2018 Fiscal Year Research-status Report
The role of beta adrenergic signaling in fibroblasts during cardiac senescence
Project/Area Number |
17K09576
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 博之 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (40581062)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 心臓老化 / アドレナリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会を迎え老化の抑制による健康寿命の延長は喫緊の課題である。加齢に伴う心肺系の機能低下は健康寿命短縮の三大原因の一つであり、中でも心機能低下は非高齢者の場合と異なるaging-related cardiomyopathyという特有の病態であると認識されつつある。我々はこれまでの研究で、β2アドレナリン受容体の遺伝子欠失マウスを用いて、その心病態における役割を検討し、心臓の線維芽細胞のβ2アドレナリン受容体がパラクライン作用を介して心肥大や心臓の線維化を制御している事を報告してきた。老化の促進要因として慢性的に炎症が持続する炎症老化(inflammaging)の概念が注目されている。特に老化細胞が炎症性サイトカインを分泌するSenescence-associated secreted phenotypeと呼ばれる現象が注目されている。これと関連して我々は、β2アドレナリン受容体欠失マウスより採取した心線維芽細胞を用いた予備実験より、心線維芽細胞がカテコラミン刺激により炎症性サイトカインを産生する事を見出した。今回の研究において、「心線維芽細胞における交感神経―炎症連関が慢性炎症持続の基盤となり、aging-related cardiomyopathyを形成する」とする仮説を検証した。方法としてaging-related cardiomyopathyの表現型を、β2ARノックアウトマウス(KO)を用いて検討した。その結果、予想に反して、β2ARKOは、コントロールと比較して寿命の短縮を認めた。一方、心収縮能に有意差を認めなかったが、拡張能の指標は、有意に低下していた。心肥大、β2ARKOにおいて悪化する傾向もあったが、有意差を認めなかった。以上の結果は、当初の仮説と異なり、β2ARがARCに対して拡張能を介して保護的に作用している可能性を示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度において、以下の解析が終了した事より、順調に推移していると考える。(1)生存曲線の解析:雄性のβ2アドレナリン受容体遺伝子欠失マウス(β2ARKO;24匹)とコントロールマウス(34匹)において、生存率を検討した。その結果、予想に反してβ2ARKOは、コントロールマウスと比較して25月齢までにおける生存率の低下を認めた。(2)心エコーによる心機能解析(収縮能・拡張能):25月齢における心エコー解析を施行した。心収縮性の指標であるfractional shorteningやejection fractionにおいては、両群に有意差を認めなかった。一方で、左室の拡張能の指標である僧帽弁血流のE/A ratioやdeceleration timeは、β2ARKOにおいて有意に低下していた。以上の結果より、β2ARKOは、収縮能の低下より拡張能の低下が有意な心機能の低下を呈する事が明らかとなった。(3)心肥大解析:加齢に伴う心肥大について、25月齢と8週齢のマウスにおいて検討した。その結果、心肥大の指標である心重量/体重比(HW/BW)及び心重量/脛骨長比に、25月齢と8週齢のそれぞれの群間で有意な差を認めなかった。また、心室肥大の指標である心室重量/体重比(VW/BW)は、4群間のマウスの間で差を認めなかった。心肥大の分子マーカーであるANF、α-SKA、BNPの遺伝子発現を評価したreal-time PCRの結果より、ノックアウトの老化マウスは野生型マウスと比較して、ANFの有意な上昇を認めた。しかしながら、α-SKA,BNPは老化マウスにおいて、両群間に有意な差を認めなかった。以上の結果、β2アドレナリン受容体は加齢に伴う心肥大に、直接的に関与しないと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において、β2アドレナリン受容体欠失に伴い寿命が短縮した。この結果はβ2アドレナリン受容体を活性化させる事により、寿命を延長する可能性がある事が示唆される。β2アドレナリン受容体アゴニストは、気管支喘息に対する治療として貼付剤が一般的に使用されている。また、骨にも存在することが報告されており、骨粗鬆症モデルにおけるパラトルモンの刺激による骨塩量の増加に必要である事が報告されている。本研究より、心臓においても拡張能の維持を介してaging-related cardiomyopathyを抑制する事が明らかとなった。この事は、β2アドレナリン受容体アゴニストが、抗老化薬へ応用できる可能性を示している。今後、さらに、老化β2アドレナリン受容体遺伝子欠失マウスにおいて、線維化の変化・Senescence-associated secreted phenotype (SASP)および他の重要臓器の機能変化について解析し、寿命とβ2アドレナリン受容体との関連について詳細に検討する。さらに、野生型老化マウスに、β2アドレナリン受容体アゴニストを投与することにより、寿命が延長するかどうかを明らかにする。寿命の延長が確認できれば、現在使用されているβ2アドレナリン受容体アゴニストの貼付剤が、健康寿命を延長させる治療への展開を目指す。
|
-
[Journal Article] Myofibroblast β2 adrenergic signaling amplifies cardiac hypertrophy in mice.2019
Author(s)
1.Imaeda A, Tanaka S, Tonegawa K, Fuchigami S, Obana M, Maeda M, Kihara M, Kiyonari H, Conway SJ, Fujio Y, Nakayama H.
-
Journal Title
Biochem Biophys Res Commun.
Volume: 510
Pages: 149-155
DOI
Peer Reviewed / Open Access