2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K09723
|
Research Institution | 独立行政法人国立病院機構新潟病院(臨床研究部) |
Principal Investigator |
藤中 秀彦 独立行政法人国立病院機構新潟病院(臨床研究部), 臨床研究部, 臨床研究部長 (20447642)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢尾板 永信 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00157950)
山本 格 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (30092737)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 尿バイオマーカー / CKD / 蛋白尿 / 腎臓特異的蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
CKDは尿蛋白と腎機能で定義され、通常の検尿のみでは見逃される例が存在する。本研究の目的は、尿蛋白(-)~(±)でもCKDと診断しうる新規尿検査の開発である。従来の尿バイオマーカーの多くは血漿由来蛋白質であり、CKDのごく早期(顕性蛋白尿発症前)の診断には必ずしも有効ではなく、血漿に由来しない(腎臓由来の)微量の尿蛋白質の測定が必要と考えた。我々が以前作成した腎臓特異的蛋白質のデータベースの解析から新しい尿バイオマーカー候補を複数同定できたので、これらを従来の尿バイオマーカーと組み合わせることで早期CKD診断に有効な尿検査を確立する。表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用したProteON XPR36システムの使用により、所要1~2日で、約100尿検体につき最大5種の尿蛋白質の定量測定値を同時に得ることが可能である。新規尿バイオマーカー候補としてリストアップした複数の糸球体由来、近位尿細管由来、遠位尿細管・集合管由来、腎臓間質由来の各尿蛋白質を順次測定した。そのなかで糸球体由来尿蛋白質A,B,C、間質由来尿蛋白質D、集合管由来尿蛋白質Eが、成人IgA腎症患者尿において健常者尿より高値であることがわかった。これらの多くは尿蛋白質量(up/uCre)と相関していたが、蛋白尿陰性(up/uCre<0.15)の患者数名で健常者よりも高値をとっていた。その検討と並行して、従来の尿バイオマーカー(B2M, L-FABP, NGAL, KIM-1など)を測定した。なかでもL-FABPとKIM-1が腎炎患者尿で健常者尿より高値であり、B2MとNGALは健常者尿でも高値例があった。従来のバイオマーカーは蛋白尿陰性(up/uCre<0.15)の患者には高値例はなかった。CKDの早期診断には、従来の尿バイオマーカーを我々の新規バイオマーカー候補蛋白質と組み合わせることが重要と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの最大の原因は、抗体の選定に苦労していることである。SPR法による尿蛋白質測定に適した抗体にはいくつかの条件があると思われ、「BSAが添加されていない、affinity purify済みの、ELISA用のモノクローナル抗体であること」を必須条件として抗体の選定を行ってきた。それでも抗体によって測定感度のきわめて低いものがあり、2種類以上の抗体を用いて測定を試みても結果が得られない場合も少なからずある。試してみないと結果が得られない現状である。 現時点までに、糸球体由来尿蛋白質A,B,C、間質由来尿蛋白質D、集合管由来尿蛋白質Eが腎炎患者尿で健常者尿より高値であることがわかり、新規尿バイオマーカーとして期待される。これらの多くは蛋白尿量(up/uCre)と相関する。産生ネフロン部位の細胞障害の程度との関連は検討中である。また従来の尿バイオマーカー(B2M, L-FABP, NGAL, KIM-1など)との比較検討が進んでいる。これらについてはSPR法による測定値が市販のELISAキットでの測定値と差異がないか検討され、おおむね差がないことが確認された。従来の尿バイオマーカーの中ではとくにB2MとNGALは健常者尿のいくつかで高値であった。L-FABPとKIM-1は腎炎患者尿で健常者尿よりも高値であり、これらがB2MやNGALよりも尿細管障害をよく反映する可能性が考えられたが、尿細管のほか肝臓など他臓器でも産生されるため、尿中増加は必ずしも障害された尿細管由来を意味せず解釈が難しい場合がある。これら従来の尿バイオマーカーと尿細管障害の程度との関連も検討を進め、より病態を反映する尿バイオマーカーの組み合わせを決定したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
小児・成人、健常者・腎疾患患者とも尿検体の収集が順調に進んでおり、今後も継続したい。新規尿バイオマーカー候補でまだProteONによる測定が成功していない蛋白質については、さらに測定用抗体の選定と新規購入を行う。腎炎患者尿で健常者尿より高値であることがわかった尿蛋白質については、検討尿サンプル数を増やし、それぞれの産生ネフロン部位の障害の程度と尿中排泄量の関連を調べていく。健常者尿では尿中バイオマーカーは測定感度以下になるのが理想であるので特異度を調べていく。尿蛋白量(up/uCre)または尿アルブミン量では腎炎患者と区別できないナットクラッカー症例や菲薄基底膜病の患者尿が、これら新規尿バイオマーカーで区別できるか検討を継続する。ELISAでの少数例の検討では、従来の尿バイオマーカーの中でもL-FABPやKIM-1は腎炎患者尿で菲薄基底膜病の患者尿よりも高値であった。これらが蛋白尿量を反映した差である可能性があるので、さらに検体数を増やして、蛋白尿量を揃えた検討も行いたい。また新規バイオマーカー候補蛋白質についても、腎炎患者と菲薄基底膜病の比較を併せて検討したい。さらに小児と成人との比較(健常者で差があるか、IgA腎症で小児と成人で差があるか)、成人では疾患による差の検討(IgA腎症と糖尿病性腎症とで差があるか)も進めていく。糖尿病患者で微量アルブミン尿の有無とこれら既知・新規バイオマーカーの関連についても調べたい。
|
Research Products
(2 results)