2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the molecular basis of mechano-sensing and responding system and its alteration in hypertension
Project/Area Number |
17K09736
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
長瀬 美樹 杏林大学, 医学部, 教授 (60302733)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 高血圧 / メカノバイオロジー / 圧受容器 / Piezo2 / TRPファミリー / イオンチャネル / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今、メカノバイオロジー研究の進歩により、圧センサーの本体が明らかになりつつあり、例えば圧受容器反射にPiezo1, 2が協調的に働くことが示された。本研究では、① げっ歯類、ヒトにおける血圧・血流感知応答システムの存在部位と構造を決定、② 血圧・血流センサー分子と応答カスケードを解明、③ 高血圧動物においてメカノバイオロジーの変容を解析し治療標的を同定、という目標を設定し、研究を実施した。 1) ヒト解剖体を用いて、頚部のメカノセンサー存在領域の解剖学的構造を解析した。内頚動脈起始部に存在する頚動脈洞には、頚動脈洞神経(舌咽神経の枝)が分布し、周辺には舌咽・迷走神経、頚部交感神経幹が走行し、複雑な神経ネットワークを形成していた。大動脈弓には大動脈減圧神経(迷走神経の枝)が分布していた。組織学的に、頚動脈洞の中膜は平滑筋層が薄く、弾性動脈に合致する所見であった。頚静脈孔付近に舌咽神経、迷走神経の上下神経節が存在した。マウスでは迷走神経の上下神経節にPiezo1, Piezo2が高発現していることが示された。 2) 腎臓におけるPiezo1,2発現を解析したところ、Piezo1は腎臓の様々な細胞に発現していたのに対し、Piezo2は糸球体に限局して高発現していた。発現細胞を特定し細胞特異的ノックアウトマウスの作製を進めている。Piezo1,2は培養ポドサイト細胞株にも高発現しており、遺伝子ノックダウン細胞にストレッチ刺激を負荷し、下流シグナルを解析した。Piezo 1, 2 floxマウスと細胞特異的Creマウスの交配を開始した。 3) LPS投与急性腎障害モデルにおいて、TRPファミリーに属するイオンチャネルの発現が著明に増加することを見出した。この分子はメカノセンサーとして働くことが知られており、発現細胞を特定し、細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを用いた機能解析を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標①②の血圧・血流感知応答システムの解剖学的特性解析とメカノセンサー分子の発現局在解析は、頚動脈洞、大動脈弓と上下神経節、糸球体において結果が得られた。その機能的解析については、ノックアウトマウスや培養細胞を用いて行う予定であるが、必要なfloxマウスを入手して、交配を開始している。 新たに、TRPファミリーの一つが腎障害に深く関わることを示唆する知見が得られ、当該分子のfloxマウスを入手するMTAを交わした。次年度はいくつかの腎障害モデルを作製して、当該TRPの機能的役割、シグナル解析、治療介入についての研究を追加する。 血圧制御について重要な、腎臓のafferent nerveの解剖(感覚線維が分布する部位、神経節までの走行)や圧センサー部位についての解析を追加することとした。 高血圧の動物モデルとして、Angiotensin II (+食塩)マウス、若年性片腎摘(+食塩)ラットを作製した。本モデルにおけるメカノ感知応答シグナルを次年度解析する。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) げっ歯類、ヒトにおける血圧・血流感知応答システムの存在部位と構造を決定:心房、腎臓の傍糸球体装置に存在する、流れ・伸展受容器が存在する部位の解剖学的構造とセンサー分子について、神経染色、免疫組織染色、電子顕微鏡解析などで解析する。腎臓の神経性血圧調節において、遠心性交感神経のみならず、求心性感覚神経の役割も重要であることが示されているが、求心性線維の腎臓内の分布様式、求心路、センサー分子について不明な点が多く、その全容を明らかにする。 2) 血圧・血流センサー分子を特定し、下流の応答シグナルカスケードを解明。Piezo1, Piezo2 , TRP floxマウスと細胞特異的Creマウスとの交配により、コンディショナルノックアウトマウスの作製を開始した。得られたマウスを用いて、Sodium Nitroprusside、Phenylephrineを投与して血圧を急性に下降・上昇させ、また大動脈に加圧cuffを装着して圧を変化させ、候補分子の発現変化、活性変化を解析する。また、腎障害モデル(リポポリサッカライド投与マウス、虚血再灌流腎障害マウスなど)を作製し、腎障害の程度、メカノセンサー下流候補分子の発現を比較して、シグナルカスケードを明らかにする。 3) すでに作製した、高血圧の動物モデルとして、Angiotensin II (+食塩)マウス、若年性片腎摘(+食塩)ラットや、市販の自然発症高血圧ラットSHR、Dahl食塩感受性高血圧ラット、片腎摘アルドステロン食塩マウスにおいて、メカノ感知応答系の変化を解析する。
|
Causes of Carryover |
杏林大学の動物実験施設の使用開始時期が動物施設の改修工事のため2019年5月に延期され、それを受けて遺伝子改変動物を用いた実験が次年度に延期され、ノックアウトマウスの繁殖、飼育やモデル動物作製、解析にかかる研究費が次年度に繰り越された。 その間、正常マウスを用いた検討で非常に興味深い知見が得られたこと、来年度は研究協力者が2名参画することにより、研究を大きく発展させられると考えている。
|