2017 Fiscal Year Research-status Report
アレルギー性気道炎症下のバリア機能維持におけるTcf21の役割の解明
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17K09648
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
前澤 裕子 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (00724923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 裕史 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00322024)
高取 宏昌 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (30568225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アレルギー性気道炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
Transcription factor 21(Tcf21)は胎生期の臓器発生を司る転写因子の一つであるが、成体組織においても発現が見られ病態形成にも関与することが示唆されている。Tcf21はヒト肺ではパートナー分子Tcf12と共に気道上皮を中心に発現することが示されているが、その役割は不明である。一方、本研究者らは①喘息モデルマウスの気道上皮細胞においてTcf21発現が著明に減弱すること、②気管支生検のアレイデータベース(NCBI)の解析でも喘息患者でTcf21の発現が低下していることを見出しており、Tcf21は喘息の病態形成に関与する可能性が示唆される。そこで本研究ではアレルギー性気道炎症におけるTcf21の役割とその作用機構を明らかにするとともに、喘息患者における肺Tcf21発現と喘息フェノタイプとの関連を解析し、喘息の新規治療基軸の確立を目指すことを目的とした。具体的には、アレルギー性気道炎症におけるTcf21の役割を、炎症局所におけるTcf21の局在や作用機構について、抗原誘発性気道炎症モデルを用いて明らかにする。さらに気道上皮細胞、マクロファージ、T細胞等の気道炎症に関与する細胞におけるTcf21の役割を、細胞種特異的な欠損マウスを樹立し明らかにするとともに、気道上皮細胞に発現するTcf21の役割に関してはバリア機能の観点から詳細な解析を行うこととした。平成29年度は、チリダニ(house dust mite (HDM)) 誘発性気道炎症モデルを用いてアレルギー性気道炎症局所におけるTcf21の発現の詳細を明らかにするとともに、気道上皮細胞、マクロファージ、T細胞におけるTcf21の役割を、細胞種特異的なTcf21欠損マウスを樹立することで今後の詳細な解析に供することを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アレルギー性気道炎症の局所でTcf21の発現が著明に低下するという本研究者の未発表データをもとに、HDM誘発性喘息モデルにおけるTcf21の発現について詳細に解析するとともに、気道上皮細胞、マクロファージ、T細胞特異的にTcf21発現を欠く遺伝子改変マウスを作製し、アレルギー性気道炎症におけるその役割を解析することを目的とする。気道上皮細胞に発現するTcf21の役割に関しては、気道バリア障害の観点からさらに詳細な解析を行い、気道上皮細胞におけるTcf21の役割が確認された際には、そのパートナー分子と標的分子を網羅的に探索する。さらに喘息患者の肺組織におけるTcf21、パートナー分子、標的分子の発現と喘息フェノタイプ・エンドタイプとの関連を明らかにすることを目的とする。本年度は、チリダニ(house dust mite (HDM)) 誘発性気道炎症モデルを用いてアレルギー性気道炎症局所におけるTcf21の発現の詳細についての解析を行い、さらに気道上皮細胞、マクロファージ、T細胞におけるTcf21の役割を、細胞種特異的なTcf21欠損マウスを樹立し明らかにすることを目標とした。マウス疾患モデルについては既にチリダニ抗原(house dust mite (HDM)) を用いた経鼻感作モデルが確立されているため、同様の手法にて気管支肺胞洗浄液および肺病理組織を採取し炎症反応の解析を行った。また、細胞特異的マウスの樹立については遺伝子改変用の発現ベクターコンストラクトの作成を行い、マウスの作成を行った。さらに、既に得られているものを含めたマウス気道炎症のRNAシークエンスデータを用いて、Tcf21関連遺伝子発現についても検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
気管支喘息の有病率は国内外ともに増加傾向にあるが、吸入ステロイドをはじめとする非特異的な対症療法が未だ治療の中心であり、病態の解明に基づく新たな治療法の開発が求められている。気管支喘息のサブタイプの中で最も有病率の高いアレルギー性喘息ではアレルゲン刺激に対するアレルギー性気道炎症が特徴的であり、その成立にはTh2細胞を中心とするT細胞、B細胞、好酸球、肥満細胞などの血球系細胞に加え、気道上皮細胞、血管内皮細胞など多くの細胞の関与が判明している。近年ではTh17細胞, 制御性T細胞、自然リンパ球などリンパ球系細胞が病態形成において担う役割に関する研究が進む一方で、生体防御の最前線として存在する気道上皮細胞の役割についても注目が集まっている。Tcf21については臓器発生の制御において注目されている遺伝子であるが、その標的遺伝子や作用機構については依然不明な点が多く、近年、成熟個体の組織におけるTcf21の重要性が注目され始めている。本研究者の知見より、気道粘膜の恒常性維持およびアレルギー性炎症においてもTcf21が何らかの役割を担うことが示唆されており、今後の研究の推進方策として本年度に得られた気道炎症組織について免疫組織学的により詳細な検討を加える他、細胞特異的Tcf21欠損マウスの樹立とそれらにおけるチリダニ抗原(house dust mite (HDM)) 誘発性気道炎症について組織学的および分子生物学的に詳細な検討を加えることを目標とする。また、気道上皮細胞に発現するTcf21の役割に関してはバリア機能の観点からFITC-dextranやLucifer yellowといった化学物質を用いて、気道上皮の透過性やgap junction保持の観点から解析を行う。
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Causes of Carryover |
免疫組織的解析に必要とした抗体およびサブクローニング様のベクター等の試薬が当初予定より安価で購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度、免疫染色用抗体の追加購入および細胞機能解析用試薬の購入に充てる予定である。
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