2017 Fiscal Year Research-status Report
膵癌患者血清中細胞外小胞EVにおける長鎖機能性RNAの発現、機能解析
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17K09450
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高橋 賢治 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (00736332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小暮 高之 東北大学, 大学病院, 非常勤講師 (70400330)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵癌 / long non-coding RNA / extracellular vesicles / liquid biopsy / EMT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、膵癌早期診断、進展予測に寄与する血清EV中の新規lncRNAを同定し、その膵癌における浸潤、転移を含めた進展制御機構とEVを介した情報伝達機構を解明する事を目的としている。我々はこれまでに膵癌患者、健常者よりそれぞれ3 検体ずつ血清を採取後、血清中のEVよりRNAを抽出し、65263 遺伝子の発現変化をDNA microarrayを用いて網羅的に解析した。その結果、膵癌患者血清EV 中で特に高発現しているlncRNA として、5種類のlncRNAを同定していた。 本年度の研究実績として、これら5種類のlncRNAのうち、2種類のlncRNA(lncRNA(A)、lncRNA(B))について、その機能解析とバイオマーカーとしての有用性を検証するために以下の検討を行った。1) 2種類のlncRNAの膵癌細胞とそれらから分泌されるEVにおける発現様相の解析。2) 膵疾患患者検体中のEV中lncRNAの発現解析。3) LncRNAが膵癌細胞における形態、機能、遺伝子発現に及ぼす影響の解析。 1)の結果から、2種類のlncRNAは正常膵管上皮細胞に比べて膵癌細胞において高発現し、それらから分泌されるEVにも高発現しており、膵癌において癌遺伝子としての機能を有する可能性が示唆された。また、2)においては別途膵癌患者血清、IPMN患者血清、健常者血清を各15検体ずつ採取し、EV中の発現変化を解析した。その結果、2種類のlncRNAともに膵癌患者血清で高発現する傾向が認められた。更に、3)の検討から、lncRNA(A)は膵癌細胞におけるEMT経路促進を経て、細胞浸潤、遊走能を増強する可能性が示唆された。また、lncRNA(B)については、アポトーシスの制御に関わる可能性を示唆する結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間で、少なくともlncRNA(A)とlncRNA(B)の2種類のRNAが、膵癌における癌遺伝子として働く新たなlncRNAである可能性が示唆された。すでにlncRNA(A)は膵癌におけるEMTに、lncRNA(B)はアポトーシスの制御に関わる可能性が示唆されており、今後は具体的な制御機構を検証する予定である。また、これら2種類のlncRNAは膵癌患者血清中EVに高発現しており、新たなバイオマーカーとしての有用性も期待される結果が得られている。以上より、本研究は当初の予定通りおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2種類のlncRNAがそれぞれどのように、膵癌におけるEMTやアポトーシスを制御するのかを詳細に解析する。また、引き続き患者血清の採取を進め、より多くの検体におけるバイオマーカーとしての有用性を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)一部の実験において他の研究資金を使用した事から、今年度の使用額が当初の見込みより減額となったため。
(使用計画)主にlncRNAの機能解析実験に使用する試薬や、患者検体からEVを抽出し、EV内RNAの発現解析をするために必要な試薬の購入費として使用する。
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