2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K09572
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 玲 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70343689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 乗有 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (00595514)
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オメンチン / 心筋梗塞 / リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
オメンチントランスジェニック(OMT-Tg)マウスの左前下行枝を結紮し、心筋梗塞モデルを作成。OMT-Tgマウスは、WT(野生型)マウスと比較して心筋梗塞作成術後の死亡率が有意に低く、LV cavityの拡大が有意に抑制されていた。また、OMT-Tgマウスは、WTマウスと比較して心筋梗塞後の心重量や左室重量の上昇、血圧の低下が有意に減弱していた。WTマウスでみられる心筋梗塞後の左室収縮末期径および拡張末期経の増大、収縮能低下も、OMT-Tgマウスで有意に抑制されていた。Masson’s trichrome染色を行い線維化を評価したところ、OMT-TgマウスではWTマウスと比較して心筋梗塞後の心筋remote areaでの線維化が有意に減少していた。線維化のマーカーであるコラーゲンIやIIIの発現も、WTマウスと比較してOMT-Tg群で有意に減少していた。CD31染色を行いinfarct border zoneでの毛細血管床を評価したところ、WTマウスで見られる心筋梗塞後のborder zoneの毛細血管床の低下は、OMT-Tgマウス群で有意に抑制されていた。Wheat germ aggultinin染色を用いて心筋サイズの評価を行うと、心筋梗塞後の心筋remote zoneにおいて、WTマウスで見られる心筋サイズの増大が、OMT-Tgマウス群で有意に抑制されていた。さらにOMT-Tgマウスでは心筋梗塞後のANFおよびBNPの発現も減少していた。TUNEL染色にてapoptosisの評価を行ったところ、WTマウスと比較してOMT-Tg群で、心筋梗塞後の心筋remote zoneで有意にTUNEL陽性細胞数が少なかった。以上からオメンチンは、線維化、心肥大、アポトーシスを減少し、毛細血管床を増やすことで、心筋梗塞後の病的リモデリングを抑制すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、「オメンチン」をターゲットとした虚血性心疾患制御機構の解明を行い、さらには大動物(ミニブタ)を用いた前臨床実験を行うことにより、オメンチンをターゲットとした新たな心血管病治療開発を実現させることにある。現在までに、オメンチンが直接的な心筋梗塞縮小効果を有することをマウス及びミニブタを用いた検討にて見出している。またその機序としてAMPKシグナル伝達経路が関与している可能性が明らかとなった。さらに今年度の検討で、オメンチンの病的リモデリング抑制機序には、心筋線維化や心肥大、アポトーシスの減少効果、毛細血管床の増加作用が関与していると示唆された。これらの所見から、オメンチンは新たな心血管病治療の標的因子になる可能性がある。したがって本研究は、おおむね順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 心リモデリングに対するオメンチンの作用解明:心筋梗塞モデル作成後にオメンチンの投与を行い、その治療効果を検討する。 2. 心臓構成細胞に対するオメンチンの作用とシグナル伝達機構の解明:AMPKシグナル伝達経路の解析を継続する。siRNAや阻害剤あるいはdominant-negative 変異体などを用いて検討する。ドミナントネガティブAMPKを筋肉特異的に過剰発現させたマウス(dnAMPK-TGマウス)を用いてin vivoの系でシグナル伝達機構を明らかとしていく。 3. ブタ心筋虚血再灌流傷害モデルを用いたオメンチンの効果検討:ブタ摘出心筋や血液検体を用いて検討を進める。種々のシグナル伝達系物質(AMPK, COX-2, P38, ERK 等)や炎症性サイトカイン( TNF-α,IL-6,IL-10等)の発現を評価する。Tunel染色、caspaseファミリーの発現検討にてアポトーシスを評価する。 4. 各種薬剤によるオメンチン産生、分泌活性化を介した新たな心血管病治療戦略の検討:糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬内服治療の開始前、治療開始6ヶ月後に採血を行い、ELISA法によりオメンチン血中濃度の測定を行い、オメンチン濃度の変化を検討する。
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