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2017 Fiscal Year Research-status Report

マスイメージングによる腎代謝産物の解析に基づくSGLT2阻害薬の腎保護効果の解明

Research Project

Project/Area Number 17K09710
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

萩原 あいか  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00627052)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
KeywordsSGLT2阻害薬 / アデニル酸代謝 / 腎保護効果
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、マスイメージングを用いてマウス腎臓のエネルギー代謝産物を可視化することで腎不全病態における代謝変容を解析し、大規模臨床スタディーであるEMPA-REG OUTCOMEにて糖尿病性腎症の抑制効果が示された血糖降下薬であるSGLT2阻害薬の腎保護効果を解明することを目的としている。
1 高血圧、糖尿病などの原疾患を背景として生じる腎臓の有機体代謝の変容は、活性酸素種の生成やアポトーシスの促進を介して慢性腎臓病の進展に大きな役割を果たす。したがってそれら有機体代謝の変容をとらえることは慢性腎臓病の進展抑制の一助になる可能性がある。マスイメージング(MALDI-IMS)は従来の組織学的手法では描出不可能であった生体内の代謝小分子の分布を1ピクセル40μmの精度で可視化する手法である。この手法によって、我々は、腎内の解糖系からクエン酸回路とアデニル酸代謝・ニコチン酸代謝にいたるエネルギー代謝中心経路の代謝産物ひとつひとつを可視化することに成功した。これまで局在把握が困難であったこれらの腎内に分布する代謝産物で、皮質優位に分布するもの、髄質優位に分布するものを見出し、腎臓における主要な生理活性物質であるアデノシンが、腎皮髄境界に特異的に集積していることを発見した。このことを学会発表し、さらなる検討を進めている。
2 SGLT2阻害薬を3か月間投与したマウスの腎臓ではメタボローム解析の結果、ATPが低下し、その分解産物のAMP、アデノシンが増加する傾向にあった。エネルギー状態の指標であるアデニル酸エネルギーチャージは、SGLT2阻害薬投与マウスの腎臓で有意に低下しており、SGLT2阻害薬による糖再吸収の阻害にて、腎臓のエネルギーレベルが低下することを見出した。このことを学会発表するとともに、現在、論文を執筆中である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

3年間の研究期間において以下の事項を明らかにする計画を立てており、現在、1および2において検討が順調に進行しているため。
1 各種腎不全病態におけるニコチン酸代謝ならびにアデニル酸代謝の可視化解析
腎不全進行のリスクとなる糖尿病性腎症と虚血腎のモデルマウスにおける腎代謝変容を、マスイメージングにて可視化して経時的に解析する。マウス眼窩底から600μl脱血による急性腎前性腎不全モデルを作成し、皮髄境界に特異的に集積するアデノシンが脱血に伴い消失することを見出した。db/db肥満糖尿病マウスならびにストレプトゾトシンを用いたインスリン欠損糖尿病マウスの腎臓を増すイメージングを行って検討したところ、ATP等のアデニル酸誘導体や、NADなどのニコチン酸誘導体の局所濃度が大きく変容していた。
2 SGLT2阻害薬の代謝変容を介した腎保護作用の可視化解析
糖尿病性腎症と虚血腎のモデルマウスを作成し、SGLT2阻害薬を投与による腎代謝変容の是正をマスイメージングにて解析する。最終的には、1および2の解析結果を踏まえ、腎不全病態の代謝変容の是正による新規腎保護戦略の提案を目指す。

