2017 Fiscal Year Research-status Report
新規HDL機能評価法を用いた糖代謝異常患者に対する急性冠症候群発症阻止の戦略
Project/Area Number |
17K09553
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
新家 俊郎 昭和大学, 医学部, 教授 (60379419)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 達郎 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (00379413)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 動脈硬化 / 炎症 / 血糖変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的] 冠動脈疾患予防には、低比重リポ蛋白(LDL)低下療法のみでは不十分であり、残余リスクとして糖代謝異常、血糖変動が重要視されるが、プラークの進展、脆弱化機序は不明確である。本研究は、1.糖代謝異常が疑われる患者群において血糖変動を横断的に調査し層別化を行い、脂質プロファイルならびに最近我々が開発した高比重リポ蛋白(HDL)特異的コレステロール取込み能(Cholesterol uptake capacity:以下CUC)との関連を調査する(基礎・臨床研究)2.冠動脈疾患において、血糖変動がプラーク脆弱性、新規病変の発症、再発に関連するメカニズムをHDL の質的異常、局所炎症の観点から解明する(基礎・臨床研究)。3.糖代謝異常早期から介入し、プラーク安定化および退縮、急性冠症候群(ACS)発症予防につながる新規戦略を模索する(臨床研究)。 [平成29年度実績] 冠動脈疾患患者において、持続血糖測定 (continuous glucose monitoring: CGM)システムを用いた血糖変動の指標(mean amplitude of glucose excursion: MAGE)の測定を行った。対象患者のうち、可能な症例において、冠動脈プラークに対する光干渉断層法(OCT)による評価を行った。また一部の患者において、末梢血に対しフローサイトメトリー法により単球サブセット測定し、冠動脈プラーク性状との関連を評価した。冠動脈プラークの脆弱性を示す線維性被膜厚はMAGEと有意な逆相関を示した。また、単球サブセットのうち、動脈硬化促進に関連するとされる炎症性monocyte分画とMAGEが有意な相関を示した。その相関の程度は非糖尿病(耐糖能異常(IGT)を含む)において強く、比較的早期の糖代謝異常において、血糖変動が炎症を介して動脈硬化を惹起するメカニズムが強いことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床画像データ収集、および画像解析は予定通り進捗している。HDL機能(CUC)とプラーク性状の関係については次年度の解析を予定している。現在までの101症例の解析において、既報と合致して、OCTで評価したプラーク脆弱性と血糖変動指標(MAGE)が有意な相関を示した(OCT画像収集した51例)。そのメカニズムを明らかにするために本年度は炎症の側面から解析を行い、炎症性monocyte分画の増加とMAGEとの相関が、病期の浅い糖代謝異常の患者においてより強いことが判明し、積極的な介入治療の対象とすべき患者層を抽出できる可能性が示された。 血糖変動を評価した101例において1年次の臨床アウトカムを評価した。対象のうち24例に心筋梗塞、再血行再建の心イベントが発生したが、イベント発生群ではMAGEが有意に高値であった。多変量解析の結果、糖尿病であることとMAGE高値が心イベントに独立して寄与する因子であると判明した。これらは既報と合致しており、今回の研究対象から今後得られる、リスク層別化因子や予後予測因子等が普遍的に有用である可能性を示している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、糖代謝異常の経時的推移を観察し、脂質指標、CUC、単球プロファイルの変化との関連を検討する予定である。CUC測定は、初年度に完遂できていないため、登録症例の保存検体において漸次解析を進めることとする。 登録症例において、ステント再狭窄、新規病変の出現を検討するために冠動脈形成術後、8~12 ヶ月後に追跡冠動脈造影、OCT評価を行う。冠動脈造影ができない患者群に対しては320 列CT を用いてプラーク性状、脆弱性の評価を行うこの際に、CGM システムを用いた血糖変動評価、CUC の測定、単球プロファイルの測定を行い、関連を検討する。CGM により層別化された糖代謝異常に対して、プラーク安定化に寄与した治療介入を見出し、将来的に前向き臨床試験を立案・計画をする。正常耐糖能、耐糖能異常、糖尿病初期、晩期糖尿病それぞれにおいて、様々な血糖変動幅が来たす症例が存在すると想定されるが、それぞれの病態において、至適治療法である可能性が高い介入が同定し、前向き試験を計画する。また、機能不全HDL の機能回復あるいはさらなる障害に対する分子機序の解析を行う。具体的には、超遠心法によりHDL を分離し、脂質抽出・固相抽出によってリン脂質・中性脂質・遊離脂肪酸に分離した後、GCMS を用いて脂質構成脂肪酸組成の解析を行う。機能不全HDL をマウスに投与し、生体内でのコレステロール逆転送系を評価する。
|
Causes of Carryover |
現在までのデータ収集、解析は実臨床でのデータ使用ならびに解析が主であったため、次年度に使用額が発生する予定である。具体的には、CUCを用いたHDL機能評価、基礎研究に用いる研究試薬に支出が見込まれる。また、臨床アウトカムの追跡ならびに追跡冠動脈造影時のOCT撮像は、カテーテル費用の支出が見込まれる。
|
Research Products
(1 results)
-
[Journal Article] Impact of CD14++CD16+ monocytes on coronary plaque vulnerability assessed by optical coherence tomography in coronary artery disease patients.2018
Author(s)
Yamamoto H, Yoshida N, Shinke T, Otake H, Kuroda M, Sakaguchi K, Hirota Y, Toba T, Takahashi H, Terashita D, Uzu K, Tahara N, Shinkura Y, Kuroda K, Nagasawa Y, Nagano Y, Tsukiyama Y, Yanaka KI, Emoto T, Sasaki N, Yamashita T, Ogawa W, Hirata KI.
-
Journal Title
Atherosclerosis
Volume: 269
Pages: 245-251
Peer Reviewed