2018 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザ関連肺炎の重症化~過剰免疫を介したウイルスと細菌のクロストーク~
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17K09623
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
関 雅文 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (80432970)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 重症肺炎 / マクロライド系薬 / 好中球 / 抗菌薬適正使用支援(AST) / 耐性菌 / 質量分析器(TOF-MS) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インフルエンザウイルス感染症や関連する細菌性肺炎に代表される重症肺炎および重症感染症において、個体側の因子=免疫因子が過剰に反応していることで、かえって組織障害を促進し、肺炎や感染症の重症化に寄与している可能性を検討しているが、その過剰免疫(サイトカイン・ストーム)が、特定のウイルスと細菌など他の微生物との組み合わせによって惹起される可能性なども考え、微生物側の因子や組み合わせを主に症例の中から検討し、さらに原因微生物診断法の精度や治療内容に関しても、感染制御的視点からアプローチしている。 特に好中球を中心とする免疫の活性化:NETs (Neutrophil Extracellular Traps)などに焦点を当て、さらに臨床上の治療および感染予防・重症化対策へフィードバックすることを大きな目標としている。この点において、重症感染症における好中球関与の意義を、レジオネラやライム病など各種症例においても検討できた。インフルエンザ関連のみならず、肺炎球菌肺炎なども含めた重症感染症では、何らかの免疫賦活剤:最近ではステロイドの他、マクロライド系薬の効果も取り上げられるようになり、その一定の成果を海外講演などで報告することもできた。 また、現実には、重症化が進んだインフルエンザ肺炎などでは救命が困難となるため、早期発見からの早期治療の導入、普段からの感染制御・耐性菌予防活動が重要となる。この点で、近年多くの臨床現場で原因菌同定に使用されている質量分析器(TOF-MS)での迅速解析法や、抗菌薬適正使用支援活動(AST)の成果としてのMRSAに対するバンコマイシンのより至適な投与設計法などを報告できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年もおおむね目標を達成することができた。前述のように、インフルエンザ関連肺炎症例を中心に、病態解析、実際の治療や症例の他、診断や耐性菌予防としての抗菌薬適正使用支援活動(AST)やInfection Control活動(ICT)においても、重症感染症のマネージメントに貢献する報告ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、感染症重症化における好中球などの過剰免疫化との関連の検討を、インフルエンザ・肺炎などの特に重症例を中心に進めたい。臨床症例を蓄積しながら、一例一例の詳細な解析を微生物学・免疫学の両面からも進める予定である。 インフルエンザでは黄色ブドウ球菌感染の合併による重症化も知られており、その耐性菌であるMRSAの診断なども見直したい。また、これまで同様に、これらの重症感染症の感染制御・予防のためのTOF-MSなども用いた新たな診断法や、ESBL産生大腸菌など、院内感染における重症化症例の報告が増加しているため、耐性菌対策としての抗菌薬適正使用支援活動(AST)の他、近年注目されている最適診断法の支援に関するDiagnostic Stewardship活動(DST)などの検討をさらに強化したい。
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