2017 Fiscal Year Research-status Report
膵癌における早期エピゲノム診断を目指したマイクロRNA発現異常領域の同定
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17K09456
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大坪 公士郎 金沢大学, 附属病院, 講師 (60361987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 要 金沢大学, 附属病院, 助教 (80456425)
三宅 邦夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (60550712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵癌 / 胆道癌 / miRNA / メチル化 / 胆汁 / ERCP |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は極めて予後不良な悪性腫瘍であり、その要因として早期診断が極めて困難であることが挙げられる。一方、近年の分子生物学の進歩により癌に特異的に発現するmiRNAが種々の癌で見出されつつあるが、膵癌では未だ不明の点が多く、現在までmiRNAを用いた膵癌の早期診断についてはほとんど報告されていない。 本研究では、膵癌症例から内視鏡的に採取した膵癌組織、膵液,胆汁などの臨床サンプルを用いて、主に癌抑制型miRNAにおけるメチル化によるサイレンシングに関する検討を行い、早期膵癌においてメチル化されている癌抑制型miRNAを同定することにより、膵癌早期診断マーカーを確立することを目的とした。 まず、胆汁における癌抑制型miRNAのメチル化に関する検討を行った。当科にて内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) 時に胆汁を採取した膵癌26例、胆道癌10例、良性膵胆道疾患9例を対象とした。各サンプルからDNAを抽出し、癌抑制型miRNAと報告されている16のmiRNAにおいて次世代シーケンサーを用いてメチル化の解析を行った。 16のmiRNAのうち、8つのmiRNA (MiR30a3p, 34a, 34bc, 96, 126, 141, 200a, 200bc) では疾患間でメチル化率に差がみられたため、さらなる解析を行った。MiR30a3p, 34a, 34bc, 96において、胆道癌が膵癌、良性膵胆道疾患と比較して有意にメチル化されている部位がみられた。一方、膵癌においては、他の疾患と比較して有意にメチル化されている部位は認められなかった。 膵胆道疾患における胆汁での癌抑制型miRNAのメチル化によるサイレンシングに関する検討では、主に胆道癌において高頻度にメチル化を認め、他の疾患との鑑別に有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、手術あるいは超音波内視鏡下穿刺術 (EUS-FNA) にて採取した膵癌組織を用いてmiRNAの発現について検討しようとしたが、RNAがうまく抽出できなかった。その後、上記組織を用いてDNAのメチル化の検討を行おうとしたが、DNAもうまく抽出できなかった。 その後、膵癌、胆道癌、良性膵胆道疾患における胆汁を用いてDNA抽出を試みたところ、今後解析可能なDNAを抽出することができた。当初miRNAのメチル化の網羅的な検討を行おうと考えていたが、時間、費用がかなりかかることが予想されたため、まずは既知の癌抑制型miRNAを検討することとした。今回の研究においては、多数のmiRNAを選定し、1つのmiRNAについても近傍のCpGアイランドのプライマー部位を10~20か所程度設定する必要がある。また、上記についてPCRを行った後、次世代シーケンサーにて解析する必要がある。現在までこれらの解析に多くの時間を要したことより、当初の計画よりも進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの胆汁を用いた解析においては、胆道癌において高頻度にメチル化を認め、他の疾患との鑑別に有用である可能性が示唆されたが、膵癌において他の疾患と比較して有意にメチル化されている部位は認められていない。 今後新たなmiRNAを追加し、さらに解析するメチル化の領域を増やすことにより、膵癌にて特異的にメチル化されているmiRNAを探索する予定である。その後、主に早期膵癌から内視鏡的に採取した膵液や血液 (血清、血漿) を用いてmiRNAのメチル化に関する検討を行い、早期膵癌においてメチル化されているmiRNAを同定したい。さらに、メチル化されているmiRNAにおけるRNAの発現状況についても確認したい。
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Causes of Carryover |
今後購入を予定していた物品がH29年度に残った金額では購入できないため、H30年度の交付分と合わせて購入する必要が生じたため。
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