2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎不全の栄養障害・慢性炎症における細胞老化とDNA修復機構の役割の解明
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17K09732
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
木津 あかね 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 登録医 (30623201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 佳世 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30311921)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA損傷 / PEW / 腎不全 / 透析 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病・透析患者における栄養異常は、PEW(protein-energy wasting)と呼ばれ、加齢による老化と類似し低体重、脂肪量低下を認める。その特徴は「やせ」でも肥満関連の炎症因子が高いことであり、動脈硬化に関連し生命予後を悪化させることが報告されている。高齢者においては、サルコペニア・フレイルが注目されるが、低栄養や慢性炎症との関連が報告され、共通の病態があると考えられる。本研究の目的は、腎不全病態でのストレス(尿毒症毒素・高リン血症など)が、DNA損傷とその修復機構を各臓器で活性化して細胞老化と炎症惹起を導くことを検証することであり、さらにDNA損傷・修復機構により慢性腎不全でのPEWの発症進展における老化を介した役割を解明することである。今年度の基礎研究では、腎不全モデルマウスと高リン血症モデルマウスを作成をおこなった。腎不全モデルマウスは腎動脈結紮法を用いて、BUNの上昇を認め腎機能低下を確認した。また、臓器組織でのDNA損傷指標の増加を認めた。さらに、臨床研究として、透析患者におけるPEWと加齢による老化との特徴を比較し検討するため、透析患者での 身体計測、筋力評価、栄養調査、身体活動量と各種血液検査データを収集し実態調査を行っている。これまで300人の透析患者での計測ができており、これまで報告されている同年齢の高齢者のサルコペニア・フレイルと比べて、透析患者は筋力低下を認めていることがわかってきた。次年度も計測を続け、経年的な筋力低下の変化を観察することで、筋力低下と栄養指標、動脈硬化やDNA損傷との関連について統計学的に検討するためのデータベースの構築をおこなっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型マウスを用いて、腎不全モデルマウスと高リン食による高リン血症モデルマウスを作成することができた。研究計画時に予定していたものはアデニン摂食による腎不全モデルマウスであったが、アデニン経口摂取による栄養や代謝への影響が懸念されるため、より腎不全病態に近いモデルを作成するため腎動脈結紮モデルに変更した。当初は技術的に困難であった動脈結紮も行うことができるようになり腎不全マウスを作成することができた。本年度は野生型マウスを用いた検討となった。しかし、臨床研究が今年度より開始することができ、身体計測、筋力評価、栄養調査、身体活動量などの臨床パラメーターはすでに300人検査することができ、当初の計画以上に進行しているため、基礎研究と臨床研究とあわせると総合的におおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、臨床研究では、DNA損傷に注目し、DNA損傷修復機構の活性化の影響を検討するため、末梢血単核球におけるDNA損傷修復機構の活性化の指標であるヒストンH2AXの発現量と臨床的パラメータとの関連について、体重、脂肪量、CRP、動脈硬化の指標との関係を検討する予定である。このことにより透析患者でのDNA損傷修復機構の活性化の臨床的意義を明らかにする。基礎研究では、脂肪細胞で増加する炎症因子、老化やcachexiaのシグナルの発現の変化とDNA修復因子の関与を検討するため、慢性腎不全の病態特有のストレス(尿毒症毒素・高リン血症)として、尿毒症毒素であるインドキシル硫酸(IS)の添加と、高リン血症因子の中でも老化と関連すると注目されているリン酸カルシウムコロイド(CPP)の添加を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は臨床研究が中心となったため、物品購入やマウス飼育費は抑えることができた。次年度は本年度予定していた基礎研究で使用する抗体や試薬を購入予定のため、これらの必要経費にあてる予定である。臨床研究では、人数が増えたことにより、炎症のパラメーターやDNA損傷修復機構の活性化を確認するための抗体など追加購入予定である。
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