2018 Fiscal Year Research-status Report
アルコール代謝酵素の遺伝子多型と循環器疾患の生命予後に関する研究
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17K09495
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
林 秀樹 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70464188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 稔 滋賀医科大学, 医学部, 特任教授 (90183938)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルコール代謝酵素 / 遺伝子多型 / ブルガダ症候群 / 心室細動発作 / ADH1B / ALDH2 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルコール代謝酵素は、日本を含む東アジア人で、Loss-of-function型の単一塩基多型(SNP)が存在する。アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)はエタノールをアルデヒドに分解し、そのSNPであるArg47Hisは、その代謝効率が、ホモ(His/His)の場合、Arg/Argに比べて約40倍に高くなり、したがって急速にアルデヒドが産生され、その血中濃度は急速に高くなる。一方、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)は、アルデヒドを分解して酢酸に代謝するが、そのSNPであるGlu504Lysは、ホモ(Lys/Lys)の場合、その酵素活性は著しく低下し、Glu/Gluに比べて、約4%になる。したがって、血中アルデヒドの分解が著しく遅延することになる。我々は、遺伝子不整脈で夜間に心室細動を起こし突然死を来すBrugada症候群患者が、飲酒後に発作をおこすこと、国際的なガイドラインでも、過剰な飲酒を避けるように指示されていること、さらに本邦では、比較的Brugada症候群患者が多いことから、この2つのアルコール代謝酵素のSNPとBrugada症候群いおける飲酒後の心発作との関係を、1998年から集積している我々のコホートデータを検討した。対象症例は、198例のBrugada症候群患者で、うち90例は、心室細動の既往、失神などの有症候例で、のこり108例は、心電診断を受けたが無症候例であった。90例のうちアルコール飲酒と明らかに関連した症状を呈したのは16例あった。全例で、2つのSNP型を検出した。ALDH2のSNP分布に、症候の有無やアルコール誘発のありなしは、関係なかった。一方、ADH1BのSNP分布は、症候の有無により差はなかったが、アルコール誘発群において、優位にHis/His型が高頻度であった(81.3% vs 50.0%, P=0.23)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このアルコール代謝酵素の遺伝子多型と循環器疾患の生命予後に関する研究の成果、現在、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに、飲酒後の心発作との関連を多変量解析において検討したところ、ADH1B His/His型を有すると、オッズ比 5.75(Confidence interval 1.58-28.42、P=0.007)で、リスクとなることが示された。したがって、国際コンセンサスレポートにおける。過度の飲酒を避けるようにとのアドバイスは、日本人例でも意義のあるものであることが、証明された。 今後、この観察の臨床的意味を明らかにしたい。ひとつの説明は、SuperMetabolizerである、ADH1B His/His型は、優位に急速かつ高いレベルの血中アルデヒドレベルに達すると考えられるが、アルデヒドは、末梢からのカテコラミン遊離を促し、交感神経活性を著しく高める。飲酒をやめると、この高レベルのアセトアルデヒドの減少とともに、いわゆるRebound減少を起こし、副交感神経の増強を起こす可能性がある。Brugada症候群患者では、副交感神経の緊張増加と、心発作の関連が示されており、この観点からも、飲酒後のイベント発症と関連があるかもしれない。 自律神経のモニターとして、ホルター心電図法により記録された心電図情報からHeart Rate Variabilityを測定する方法がある。今後の臨床的研究として、飲酒後の心発作例での、ホルター検査を施行し、交感・副交感神経活性と変化を調べることを計画している。 なお、このアルコール代謝酵素の遺伝子多型と循環器疾患の生命予後に関する研究の成果、現在、論文投稿中である。
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Causes of Carryover |
人件費と消費税増税の調整のため
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[Journal Article] Clinical Manifestations and Long-Term Mortality in <i>Lamin A/C</i> Mutation Carriers From a Japanese Multicenter Registry2018
Author(s)
14.Nakajima K, Aiba T, Makiyama T, Nishiuchi S, Ohno S, Kato K, Yamamoto Y, Doi T, Shizuta S, Onoue K, Yagihara N, Ishikawa T, Watanabe I, Kawakami H, Oginosawa Y, Murakoshi N, Nogami A, Aonuma K, Saito Y, Kimura T, Yasuda S, Makita N, Shimizu W, Horie M, Kusano K.
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Journal Title
Circulation Journal
Volume: 82
Pages: 2707~2714
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] SCN5A mutations in 442 neonates and children: genotype?phenotype correlation and identification of higher-risk subgroups2018
Author(s)
30.Baruteau A, Kyndt F, Behr ER, MD, Vink AS, Lachaud M, Joong A, Schott J-J, Horie M, Wilde AA, Schwartz PJ, Probst V. (et al.)
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Journal Title
European Heart Journal
Volume: 39
Pages: 2879~2887
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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