2018 Fiscal Year Research-status Report
虚血再灌流心筋障害の原因となる生理活性脂質メディエーターの解明と治療的介入
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17K09579
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
篠原 正和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 虚血再灌流傷害 / 脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血再灌流傷害は、循環器内科領域における血行再建手法が進歩した今日においても、特異的な予防法・治療法が存在しない未解決の重要課題である。本研究では、申請者がこれまで取り組んできた生理活性脂質代謝物(脂質メディエーター)解析を通して、虚血再灌流傷害の原因となりうる全身ならびに局所の生理活性脂質メディエーター変化の評価を小動物モ デル・ヒト虚血再灌流血液サンプル・培養細胞モデルにおいて実施し、病態に関わる新たなメカ ニズムを解明する。本研究によって、虚血再灌流傷害の新たな病態メカニズムの解明が期待される。 1つめの研究計画として、小動物虚血再灌流モデルを用いた包括的脂質メディエーター解析を立案した。当初、マウス・ラットを用いた心筋虚血再灌流モデルを計画したが、再現性のよい実験モデル作成が困難であったため、脳神経外科学分野の協力のもと、ラットを用いた脳虚血再灌流傷害サンプルを用いて、虚血再灌流傷害において変動するさまざまな脂質メディエーターの解析を進めている。また、虚血再灌流傷害が全身に与える影響を検討するために、マウスを用いた両下肢虚血再灌流傷害モデルを作成し、血中・遠隔臓器中における脂質メディエーター変動の解析を進めている。 2つめの研究計画として、ヒト心筋虚血再灌流過程における血中脂質メディエーター変動の解析を立案した。現在、共同研究施設において心筋梗塞例での検体サンプリングが実施されており、さらにこれまでの保存検体を用いた解析準備も進行中である。 3つめの研究計画として、培養細胞系を用いた虚血再灌流モデルでの検討を立案した。培養細胞を一定時間、無酸素チャンバーで培養し、その後通常培養条件に戻すことで虚血再灌流モデルを作成した。包括的な脂質解析によって、いくつかの脂質メディエーターが虚血再灌流によって大きく変動することを見いだし、現在その病態における意義の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、「3: やや遅れている」との自己評価をおこなった。これは、研究計画1として設定した「小動物虚血再灌流モデルを用いた包括的脂質メディエーター解析」において、動物モデル確率に至っていなかったためである。当初計画した心筋虚血再灌流モデルでは、再現性のよいモデル作成が困難であったため、平成30年度では、学内脳神経外科学分野の協力のもと、ラットを用いた脳虚血再灌流傷害モデルサンプルを用いて、虚血再灌流傷害において変動するさまざまな脂質メディエーターの解析を進めている。また、虚血再灌流傷害が全身に与える影響を検討するために、マウスを用いた両下肢虚血再灌流傷害モデルを作成し、血中・遠隔臓器中における脂質メディエーター変動の解析を進めており、初年度の遅れは問題とならないペースで研究は進展している。 ヒト虚血再灌流過程における血中脂質メディエーター変動の解析については、現在、共同研究施設においてST 上昇型心筋梗塞症例での末梢採血サンプリングを実施し、かつこれまでの保存検体の解析準備が進行中であり、おおむね順調に研究は進展している。 培養細胞系を用いた虚血再灌流モデルでの検討については、平成29年度に実施した血管内皮細胞を用いた解析に加え、さまざまな培養細胞系を用いた実験系を構築し、いくつかの脂質メディエーターが虚血再灌流によって大きく変動することを見いだしており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
小動物モデル虚血再灌流傷害モデル作製し、血中ならびに傷害臓器における包括的脂質メ ディエーター解析、炎症性細胞浸潤、炎症性サイトカインプロファイルを検討する方針である。ヒト虚血再灌流病態の評価のために、ST 上昇型心筋梗塞症例での末梢採血サンプルを取得し、包括的脂質メディエーター解析を計画している。また無酸素培養チャンバーを用いることで、培養細胞系における虚血/再灌流モデルを作製 し、in vitro 系における検討も実施する予定である。そして変動が確認された脂質メディエーターに対する治療的介入を行い、その治療効果・作用機御を明らかにすることで新規治療法としての可能性を検討する計画である。 小動物虚血再灌流モデルを用いた包括的脂質メディエーター解析については、脳虚血再灌流傷害サンプルを用いて、虚血再灌流傷害において変動するさまざまな脂質メディエーターの解析を進める計画である。また、虚血再灌流傷害が全身に与える影響を検討するために、マウスを用いた両下肢虚血再灌流傷害モデルを作成し、血中・遠隔臓器中における脂質メディエーター変動の解析を進めている。 ヒト虚血再灌流過程における血中脂質メディエーター変動の解析については、現在、共同研究施設において心筋梗塞症例の検体サンプリングが実施されており、さらにこれまでの保存検体を用いた解析準備を進める計画である。 培養細胞系を用いた虚血再灌流モデルでの検討については、培養細胞を一定時間、無酸素チャンバーで培養し、その後通常培養条件に戻すことで虚血再灌流モデルを作成した。包括的な脂質解析によって、いくつかの脂質メディエーターが虚血再灌流によって大きく変動することを見いだし、今後その病態における意義の検討を進める計画である
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Causes of Carryover |
研究計画2として、ヒト虚血再灌流過程における血中脂質メディエーター変動の解析を計画している。適切なインフォームドコンセントが取得されたST上昇型心筋梗塞症例において、経皮的冠動脈インターベンション治療直前ならびに治療完了後の末梢血採血を行い、血漿(100L)を用いて血漿包括的脂質メディエーター解析を実施し、治療前後すなわち虚血再灌流によって変動する血中生理活性代謝物を評価する計画である。現在、共同研究施設において検体サンプリング、ならびに保存検体の解析準備が進行中であり、平成31年度にこれらの臨床検体を用いた包括的脂質メディエーター解析を連続的に実施する予定であり、解析に必要とされる消耗品経費・その他経費(委託費)を次年度使用分として繰り越し処理した。
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Research Products
(5 results)