2017 Fiscal Year Research-status Report
ePTFE人工血管と自家動静脈グラフト移植後の内腔狭窄の機序の解明と治療法の探索
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17K09741
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
金 徳男 大阪医科大学, 医学研究科, 講師 (90319533)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PTFE人工血管 / 動静脈シャント / 内膜肥厚 / キマーゼ / 線維芽細胞 / 筋線維芽細胞 / 遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、ラット動静脈シャントモデルの確立 麻酔下SDラットにヘパリンを投与後、頸部の正中切開を行い、左外頚静脈と左総頸動脈をそれぞれ剥離した。上記の血管の血流遮断後、それぞれの血管を切断し、10-0ナイロン糸を用いて端―端吻合を行った。その後、血流を再開し、正中切開口を吻合後に飼育施設に戻した。その2ヵ月後に動静脈シャントサンプルを採取し、動静脈の吻合部付近の静脈側と動脈側の内膜肥厚特徴について免疫組織学的な検討を行った。結果、動静脈シャント作製後の血管内膜肥厚は主に静脈側で顕著であった。また、ビメンチンとαSMA抗体を用いた免疫染色では、血管内膜肥厚部位の主な細胞成分が線維芽細胞や筋線維芽細胞のような間葉系細胞であることが示唆され、従来の平滑筋細胞が肥厚内膜の主な細胞組成であるとの報告と異なる結果が得られた。このように、ラットのような小動物でも頸部動静脈の端―端吻合が可能であり、今後本モデルを生かして内膜肥厚細胞成分の由来について検討を行うつもりである。 2、イヌ人工血管移植モデルを用いた新旧バージョンのPTFE人工血管の内膜肥厚特徴についての比較検討 これまで臨床で使用されてきたPTFE人工血管の血管壁には20~50ミクロンの隙間が存在していたが、この隙間構造について修正を行った新しいPTFE人工血管が去年から発売されるようになった。そこで、新しいPTFE人工血管における内膜肥厚特徴を従来の結果と比較する必要性が生まれたゆえに、次のような検討を行ってみた。ビーグル犬5頭を用いて、左頚動静脈間には古いバージョンのPTFE人工血管を、そして右頚動静脈間には新しいバージョンのPTFE人工血管を移植し、その4ヵ月後に血管サンプルを摘出して比較検討を行った。結果、新しいバージョンのPTFE人工血管においても従来の血管と極めて類似する内膜肥厚特徴を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット動静脈シャントモデルの作製方法は予定通りに確立できた。そして、予想外に、新しいPTFE人工血管が発売された故に、旧バージョンのPTFE人工血管との比較検討に時間や金銭を費やしてしまった。上記以外に、自己動静脈シャントや人工血管移植後の血管内膜肥厚の機序を検討するため、SDラットを用いて、頚静脈の頸動脈間移植や1mm内径のPTFE人工血管の腹部動脈間移植を行なってみた。我々は、これまでに人工血管移植後の血管内膜肥厚にはどうも移植後に活性化される外膜側の線維芽細胞の管腔内への遊走が非常に重要な役割を果たしていることやその活性化に関与するファクターとしてキマーゼを中心としたレニンアンジオテンシン系の活性化が密接に関連することを示唆してきた。このような機序をより明白にさせるため、上記の二つのラットモデル作製後にその周囲にGFP発現線維芽細胞(Sprague-Dawley (SD) Rat Mesenchymal Stem Cells with GFP)を術時に降りかけてみた。しかし、それらの細胞は腫瘍の様に生着し、PTFE人工血管への遊走像は見られなかった。主観的な憶測に過ぎないかもしれないが、GFP発現線維芽細胞が移植後に単細胞状態では異物として認識され、宿主の免疫細胞などによって余儀なく排除され、集団となった細胞だけがその攻撃に打ち勝って生着されたのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
GFP発現線維芽細胞が単細胞では宿主免疫系の攻撃によってどうしても生着できないことが明らかになった。本実験の目的は人工血管移植後に見られる人工血管管腔内内膜肥厚が外膜側の線維芽細胞の管腔内への遊走が関与するという仮説を立証するためであった。次のステップとして、違い種類の線維芽細胞を見つけてもう一回同様の実験を行うことと、人工血管の外膜側に生体適合性素材をコーティングし、外膜側の線維芽細胞がそれを乗り越えられないような工夫をしなければならないと思っている。そして、線維芽細胞の管腔内遊走の遮断血管において内膜肥厚面積が有意に少なかった場合、我々のこれまでの仮説が間接的に証明されるのではないかと考えている。それに加えて、キマーゼ阻害薬とマイトマイシンCのラットePTFE人工血管腹部動脈間移植モデルにおける内膜肥厚に対する単剤と併用効果も次年度から検討していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度分の研究費を9割以上使用できた。残った数万円は次年度の実験にしようしたい。次年度の実験には動物代以外にもマイトマイシンCや浸透圧ポンプなどの購入費用が生じるのでこのような物品の購入に充てたい。
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Research Products
(7 results)