2019 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災地域住民における心電図指標と循環器疾患発症危険に関する研究
Project/Area Number |
17K09520
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
田中 文隆 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (80405761)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心電図 / 慢性腎臓病 / 心血管疾患 / コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 本研究は、研究参加者10,374名の12 誘導心電図(ECG) をミネソタ基準に準じてコード化し、ECG 指標を本コホート集団の追跡用データベースに組み入れることにより、各ECG 指標と循環器疾患発症との関連を明らかにすることを目的としている。統計ソフト (SPSS)を用いて、各左室肥大(ECG-LVH)指標および血圧や糖・脂質代謝指標、喫煙などの生活習慣といった従来の危険因子と循環器疾患発症との関連について縦断解析を行った。 2. 心電図の左室肥大(ECG-LVH)を、以下の3つの基準に準拠し定義した。1) Sokolow Lyon voltage (SV1 + RV5/V6)≧3.8mV; 2) Cornell voltage (SV3 + RaVL)≧2.8mV (男性), 2.0mV (女性); 3) Cornell voltage product [Cornell voltage (+ 0.8mV,女性) × QRS]≧244mVms。 3. 平均11.3年の追跡期間に、1,886名(26.2%)に脳卒中および心筋梗塞、内因性急性死、心不全が発症した。いずれかのECG-LVHの指標を有する慢性腎臓病(CKD)患者で、これらの複合アウトカムのリスクが有意に増加した(ハザード比 1.47, p=0.002)。一方で、この関連は非CKD患者ではみられなかった(ハザード比 1.15, p=0.210)。ECG-LVHを有するCKD患者の心血管リスク増加は、年齢、性とは独立しており、既知の心血管リスク因子である高血圧や糖尿病の非併存群においても依然有意であった。ECG-LVHの指標を古典的心血管リスクモデルに加えることで、心血管リスク分類の精度が有意に増加した (net reclassification improvement=0.13-0.32,p<0.040).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遅延していた12 誘導心電図の解読作業を終了し、データ・クリーニングの後、データセット作成を完了し、12 誘導心電図指標と脳卒中および心筋梗塞、内因性急性死、心不全の複合アウトカムのリスクとの関連について縦断解析を終えた。今後は、本研究結果を実地診療へ適用することの意義と展望について、考察を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.岩手県沿岸地域住民コホ-ト研究参加者のうち、心血管病既往例とデータ欠損例、40歳未満例を除外後、ミネソタコード化された安静時12誘導心電図(ECG)から、左室肥大(LVH)を定義する。また、ベースラインの交絡因子として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、現喫煙、慢性腎臓病を既知の診断基準に準拠して定義する。年齢と血清クレアチニン値から、推算糸球体濾過量を the Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration (CKD-EPI) 式により算出する。さらに、フラミンガム10年リスクスコアを、ベースライン時の年齢、総およびHDLコレステロール値、収縮期血圧値、降圧薬による加療状態、喫煙状況、糖尿病罹患の有無により算出する。対象地域の全病院のカルテベースでの発症登録調査によって得られた脳卒中または心筋梗塞、内因性急性死、心不全のいずれかの初回発症をアウトカムと定義する。 2.統計解析ソフト (SPSS)を用いて、ECG-LVH指標と年齢、性、脂質異常症、高血圧、糖尿病の罹患、喫煙状況、推算糸球体濾過量をコックス比例ハザード回帰モデルに含め、ECG-LVH指標と上記アウトカムとの関連について多重解析を行う。 3.上記の関連が、年齢や性別、高血圧、糖尿病罹患有無によって層別化されたサブグループ別にも同様に認められるかについても解析する。 4さらに、ECG-LVHの指標を古典的心血管リスクモデルに加えることによる心血管リスク分類の精度として、the net reclassification improvementとthe integrated discrimination improvementを解析する。 5.ECG-LVH指標と既知の心血管リスク因子との組み合わせによる心血管リスク評価の臨床的意義について考察する。
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Causes of Carryover |
当初、平成30,31年度に解読作業を終了した12 誘導心電図データを,平成31年度内にデータベースへ組み入れることを計画していた。しかし、12 誘導心電図の解読作業および血圧や糖・脂質代謝指標、喫煙などの生活習慣指標の入力作業に、当初計画より遅延が生じた。さらに、すでに入力を終了したデータセットの一部にデータ欠損などのヒューマンエラーが発覚した。よって、翌年度分として請求した助成金を人件費にあて、最終的に研究協力者がデータ・クリーニングを行った。すでに、データ・クリーニングおよびデータベース作成が完了し、本テーマに関する縦断解析が終了している。現在、得られた研究結果の解釈と考察を行っている段階にある。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Association between high-sensitivity cardiac troponin T and future cardiovascular incidence in a general Japanese population: results from the Tohoku medical megabank project.2019
Author(s)
Takahashi Y, Satoh M, Ohmomo H, Tanaka F, Osaki T, Tanno K, Nasu T, Sakata K, Morino Y, Sobue K, Sasaki M
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Journal Title
Biomarkers
Volume: 24
Pages: 566-573
Peer Reviewed
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