2017 Fiscal Year Research-status Report
シャペロン介在性オートファジーによるCOPD病態の制御
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17K09672
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
沼田 尊功 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30366257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90468679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シャペロン介在性オートファジー / LAMP2A / 慢性閉塞性肺疾患 / ヒト気道上皮細胞 / 細胞老化 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙を原因とし,酸化ストレスの増加やミトコンドリア傷害に関連した細胞老化や細胞死の亢進が病態で重要な役割を果たす.しかし,蛋白質恒常性維持機構として重要であるシャペロン介在性オートファジー(CMA)の呼吸器病態への関与は明らかではなく、COPD病態におけるCMAの役割解明を目的とし以下の検討を行った. まずCOPD肺におけるCMA活性を検討した.CMA活性はリソソーム膜タンパクの一つであるLysosome associated membrane protein type2A(LAMP2A)の発現量と正の相関をする.手術検体より得られた肺組織, 分離・培養したヒト気道上皮細胞(HBEC)を用いて,LAMP2A発現量を比較検討した.肺組織検体における免疫染色及びHBECのWestern blotting(WB)法によりCOPD肺においては,非COPD肺と比べて気道上皮細胞のLAMP2A蛋白発現量が低下しており,CMA活性低下が示唆された. 次にCMA活性と喫煙刺激が細胞老化に与える影響を検討した.LAMP2Aをノックダウンし,CMAを阻害したHBECにタバコ抽出液(CSE)刺激を行い,WB法(p21),senescence-associated beta-galactosidase染色などで細胞老化を評価した.細胞老化はLAMP2Aノックダウンで軽度亢進し,CSE刺激により更に亢進した. これらの機序として活性酸素種(ROS)の関与を考えた.LAMP2Aをノックダウンし, CSE刺激を行ったHBECでROS産生(細胞内総ROSとミトコンドリア由来ROS)を評価検討したところ,LAMP2AノックダウンでROS産生は亢進し,CSE刺激により更に亢進した.以上より,CMA活性低下による細胞老化亢進の原因として,ROS産生亢進の関与が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CMAの特徴として, 基質選択的なタンパク質分解が挙げられる.我々はCMAの活性の低下に伴い蓄積する基質が, 細胞運命へ大きく影響を与えうるものと考えており, その基質として, 当初はミトコンドリア恒常性維持や酸化ストレスに対し保護的な役割を果たしていることが既に報告されているPARK7(DJ-1)が特にCOPD病態の進展上重要ではないかと仮説を立てていた.しかしながら, 上述のCOPDを擬したin vitroモデルでは, CSE刺激, LAMP2Aのノックアウト共にPARK7の動態に一貫した傾向が認められず, 着目する基質として適さないと考えている.このため, やや遅れていると判断している. 一方, CMA活性が気道上皮細胞で低下することで細胞老化が亢進し, その機序としてROS産生, 特にミトコンドリア由来のROS産生が増加している可能性が示唆されており,更なる検討の必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)呼吸器細胞におけるCMAの基質タンパク質の同定:培養気道上皮細胞を用いて, タバコ抽出液(CSE)刺激の有無での検討を行う. CMAを特異的に阻害することで発現が増加するタンパク質を同定するために, LAMP2Aをノックダウンした上で, 二次元電気泳動法と液体クロマトグラフィー質量分析法を用いる. 同定されたタンパク質発現の変化はwestern blotting法により, マクロオートファジーやプロテアソームの影響を受けずCMA選択的に分解されることを確認する. (2)CMAによる細胞傷害及び細胞運命(細胞死と細胞老化)の制御:CMA機能の低下が喫煙刺激による細胞傷害と細胞表現型に与える影響を培養気道上皮細胞で検討する. LAMP2AのノックダウンによりCMAを阻害し, CSE刺激を加えミトコンドリアの形態・機能, ライソソーム機能について評価する.次に, (1)で新たに同定されたCMA基質タンパク質が細胞運命に与える影響を, ノックダウンや過剰発現したうえでCSE刺激を行い, 細胞運命に与える影響, ROS産生の評価, ミトコンドリアの形態・機能, ライソソーム機能について同様に評価する. 更に, LAMP2A又はATG5をノックダウンし, CMA, 又はマクロオートファジーを阻害し, 各活性に及ぼす影響を評価する. (3)COPD肺組織でのCMA活性:肺組織を用いてホモジネートのWestern blotting法や免疫組織学的にCMA活性の検討を行い, 喫煙歴・呼吸機能検査等の臨床所見との関連性を比較検討する. (4)6-10週齢マウス(C57BL/6)を30週に渡って喫煙暴露することでCOPDマウスモデルを作成し, 肺の摘出を行う.肺組織の免疫組織染色, 及び肺ホモジネートによりCMA, 及びマクロオートファジー活性を評価する.
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Causes of Carryover |
初年度の目標として、COPD病態におけるCMAの基質タンパク質の同定を掲げていたが、想定した基質の検討では一定の傾向が認められず、やや遅れている状況である。そのため、2年目以降では引き続き培養気道上皮細胞を用いた各種刺激実験を行い、その結果から質量分析を含めた複数の解析方法により、さらなる基質タンパク質の同定を進めていく予定である。 その上で、前述の通り、COPD肺組織を用いたホモジネートの検討やマウスモデルでの検討を当初の計画通り進めていく予定である。
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