2018 Fiscal Year Research-status Report
心臓マクロファージと血管・心筋細胞との相互作用による心臓突然死抑制機構の解明
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17K09569
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉田 純一 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (70755694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 突然死 / 炎症 / 心不全 / ギャップ結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究成果により同定した、抗不整脈作用を持つ心臓マクロファージからの分泌蛋白について、生体内での役割を解析するため、新たに導入した心電図テレメトリーを用いて、分泌蛋白の遺伝子をノックアウトしたマウスを解析した。自由行動下のマウスを解析したところ、野生型マウスでは不整脈は観察されなかったが、ノックアウトマウスでは洞停止や心室性期外収縮、房室ブロックといった多彩な不整脈が観察された。これらの不整脈はマウスの行動が活発となる夜間に多く、交感神経の活性化が関与していることが推定された。次に、交感神経賦活化により不整脈が誘発されるかについて、β受容体刺激薬を投与して検討したところ、野生型マウスでは単発の心室性期外収縮が観察されるのみであったが、ノックアウトマウスでは心室性不整脈や高度の房室ブロックが引き起こされ、交感神経の過剰な活性化が突然死につながることが示された。以上から、同定した候補分泌蛋白は心臓の電気的興奮が安定して伝導するために必要であることが示され、特に交感神経賦活時には突然死を防ぐために重要な役割があることがわかった。 次に、心臓マクロファージからの分泌蛋白が実際に心臓の電気的興奮の伝導にどのように影響しているかを調べるために、電気的興奮を電位感受性色素を用いて可視化し、高速カメラによるランゲンドルフ灌流心撮影を行った。ノックアウトマウスでは野生型マウスに比べて電気伝導速度が低下し、電気伝導の異方性が増加していた。また、ペーシングによる期外刺激や頻回刺激を行い、不整脈誘発を試みたところ、ノックアウトマウスでは心室頻拍や心室細動が誘発され、有意に不整脈の誘発頻度が高かった。 以上の結果から、心臓マクロファージは、分泌蛋白により心臓の電気的興奮の伝導に関与し、定常状態及びストレス状態において抗不整脈作用を有することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心臓マクロファージが分泌する蛋白が心臓の電気的興奮の伝導に重要であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をまとめ、英語論文による発表を行う。
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Causes of Carryover |
学会における他の研究グループによる研究成果発表・論文発表により、当初の研究計画どおりでは解決できない問題が生じることが明らかになり、問題解決のために研究計画を変更する必要が生じ、調整を行った結果年度内に完了し得ない部分が生じることとなった。 費用は、不整脈モデルマウスの準備資金、また、心電図を記録するテレメトリー機器の消耗品及び心臓マクロファージを解析するためのフローサイトメトリーの抗体の購入に充てる予定である。
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