2017 Fiscal Year Research-status Report
右心機能の正常化を目指した新しい肺高血圧症治療への探索的メカニズム研究
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17K09549
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
大郷 剛 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任部長 (80617077)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 右心機能不全 / 肺高血圧症 / 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 / 肺動脈バルーン形成術 / 心臓MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
肺高血圧症症は右心不全となり死亡に至る難治性希少疾患であるが根治法はない。我々は肺動脈バルーン拡張術が肺高血圧症を改善させることを報告しているが、治療後も右心機能不全が残存することが課題となっており、現在、右心機能不全への治療法の開発が重要課題となっている。我々の研究より肺高血圧症において右心機能が回復維持されている「適応右室」状態が存在することが判明した。本研究では肺高血圧症における右心機能の回復維持メカニズムに着目し、「適応右室」の臨床的特徴、臨床に即した有用な評価法を確立し、その機序を解明する。そのためBPA後の残存右心機能低下の臨床的影響や予測因子とその組織学的メカニズムを検討した。方法: BPA前とBPA終了3ヶ月後(フォローアップ時)に心臓MRI検査と右心カテーテル検査を行った連続68例のCTEPH患者を対象とした。フォローアップ時、右室拡張末期容積係数>100ml/m2もしくは右室駆出率<45%を残存する右心機能低下(RD)と定義し、RD群と右心機能正常化(ND)群に分類して臨床因子を比較検討した。 結果:RD群は38例(56%)、ND群は30例(44%)だった。フォローアップ時、RD群はND群と比較して、血行動態指標は有意差なかったが、WHO機能分類が悪く症状が残存していた。多変量ロジスティック回帰解析では、男性(オッズ比7.56、p=0.018)とQRS幅延長(オッズ比1.13、p=0.003)が残存する右心機能低下の予測因子であった。CTEPH剖検心11例での組織学的解析では、QRS幅は右室線維化面積率と正の相関関係にあった(R=0.664、p=0.026)。 結論:BPA後の残存右心機能低下例は、全体の半数以上と多くWHO機能分類の改善が乏しかった。QRS幅は残存する右心機能低下を予測する独立因子で、右室線維化を反映している可能性があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究にて当初より本年度の研究として予定されていた残存右心機能不全の臨床的特徴、予測因子を明らかにしており、現在医学雑誌投稿中である。また剖検からの病理組織学的な特徴の検討も行うことができた。現在T1マッピング法による適応右心室の特徴や予測の検討を行っており、予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究にて適応右心の臨床的な評価により右心の臨床的な因子は検討できており、さらにメカニズムにせまるため臨床的な画像的、組織学的な評価を行う予定としている。肺高血圧患者の「適応右室」心筋を臨床的に評価する有用な新規画像評価法を確立するために適応右室の違いを臨床的に鑑別する方法は確立する必要がある。そのため近年新しい心筋障害の指標として提唱されているT1 mapping法を検証する。T1 mapping法は左心室の心筋症のびまん性線維化の定量的評価の有用性が報告されており、より心筋の性状を評価できる方法として期待されている。次に「適応右室」心筋の組織学的変化(線維化、炎症、血管分布等)の比較検討を行い、当院の肺高血圧症患者の剖検から右室心筋を用い心筋の線維化、炎症、心筋内血管分布の程度を定量し、肺高血圧症に対する右心適応状態の異なる右心筋と比較検討する。
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Causes of Carryover |
2018年度での研究に充当したいため
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Research Products
(3 results)