2017 Fiscal Year Research-status Report
腎血管性高血圧への血行再建術の適応基準の確立と病態改善機序の解明
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17K09743
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
岩嶋 義雄 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (80448068)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腎血管性高血圧 / 経皮的腎動脈形成術 / 二次性高血圧 / 高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎血管性高血圧は腎動脈の狭窄や閉塞によるもので、二次性高血圧の代表的疾患であり、その原因は動脈硬化性(ARAS)と線維筋性異形成(FMD)に大別される。腎血管性高血圧への血行再建術(経皮的腎動脈形成術: PTA)はその治療法の一つであり、血圧低下をもたらすことも多く、効果的な治療法と考えられるが、血行再建に伴う病態の変化や、治療効果を予測するための有用な指標は明らかでない。PTA前後の臨床評価を行い、治療効果・予後を比較して、本年度は以下の研究成果を論文報告した。 ① 腎血管性高血圧へのPTAによる診察室外血圧での降圧効果や血圧変動への影響については明らかでないことから、PTAの1年後に再狭窄が認められない症例を対象に、術前と術後1年間での診察室血圧と家庭血圧の推移を評価した。PTAは診察室外血圧(家庭血圧)でも良好な降圧効果をもたらし、ARASと比べてFMDのほうが早朝の家庭血圧への降圧効果や血圧変動性の改善にも優れていた。また、わずかではあるものの、内服する降圧薬を減らしていた。 ② ARASは腎血管性高血圧の原因として頻度が多く、腎機能障害が合併することも多いが、腎機能とPTA後の予後との関連については明らかでない。推定糸球体濾過量(eGFR)かつ早朝尿からのアルブミン尿/蛋白尿で腎機能を評価して、それぞれ重症度別に分類し、PTA後の心血管・腎イベント発症(脳卒中、心筋梗塞、大動脈解離、血液透析導入、死亡)との関連を検討した。腎機能低下はARASへのPTA後の予後不良と関連しており、とくに、術後1年でのeGFR低下は予後不良であった。したがって、術前に微量-顕性のアルブミン尿/蛋白尿を認めた場合では、PTAによる治療効果は限定される可能性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した平成29年度の研究計画の大半は順調に遂行することができた。腎血管性高血圧への血行再建術は、これまでは診察室血圧を指標とした報告が多かったが、診察室外血圧の降圧効果や、血圧変動性の改善効果を有することを見出して、血行再建に伴う病態の変化に関する新たな知見を示した。また、血行再建術と術後の腎機能の推移については不明な部分が多かったが、術後の腎機能悪化が予後と関連することを明らかにして、血行再建術が望ましくない患者像を示した。これらの成果の一部を、欧州で開催された国際学会での招聘講演で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究のうち、「血行再建術による病態の推移」についてさらに検討を進める。研究対象者数は多くなく、その確保が研究遂行の課題であるが、疾患を示唆する所見を見逃さず、高血圧治療ガイドライン2014などの診療ガイドラインを遵守して治療対象者を選択する。 平成30年度は、研究計画に沿って、以下を推進する。 1)腎血管性高血圧患者を対象に、血行再建術の前後での診察室血圧だけでなく診察室外血圧を併用することで、詳細な血圧評価を行い、生体由来試料を収集して治療反応性を多角的に評価する。 2)治療反応性の有無で比較・検討することで、血行再建の治療効果に関連する生体分子を探索する。 3)所属施設でこれまで施行された腎血管性高血圧患者の予後調査を行い、予後規定因子を見出す。
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Causes of Carryover |
本年度は、当初の計画より少額の研究費で効率よく、研究遂行することができた。また、以前に確保できた物品・消耗品を本研究に応用することで使用額を抑制することが出来た。今年度に計画していた実験の一部を遂行するためには本年度の助成額以上を必要とするため、次年度の助成額と併せて使用するように考慮した。
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Research Products
(10 results)