2018 Fiscal Year Research-status Report
モデル動物と患者遺伝子検体の解析に基づく周産期心筋症の病態解明と革新的治療法開発
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17K09543
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
大谷 健太郎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (50470191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳留 健 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00443474)
神谷 千津子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (10551301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 周産期心筋症 / 授乳 / 心肥大 / ナトリウム利尿ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、心臓ホルモンである心房性および脳性ナトリウム利尿ペプチド(ANP・BNP)の共通の受容体Guanylyl Cyclase-A(GC-A)の遺伝子欠損マウス(GC-A-KO)が産褥期、特に授乳期に周産期心筋症様の心機能低下を伴う顕著な心肥大・心線維化を呈する事を明らかにしてきた。また、そのメカニズムとして、GC-A-KOでは授乳により血漿アルドステロン濃度が著増し、心臓局所においてインターロイキン-6を介した炎症反応が亢進することを見出した。 本年度は、GC-A-KOにおける授乳誘発性心肥大が、授乳期間中に抗インターロイキン-6受容体抗体を投与することにより抑制可能か否かについて検討を行った。また、動物実験と並行して、周産期心筋症患者ゲノム(22症例分)におけるナトリウム利尿ペプチド関連遺伝子(特にGC-A)の遺伝子多型解析を実施した。野生型マウスでは、産後直後および授乳1週目に抗インターロイキン-6受容体抗体あるいはラットIgG抗体(対照群)を腹腔内投与しても、授乳2週目における授乳誘発性心肥大に有意な変化は認めらなかった。ところが、GC-A-KOではラットIgG抗体投与群に比し、抗インターロイキン-6受容体抗体投与群で授乳誘発性心肥大が抑制される傾向が認められた(P=0.064)。 一方、遺伝子多型解析の結果、周産期心筋症患者ゲノムではGC-A遺伝子におけるCT・二塩基繰り返し遺伝子多型(日本人の本態性高血圧との関連の可能性が示唆される遺伝子多型)、塩基配列の挿入/欠失および一塩基多型は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りに実施できており、GC-A-KOにおける授乳誘発性心肥大が抗IL-6受容体抗体の投与により抑制され得る可能性を見出すことができた。また、周産期心筋症患者ゲノムを用いた遺伝子多型性解析に着手し、一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果、GC-A-KOの授乳誘発性心肥大に心臓局所におけるIL-6の発現亢進が関与している可能性、およびGC-A-KOの授乳誘発性心肥大に対して抗IL-6受容体抗体投与が有効である可能性が示唆された。今後は、周産期心筋症患者ゲノムを用いたナトリウム利尿ペプチド関連遺伝子の遺伝子多型解析をさらに推進し、内因性ナトリウム利尿ペプチド系の機能異常/低下が周産期心筋症の原因因子であるか否かを明らかにするとともに、周産期心筋症の発症予測および新規治療法開発へとつなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は予定していた動物実験が順調に進んだため、研究計画時に比べて研究費の支出を抑えることができた。次年度に繰り越した研究費は、周産期心筋症患者ゲノムの遺伝子多型解析用の試薬購入費に充てる予定である。
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