2018 Fiscal Year Research-status Report
質量分析法による薬剤血中濃度測定をもとにしたテーラーメイド抗凝固療法の確立
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17K09541
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
宮本 康二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (50726429)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗凝固療法 / 心房細動 / 血中濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトンポンプ阻害薬服用と直接経口凝固薬(DOAC)の血中濃度との関連性を検討し、2018年第66回心臓病学会総会において発表を行った(演題名:心房細動カテーテルアブレーション周術期患者におけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)服用による直接経口抗凝固薬の血中濃度への影響)。 心房細動に対するカテーテルアブレーションが行われた患者のうち、DOAC服用患者でかつ血中濃度の測定を行えた262名の内、1日2回服用のダビガトラン(DABI 38例、そのうちPPI内服例が10例、非内服例が28例)とアピキサバン(APX 104例、そのうちPPI内服例が38例、非内服例が66例)に焦点を当てて解析を行った。PPI併用群(PPI+) vs. 非併用群(PPI-)での比較であるが、まず患者背景には差を認めなかった。DABIの血中濃度/投与量比(C/D比)の比較では、0.046±0.037 vs. 0.104±0.094(P=0.069)であり、PPI+で低濃度の傾向があった。APXのC/D比は17.5±9.7 vs. 14.4±6.2(P=0.045)であり、PPI+の方が高濃度であった。 既報の結果からもDABI血中濃度は、PPI併用による胃内pH上昇によって、その溶解度が低下し吸収が低下することで血中濃度が低下することが報告されている。一方のAPXは、これまでPPI併用による血中濃度の変動についての報告はないが、本研究の結果からPPI併用によりAPX血中濃度が上昇する可能性がある。その作用機序としてはAPXの代謝・排泄に関わるこれらの因子のうち、特にPPIと関連が深いCYP2C19やBCRPの関与が考えられる。今後の解析によりさらなる検討を深めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究計画は以下の3点であり、現段階での進行状況を報告する。 1. データベースの更新、DOACの血中濃度測定、腎機能障害の有無・程度の検討を行う→平成30年度開始時点で我々が有していたDOAC内服中の心房細動患者約2500例に加え、 約500例の臨床データ【年齢、身長、体重、CHADS2 score (うっ血性心不全、高血圧、年齢、糖尿病、脳梗塞・一過性脳虚血発作の有無)、心機能、腎機能など】を収集し、データベースに追加した。 2. 臨床経過(出血性合併症の有無・程度、塞栓症の発生など)を追跡する。→電子カルテを用いて本研究対象患者の臨床経過(出血性合併症を含む合併症、塞栓症、DOAC継続の有無、死亡など)を追跡し、データベースに追加した。 3. DOACによる出血性合併症発生リスクの定量化を行う。→リスクの定量化は本研究への登録が終了する平成31年度にまとめて行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータベースの更新を行う。 今までの我々の研究から、抗凝固薬内服中に腎機能障害が出現・進行する症例では、出血性合併症が増加するということが分かっている(Miyamoto et al. Heart and Vessels, 2016)。したがって、研究登録開始時のみではなく、その後のフォローアップ時にも腎機能の評価を行い、臨床経過との関連を検討する。 本年度は、本研究の最終年度であり、最終的に本研究で登録された全症例を対象として、DOACによる出血性合併症発生リスクの定量化を行う。また現在用いられているDOACの適応および用量調節基準の妥当性を検討する(通常用量内服例と低用量内服例でのDOAC血中濃度および出血性合併症の比較)。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は2,303円のみであり、ほぼ計画通りに使用しています。
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