Strategy for Future Research Activity

1 “虚血腎”におけるSGLT2阻害薬のアデニル酸代謝への作用を介した腎保護効果の可視化解析
申請者はメタボローム解析を用いてSGLT2阻害薬に伴う腎臓の代謝変容の解析を行い、SGLT2阻害薬の投与による糖再吸収の低下に伴いアセチルCoAおよびNADHが減少し、ATP等のアデニンヌクレオチドの分解が進行し、アデノシンが増加することを見出した。一方申請者らは、600μlの脱血にて急性腎前性腎不全を生じさせるモデルマウスを独自に作成し、腎血管自動調節機構と腎血流維持においてアデノシンA2受容体が重要な役割を果たすことを見出している。また、腎動脈結紮による急性腎虚血モデルにマスイメージングを応用することで、虚血障害が生じやすい部位である腎皮髄境界に集積したアデノシンが、1分の虚血で消失することを見出している。さらには、腎動脈コイリングを用いた慢性腎虚血モデルにおいても、ATPからアデノシン産生に至るアデニル酸代謝が変容することを見出している。そこで、このような”虚血腎”における腎アデニル酸代謝の変容を、マスイメージングにて経時的に可視化して解析するとともに、SGLT2阻害薬投与によるアデニル酸代謝の是正を検討し、アデノシンを介したSGLT2阻害薬の腎保護効果について代謝変容の見地から検討する。

2 糖尿病性腎症におけるSGLT2阻害薬の腎保護効果の検討
EMPA-REG OUTCOME試験で示されたように、SGLT2阻害薬は糖尿病性腎症における腎保護作用を併せ持つ薬剤であるが、その腎保護メカニズムは明らかにされていない。申請者はSGLT2阻害薬が、糖尿病性腎症に伴うニコチン酸代謝の変容を回復させる可能性を考えており、本研究において検討する。また、先述のSGLT2阻害薬によるアデノシンの増加が、糖尿病性腎症に伴う尿細管間質の慢性虚血に与える影響を検討する。

  • Research Products

    (6 results)

All 2018 2017

All Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Invited: 1 results)

  • [Presentation] Renoprotective effect of adenosine by vasodilatation via A2B receptor activation.2018

    • Author(s)
      K. Fujii, K. Miyashita, A. Kubo, M. Sato, A. Hagiwara, H. Inoue, M. Suematsu, H. Itoh
    • Organizer
      ISN FRONTIERS MEETINGS 22 Feb 2018, Tokyo, Japan
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] ADENOSINE A2 RECEPTORS ARE INDISPENSABLE FOR THE MAINTANANCE OF RENAL BLOOD FLOW UNDER ACUTE ISCHEMIA.2017

    • Author(s)
      K. Fujii, K. Miyashita, A. Kubo, M. Sato, A. Hagiwara, H. Inoue, M. Suematsu, H. Itoh
    • Organizer
      54th ERA-EDTA congress, 3 June 2017, Madrid, Spain.
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 腎皮髄境界アデノシンによる虚血腎保護効果の検討2017

    • Author(s)
      藤井 健太郎, 宮下 和季, 久保 亜紀子, 佐藤 正明, 萩原 あいか, 井上 博之, 竜崎 正毅, 末松 誠, 伊藤 裕
    • Organizer
      第40回日本高血圧学会総会
  • [Presentation] 抗糖尿病治療薬の心血管・臓器保護効果を考える SGLT2阻害薬による腎アデノシン代謝制御の抗肥満作用2017

    • Author(s)
      萩原 あいか, 宮下 和季, 井上 博之, 藤井 健太郎, 宇都 飛鳥, 遠藤 翔, 竜崎 正毅, 伊藤 裕
    • Organizer
      第40回日本高血圧学会総会
  • [Presentation] Novel treatment of chronic kidney disease through regulation of adenylate metabolism2017

    • Author(s)
      宮下 和季, 藤井 健太郎, 伊藤 裕
    • Organizer
      Premium Hypertension Conference 2017
    • Invited
  • [Presentation] SGLT2阻害薬による体重減少における腎アデノシンの意義2017

    • Author(s)
      萩原 あいか, 宮下 和季, 佐藤 正明, 井上 博之, 藤井 健太郎, 伊藤 裕
    • Organizer
      第60回日本腎臓学会学術総会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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