2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K09589
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大石 由美子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, テニュアトラック准教授 (80435734)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血性心疾患は、動脈硬化プラークの破綻を契機に発症する。従って、プラークの安定化は心血管イベントのリスク軽減に最も重要である。プラークの形成に重要なマクロファージは、細胞内コレステロールが過剰になると活性化され、プラークの脆弱化や破綻を来たす。そこで申請者は、コレステロールと結合するシクロデキストリン(βCD)の特性を活かし、細胞内コレステロールに直接作用して細胞外へと排出する超分子ポリロタキサン(PRX)を開発した。ポリロタキサンは、細胞内にエンドサイトーシスによって取り込まれ、エンドソームに局在してコレステロールをキレートし、細胞内コレステロールを低下させる特徴的な作用を示す。 一方、マクロファージは炎症の慢性化に重要なで、動脈硬化においては脂質を溜め込んで泡沫化し、病態形成において中心的な役割を担う。そこで本研究では、マクロファージにおけるポリロタキサンの役割を明らかにし、ポリロタキサンの投与が、動脈硬化の形成に与える影響を検証することを目的として実施した。初代培養マクロファージを用いた検討の結果、ポリロタキサンはToll-like4受容体を介したマクロファージの炎症応答と活性化を抑制することが明らかになった。さらに、動脈硬化モデルマウスにPRXを投与すると、動脈硬化の進展が有意に抑制されることを見いだした。これらの結果は、マクロファージの細胞内コレステロールを低下させることによって、細胞機能を調節できることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初代培養マクロファージを用い、ポリロタキサンがマクロファージの炎症応答を抑制することを見いだした。現在、その分子機構を解明する実験を進めている。また、動脈硬化モデルマウスを用いた検討も順調に推移し、ポリロタキサンの投与によって動脈硬化の進展が有意に抑制されるとの結果を既に得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た結果を踏まえ、ポリロタキサンによるマクロファージの炎症抑制メカニズムの同定を進める。特に、細胞内コレステロールの低下によって、炎症シグナルが阻止され、マクロファージの活性化が抑制されるメカニズムを解明する。本研究によって、細胞内コレステロール代謝を標的とした、新しい動脈硬化治療・予防法の開発につなげたい。
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