2020 Fiscal Year Research-status Report
new therapeutic of podocytopathy using cell membrane stabilization on podocytes via glycosphingolipid GM3
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17K09709
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川島 永子 北里大学, 医学部, 助教 (90342774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲山 賢一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究部門付 (40357679) [Withdrawn]
内藤 正吉 北里大学, 医学部, 講師 (40365101)
高野 勇太 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (60580115)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖脂質 / 蛋白尿 / 巣状糸球体硬化症(FSGS) / ポドサイト / ネフリン / バルプロ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、抗ネフリン抗体誘導性巣状糸球体硬化症 (FSGS) モデルマウスの糸球体における、ネフリンの発現量減少やF-actin崩壊と糖脂質GM3の発現量減少との相関関係に着目したことをきっかけに、vivo試験で、予めバルプロ酸を投与して内因的に糖脂質GM3の発現を増強させておくことで、抗体誘導性FSGSにおける蛋白尿・硬化病変等の減少が阻止されるという予防効果について明らかとした。さらに、抗体誘導性FSGSを惹起させた後にバルプロ酸を飲水投与しても、蛋白尿・硬化病変等が減少するという治療効果についても明らかとした。vitro実験では、バルプロ酸を介したGM3の発現増強は、ネフリン障害からの回避やF-actinの維持に有効であることを示した。 特に重要な点は、i) 足細胞障害初期はGM3の減少も伴うこと、ii) GM3の発現増強により、ネフリン障害を回避できるため、正常ネフリン・リン酸化が維持され、F-actinが崩壊しないこと、iii) VPAを用いたGM3の発現増強により、抗体誘導性FSGSモデルマウスの蛋白尿・硬化病変・ポドサイトの減少を明確に抑制できること、である。これは、抗ネフリン抗体結合によるネフリンで構成されるスリット膜の構造変化が、ネフリン膜貫通領域の周囲に局在する糖脂質によって阻止され、結果として生体での正常なスリット膜機能の維持に寄与している可能性を示唆している。同時に、蛋白尿治療のための標的として足細胞に発現する糖脂質GM3も候補となり得る可能性も高まっている。 さらに、ネフリンへの抗体結合が何故FSGSを惹起するのか、その真の原因を追究する必要がある。そこで、抗体結合直前後のネフリンやGM3分子の発現量・位置・局在等、両分子の詳細な動的変化を捉えるため、量子ドットを用いた1分子イメージング法を用いた解析も進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画調書通り進捗している。しかし、vitro実験計画の中のSDS処理凍結レプリカ標識法を用いた電顕解析では、想定通りの結果が得られなかったため、量子ドットを用いた1分子イメージング法を用いた解析に変更した。この解析を遂行するため、新たに共同研究者や協力研究者として参加頂いている、北海道大学電子科学研究所のBiju V.P.教授、高野勇太 准教授らと、解析条件の検討を開始した。しかし、Covid-19の影響で、北海道大学で遂行する実験のセットアップや予備検討実験のための出張が制限され、実験の進捗がやや遅延している。その他の実験計画については、非常に良好な結果が得られ、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
抗体誘導性慢性腎臓病の発症原因を突き止めるためには、病態の変化はもちろんのこと、抗体が抗原と結合した直後の分子構造・局在の変化を捉えることが基礎知見として重要であるが、同時に新たな創薬シーズ発掘に繋がる情報が得られる可能性も高い。このため、病態誘導性の抗体が抗原に結合した直後の細胞膜の微細 (または劇的) な変化を見る必要があるが、この課題を解決するためには、動的な分子局在変化の事象を捉える必要もあると考え、令和2年度から新たに北海道大学電子科学研究所物質科学研究部門と共に、1分子イメージング解析を開始している。令和3年度は1分子イメージング解析のための予備検討を終え、本実験を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
計画していた各種検討が比較的順調に進捗した。特に動物試験は、最低限の回数の再現性試験を行うに留められた。しかし、2020年からのCovid-19の影響で、出張が制限されていることに加え、在宅勤務が必要となったり、必要試薬や備品の納品もかなり時間を要しているため、次年度へ持ち越すスケジュールと使用額が発生した。 最終年度の計上額は、主に細胞を用いた分子構造・局在の静的・動的解析と投稿論文の掲載費に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)