2017 Fiscal Year Research-status Report
The impact of lipid composition alteration via beta-oxidation failure on the pathophysiological linkage between nonalcoholic steatohepatitis and sarcopenia
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17K09440
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 教授 (20317382)
李 賢哲 順天堂大学, 医学部, 助教 (30758321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / サルコペニア / リピドミクス / ジェロントロジー / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓における脂肪酸代謝の変化が肝臓では非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を生じ、骨格筋においては加齢性の骨格筋委縮(サルコペニア)の発症に寄与するとの仮説を証明するため、マウスモデルを用いた研究を行った。8週齢(若年マウス)と55週齢(加齢マウス)の雄性C57BL6マウスに通常食(ND)もしくは高脂肪食(HFD)を投与し、肝臓および骨格筋に与える影響をみた。ND摂取群では若年・加齢マウス間で肝組織・筋組織ともに有意な差を認めなかった。HFD摂取により若年マウスの肝臓では軽微な脂肪滴沈着を生じるに留まったのに対して、加齢マウスでは肝細胞周囲線維化を伴う著明な脂肪沈着および風船様変性を認め、ヒトのNASHに酷似した病理像を呈した。また、HFD摂取加齢マウスでは他群よりも四肢筋力の低下および腓腹筋重量/体重および足底筋/ひらめ筋(速筋/遅筋)比の低下を認め、サルコペニア様の骨格筋委縮の進行が示された。 加齢マウスでは若年マウスと比較し、高脂質負荷に対して反応すべき脂肪酸分解および脂質の細胞外輸送に関与するシグナルの亢進が鈍化しただけでなく、脂質合成の亢進を認めた。リピドミクス解析では加齢マウスでは若年マウスと比較して、HFD負荷によって肝組織中のTAG、DAGといった中性脂質の量が大幅に増加しただけでなく、ω3脂肪酸基を有する脂質の比率の低下を認め、さらに加齢マウスでは脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現が低下していることを見出した。よって、加齢マウスで発現が脂質負荷に対する肝内脂質の量的・質的な変化が脂肪毒性の増加に寄与したことが示唆された。より上流の変化としては肝組織中のSIRT1の発現低下を示す結果が得られた。 これらの結果は平成29年の米国肝臓学会(米国・ワシントンDC)で第一報を発表し、国内では平成30年の第104回日本消化器病学会総会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究発案段階では高脂肪食負荷に対する肝・骨格筋の脂質代謝の変化を見るために肥満糖尿病モデルマウスのKK-Ayの使用を検討していたが、加齢マウスの入手が可能であったため、よりヒトのサルコペニアに似た病態をきたしうるモデルとして55週令のC57Bl6マウスを使用した。その結果、加齢マウスでは高脂肪食負荷によって容易に顕著な脂肪性肝炎を生じ、骨格筋の筋力低下および速筋重量の減少をきたすことを明らかにした。速筋/遅筋比の低下を伴うサルコペニアモデルはほとんど報告がなく、NASHの研究だけでなく、サルコペニアの研究を行う上でも極めて有効な動物モデルを構築することができた。当初の案では脂肪酸β酸化を基軸に肝臓および骨格筋連関により脂肪性肝炎・サルコペニアの病態形成を生じると予測し、実際、HFD摂取加齢マウスでは脂肪酸β酸化の障害を生じていたが、実験結果からは脂肪酸分解に限らず脂肪酸合成系、脂質輸送系といった極めて幅広い脂肪酸代謝の変化が肝・筋病態の関連に関与している可能性を示す結果が得られた。また、加齢マウスで脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現が低下していることを見出したことは、次年度の研究に移行する上で極めて重要なステップになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度に確立した加齢マウス+HFD摂取モデルを用いて、肝・骨格筋病態形成における肝の脂質代謝の役割を明らかにしていく。 平成29年度のリピドミクスの結果からは、特定の脂質単体による影響よりも脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の変化など脂質合成・代謝の変化による脂質プロファイルの変化が肝・骨格筋病態に寄与している可能性が示された。この結果をもとに、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のノックアウトマウスを用いてHFD負荷による肝・骨格筋の病態の変化を解析し、脂肪酸合成プロセスが病態形成に寄与するプロセスを解明する。また、肝臓における脂質代謝の変化が骨格筋委縮に与える影響を明らかにするため、骨格筋におけるサイトカインおよび脂質プロファイル、脂質代謝酵素の変化を解析して骨格筋委縮の機序と原因となっている脂質関連因子を明らかにする。さらに、研究開始当初の予定通り、肝・筋病態を形成する上での肝臓構成細胞(肝細胞・クッパー細胞・星細胞・肝類洞内皮細胞)の役割を明らかにするため、肝組織染色と培養細胞を用いた実験を行う。 続報を平成30年度の国際学会で発表し、論文作成の準備を行っていく予定である。
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