2021 Fiscal Year Annual Research Report
Monitoring of cancer therapeutics-related cardiac dysfunction with echocardiography and cardiac biomarkers in patients with gastric cancer
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17K09540
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
渡邉 直 公益財団法人がん研究会, 有明病院 総合診療部 循環器内科, 副医長 (00597271)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤性心筋症 / トラスツズマブ / 胃がん |
Outline of Annual Research Achievements |
胃がんに対する化学療法を受ける患者を登録するための、データベースシステムを構築した。心毒性が報告されているトラスツズマブを含む化学療法を受ける患者群に加えて、心毒性発現率の低い化学療法を受ける患者群も登録した。心エコー図検査の指標を中心に、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やST2等の心機能バイオマーカー、冠危険因子の既往等の病歴を検討項目とした。トラスツズマブを含む化学療法群24名(47%)と、トラスツズマブを含まない化学療法群27名(53%)を、治療前後で比較検討した。 登録した51名のうち、4名(7.8%)が、薬剤性心筋症を発症した。トラスツズマブ群で、3名(12.5%)、対象化学療法群で、1名(3.7%)であった。左室駆出率の化学療法前からの変化量の平均値は、トラスツズマブ群-6.0%、対象化学療法群1.5%であり、トラスツズマブ群で有意な低下を認めた(P=0.001)。トラスツズマブ群において、薬剤性心筋症を発症した群では、治療開始時に心疾患の既往があり(P<0.05)、心エコー図検査での大動脈径(P<0.01)、左室壁厚(P<0.05)、左室内径および容積(P<0.05)が大きく、左室駆出率(P<0.05)、左室内径短縮率(P<0.05)が小さかった。BNP、高感度トロポニンI, 高感度CRP、ST2は、両群で差を認めなかった。 これまで、トラスツズマブの心毒性に関する研究は、主に対象患者数の多い乳がん患者で行われてきた。今回の検討で、胃がんにおいても、乳がん患者での報告と同程度の左室駆出率の低下が示された。また、トラスツズマブ投与群において、心疾患の既往があり、左室収縮指標が低下傾向を示す症例は、薬剤性心筋症を高率に発症する可能性が示唆された。これまでの結果は、比較的症例数が少ないため、今後さらに症例数を重ね、この結果をより確実にする必要があると考える。
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