2018 Fiscal Year Research-status Report
The impact of lipid composition alteration via beta-oxidation failure on the pathophysiological linkage between nonalcoholic steatohepatitis and sarcopenia
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17K09440
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 教授 (20317382)
李 賢哲 順天堂大学, 医学部, 助教 (30758321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非アルコール脂肪肝炎 / サルコペニア / リピドミクス / ユビキチン化 / ジエントロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では肝臓における脂肪酸代謝の変化が肝臓では非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を生じ、骨格筋においては加齢性の骨格筋委縮(サルコペニア)の発症に寄与するとの仮説を実証するため、前年度では若年(8週令)および加齢マウス(55週令)を用いた実験を行った。その結果、8週間の高脂肪食(HFD)投与後、加齢マウスではヒトのNASHに酷似した肝病理像を呈し、サルコペニア様の骨格筋委縮の進行を生じたことを示した。これらの結果は平成30年米国肝臓病学会(米国・サンフランシスコ)でアップデートとして報告した。 前年度の結果から、本年度では高脂肪食摂食下における骨格筋の萎縮が生じるメカニズムとその病態への肝の関与についての解析を進めた。肝組織ではヘパトカインのselenoprotein P (SeP) mRNAの肝組織中の発現は加齢HFD群でのみ有意に亢進し、IGF-1 mRNAの発現はHFDにより若年・加齢マウス共に通常食群より低下したが、加齢群は若年群よりも有意に低下した。一方、SePの受容体にあたるLRP1 mRNAの腓腹筋における発現は若年HFD群より加齢HFD群で有意に亢進し、SePで負に制御されるPGC1αのmRNA発現は加齢HFD群で有意に低下した。ユビキチンリガーゼのAtrogin-1、MuRF-1 mRNAの発現は、若年HFD群と比べ加齢HFD群で有意に亢進した。これらの結果から、加齢マウスではHFD負荷による脂肪肝炎が増悪するだけでなく、肝におけるSePの発現亢進およびIGF-1の発現低下を生じ、骨格筋におけるエネルギー代謝の減少、ユビキチン化が誘導され、筋萎縮が惹起された可能性が示された。これらの結果は平成31年米国消化器病学会週間(DDW:米国・サンディエゴ)で採択され、5月に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の結果から、本年度は加齢マウスのHFD摂取時の肝・骨格筋の病態形成における肝―筋連関の役割を解明することに重点を置き、ヘパトカインのSePを起点とした骨格筋萎縮のプロセスを示して病態メカニズムの一端を示すことができた。これらの結果は昨年度の研究報告の際に予定した研究を実行して得られた、期待通りの成果といえる。また、NASHとサルコペニアの関連を解明した研究は少なく、本年度の研究結果は当該研究で用いた動物モデルの重要性を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は平成29-30年度の結果から、肝・骨格筋病態形成における肝臓の脂質代謝の役割をさらに裏付ける研究を行っていく。 平成29年度のリピドミクスの結果からは、特定の脂質単体による影響よりも脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の変化など脂質合成・代謝の変化による脂質プロファイルの変化が肝・骨格筋病態に寄与している可能性が示された。この結果をもとに、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のノックアウトマウスを用いてHFD負荷による肝・骨格筋の病態の変化を解析し、脂肪酸合成プロセスが病態形成に寄与するプロセスを解明する。さらに、研究開始当初の予定通り、肝・筋病態を形成する上での肝臓構成細胞(肝細胞・クッパー細胞・星細胞・肝類洞内皮細胞)の役割を明らかにするため、肝組織染色と培養細胞を用いた実験を行う。また、ヒトのNASHの肝臓における不飽和化酵素の発現を評価することで、今回の動物モデルで得られた結果がヒトの病態でも見られるかどうかを確認する。 続報を平成31年度の国際学会で発表し、論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
購入したウエスタンブロット用の抗体の到着が予定より遅れたため、次年度分に持ち越した。繰越の形で次年度の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)