2017 Fiscal Year Research-status Report
心臓マクロファージと血管・心筋細胞との相互作用による心臓突然死抑制機構の解明
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17K09569
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉田 純一 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (70755694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30422306)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 突然死 / 炎症 / 心不全 / ギャップ結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓マクロファージ由来の抗不整脈物質として、以前より同定していた抗不整脈作用を有する候補分泌蛋白の作用について検討した。候補蛋白遺伝子をノックアウトしたマウスに対して、肺動脈拘縮術により右心負荷を与えると、完全房室ブロックにより突然死することを見出した。次に、不整脈を引き起こす原因について調べるため、ノックアウトマウスの心筋の蛋白を解析したところ、心筋の電気伝導に関わるギャップ結合を構成する蛋白に異常が認められ、免疫組織染色においてギャップ結合の細胞膜への局在が障害されることを見出し、このことにより心筋における電気伝導障害を引き起こしていることが示唆された。また、ノックアウトマウスからの骨髄移植を行った野生型のマウスにおいても、同様に右心負荷により不整脈を来し、ギャップ結合の異常が見られることから、心臓において骨髄由来細胞から候補蛋白が分泌されていることが示唆された。 さらに、培養心筋を用いて検討を行った。ギャップ結合を介する色素の移動距離により心筋間の電気的なつながりの強さを評価した。ノックアウトマウスのマクロファージと心筋を共培養したところ、野生型マウスのマクロファージと比較して、心筋間のギャップ結合を介する色素の移動度が低下した。また、候補蛋白を加えることで移動距離が増加し、蛋白受容体を阻害する薬剤を負荷することで、移動距離が低下した。 最後に、ギャップ結合を構成する蛋白に緑色蛍光タンパク質を付加するよう配列した遺伝子を培養細胞に導入し、候補蛋白が実際にギャップ結合の形成に寄与しているかを検討した。結果、候補蛋白によりギャップ結合の形成が促進され、蛋白受容体阻害剤の投与によりその効果が打ち消された。 以上から、同定した候補分発蛋白は、心筋細胞間の電気伝導にとって重要なギャップ結合を構成する蛋白の修飾により、抗不整脈作用を有することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心臓マクロファージからの分泌蛋白が心臓の電気伝導を制御するメカニズムを解明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をまとめ、英語論文による発表を目指す。また、他の不整脈を起こすマウスモデルを使用して、分泌蛋白の効果を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
学会における他の研究グループによる研究成果発表・論文発表により、当初の研究計画どおりでは解決できない問題が生じることが明らかになり、問題解決のために研究計画を変更する必要が生じ、調整を行った結果年度内に完了し得ない部分が生じることとなった。 今後の計画として、他の不整脈モデルマウスにおける検討を追加する予定である。具体的には、不整脈モデルマウスに候補分泌蛋白を投与することで不整脈が改善されるか、また、不整脈モデルマウスの心筋の免疫組織染色の検討、及び、心臓マクロファージの解析を行い機能障害がないかを検討する。不整脈の評価の際には、心電図を長期間記録するためにテレメトリーを使用して解析する。 費用は、不整脈モデルマウスの準備資金、また、心電図を記録するテレメトリー機器の消耗品及び心臓マクロファージを解析するためのフローサイトメトリーの抗体の購入に充てる予定である。
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