCO2A1遺伝子 / プロスタグランジン / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)アフリカツメガエル卵母細胞へのSLCO2A1発現系の確立:アフリカツメガエル卵母細胞を用いて輸送実験を行うためSLCO2A1遺伝子プラスミドから合成したcRNAを卵母細胞に注入し、細胞膜にSLCO2A1トランスポーターを強制発現させることに成功した (2)卵母細胞を用いたSLCO2A1トランスポーターのプロスタグランジンE2輸送実験の確立:SLCO2A1トランスポーターを強制発現させた卵母細胞と蒸留水の注入を行った卵母細胞(コントロール)を用いて、輸送実験の予備実験として既知の基質であるプロスタグランジンE2の取り込み実験を施行。SLCO2A1トランスポーターを強制発現させた卵母細胞でのプロスタグランジンE2の取り込みを確認した (3)SLCO2A1トランスポーターにおけるプロスタグランジンE2と性ホルモンの輸送動態の確認:SLCO2A1トランスポーターの既知の基質であるプロスタグランジンE2と共に性ホルモンの取り込みを行い共輸送の有無の確認を行った結果、女性ホルモンとの同時輸送においてプロスタグランジンE2の取り込みが僅かに増すことを確認した。性ホルモンがSLCO2A1トランスポーターの基質でありプロスタグランジン輸送にも関わる可能性が示唆された (4)mutant SLCO2A1トランスポーターのプロスタグランジンE2輸送機能:CEAS患者に認められたSLCO2A1遺伝子変異型の発現プラスミドを作成し、RNAを卵母細胞に発現させプロスタグランジンE2の輸送実験を行い、変異による取り込み機能の差を確認した。残りの変異についても実験を行っていく (5)ノックアウトマウスの腎臓メサンギウム細胞の質量分析:SLCO2A1ノックアウトマウスと正常マウスの糸球体組織の質量分析を行い代謝産物の差の解析を行ったところ、雌マウスのみにおいて4物質に差が見られ、雄マウスでは認めなかった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度から30年度にかけて、強制発現卵母細胞を作成するためのSLCO2A1導入プラスミドを作成し、卵母細胞へのトランスポーターの強制発現の技術を確立できた。 また平成29年度の予定であったSLCO2A1トランスポーターの基質候補の同定に関しては、女性ホルモンとの混合輸送でプロスタグランジンE2の取り込みが上昇することから候補基質として挙がっており、ノックアウトマウスと通常マウスの腎臓メサンギウム細胞の質量分析で差が出たSteroid 21-hydroxylase、Chromogranin-A、Protein MGARP、3 beta-hydroxysteroid dehydrogenase/Delta 5 -->4-isomerase type 1の 4物質についても基質の可能性が出ている。SLCO2A1トランスポーター強制発現卵母細胞での輸送実験は現在途中であり、引き続き実験を続けていく。 平成30年度の予定である正常のSLCO2A1遺伝子及び変異SLCO2A1遺伝子を導入した卵母細胞を用いての輸送動態の確認についても既に開始している。 以上から研究の進展としてはおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)変異SLCO2A1を中心とした卵母細胞を用いたSLCO2A1トランスポーター輸送機能の解析:平成29年度に引き続き卵母細胞を用いて患者で報告されているすべての変異SLCO2A1トランスポーターの輸送実験を行い、正常SLCO2A1トランスポーターと変異でのプロスタグランジンE2の輸送機能の差を明らかにする。 (2)mutant SLCO2A1トランスポーターの機能と臨床症状との比較:CEAS患者の中にはSLCO2A1遺伝子に複合ヘテロ接合体を持つ症例も多い。(1)におけるmutant SLCO2A1トランスポーターの輸送機能と罹患者のゲノム解析結果、臨床症状との比較検討を行い変異の組み合わせによる臨床症状への影響の有無を調べる。 (3)SLCO2A1トランスポーターの基質候補の特定:これまでの実験により性ホルモンが基質となっている可能性が示唆されているが、他プロスタグランジンや質量分析で差の出た物質などがSLCO2A1トランスポーターの基質となりうるか質量分析や輸送実験により調べていく。 上記の実験からSLCO2A1トランスポーターの機能とCEASの病態との関連を推定し、現在治療法のないCEASの治療法を探していく。
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Causes of Carryover |
他研究で使用している消耗品を流用したことと、輸送実験に用いる細胞としてアフリカツメガエルの卵母細胞を主に用いて輸送実験を行ったことから細胞培養・トランスフェクション用の試薬費用が当初の予定より少なくなったことによる。 平成30年度の使用計画は、引き続き卵母細胞を用いた輸送実験を続けること、また質量分析による基質同定も行うことから、経費として輸送実験に用いるプラスミド作成のためのPCRキットに20万/年、RNA合成キットに30万/年、安定同位体標識化合物に50万/年、輸送実験試薬類に10万/年、アフリカツメガエルの飼育費に10万/年、蛍光免染・抗体に30万/年と概算する。また質量分析用消耗品に50万/年使用すると概算する。
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