2017 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用に向けた喘息におけるアクアポリン3の役割の解析
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17K09613
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小賀 徹 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (90378670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 喘息 / アクアポリン3 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
喘息は、咳、喘鳴、息切れなどを主症状とし、世界でも約3億人以上が罹病していると推定され、日本での有症率も約3-9%で年々増加している。吸入ステロイド薬(ICS)を中心とした治療により、気管支喘息患者の管理は顕著に改善したが、長期の喘息患者の検討でも、完治は困難で、長期的には呼吸機能の低下(Oga T, et al. Ann Allergy Asthma Immunol 2002)やQOLの悪化(Oga T, et al. J Clin Epidemiol 2005)がみられ、一部には複数の長期管理薬使用下でもコントロール不良な重症喘息患者も存在する。重症例には抗IgE 抗体や抗IL-5 抗体といった生物製剤が必要となるが、これら生物製剤は高額であり、新たな小分子薬の開発が望まれている。我々は、細胞膜に存在する水チャネルの一つであるアクアポリン3(AQP3)に着目し、AQP3 欠損マウスに喘息モデルを適用し、AQP3 がアレルギー性炎症の惹起に重要であることを明らかにし(Ikezoe K, Oga T, et al. Sci Rep 2016)、喘息の新たな治療標的分子となりうる可能性を証明し、提唱した。そこで、本研究においては、ヒト喘息患者でのAQP3の役割を検討し、創薬の基盤となる研究を展開することを目的とする。 2017年度の主要目的としては、ヒト喘息肺サンプルを用いたAQP3の分布の検証、ならびに、ヒト喘息患者における喀痰上清中AQP3 濃度を測定し、他の炎症指標・臨床指標との関連を解析し、新規バイオマーカーとしての可能性を探索することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
倫理委員会において承認済みの、「アクアポリン3の各種自己免疫疾患・炎症性疾患への寄与に関する解析」に基づいて、ヒト喘息肺サンプルを用いて、AQP3の分布について検証し、マウスの分布と比較し、その相同性・相違性について検証した。 また、ヒト喘息患者における喀痰上清中AQP3 濃度の新規バイオマーカーの可能性に関する検証においては、臨床試験実施のため、「気管支喘息患者における喀痰AQP3 の役割の解明」を提出し、新たに京都大学医の倫理委員会において承認された。またヒト誘発痰を用いての、AQP3測定系を樹立した。症例登録し、測定をし、また、他の臨床データや喘息の増悪との関係について検討を始めている。倫理委員会も承認され、今後は、症例登録・測定・解析について2年目の研究で進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
登録症例に関して、喀痰上清中AQP3 濃度を測定していき、好酸球性炎症、呼吸機能や喘息重症度などの臨床指標、炎症性メディエーター、喘息の増悪などとの関連について、主として相関関係を解析する。さらに、多重検定を考慮し有意検定を行う。マウスではAQP3 と2 型炎症との関連が示唆されており、ヒトでも関連が示されれば、アトピー性2 型炎症を特徴とする喘息に対する新規創薬標的分子となりうることが示されるし、また、もし再現されない場合においても、網羅的に解析した炎症性メディエーター・臨床指標とAQP3 についてクラスター解析、主成分分析などを行い最も関連性のあるメディエーター・炎症パターンを明らかにし、非2 型炎症の病態解明に貢献する。このようにして、現在の登録、測定、解析検討を続けていく。 またマウスの喘息モデルにおいては、M2マクロファージにおいて、AQP3が過酸化水素の取り込みを調整しながらケモカインの発現を制御していることを証明したが、ヒト喘息患者からもM2細胞を単離し、細胞実験を通して、同様の作用が起こっているのか検証することを目標とする。
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