2017 Fiscal Year Research-status Report
神経分泌性ペプチドを標的とした脳梗塞急性期の新規治療薬の開発
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17K09746
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山口 淳 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00314336)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 神経内分泌性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳血管障害は日本人の死因の第4位で、65歳以上の要介護患者の原因の第1位を占め、入院となる原因疾患の第1位である。なかでも脳梗塞は脳血管障害の約6-7割を占め、その予防法や治療法の開発は急務である。脳梗塞急性期には、血管再開通療法と脳保護療法が施行されるが、前者は適応患者が限られ、新たな脳保護薬が切望される。申請者は、内因性の分泌性因子を標的としたスクリーニングを施行し、新たな脳梗塞治療薬候補として神経分泌性ペプチドVGFを報告した。当該研究は、(1) 神経保護・神経突起作用を有するペプチド断片の同定と解析、(2)Neurovascular unit概念に基づく解析を施行し、新規治療薬の開発を目指すものである。当該年度は、上記(1)に関しては、(1-1)神経保護・神経突起伸展作用によるペプチド断片のスクリーニング を施行した。その結果、2つのペプチド断片がChemical ischemia(化学的虚血)においてラット神経細胞株PC12の生存率を改善する作用を認めた(MTT Assay)。しかし、これらのペプチドをPC12細胞に投与しても、神経突起進展作用は認めなかった。来年度は、化学的虚血に暴露したPC12細胞の生存率を評価基準として、その受容体の検索、下流シグナル経路の解析を施行する予定である。また、これらのペプチドを用いて、マウス脳梗塞モデルの運動機能や脳梗塞巣の縮小効果を解析する評価系を確立する。上記(2)に関しては、脳梗塞モデルの脳切片を用いた免疫染色法による解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、申請者が新たな脳梗塞治療薬候補として報告した神経内分泌因子を、新規治療薬として開発するために、以下の項目を予定している。 (1) 神経保護・神経突起作用を有するペプチド断片の同定と解析 具体的には、(1-1) 神経保護・神経突起伸展作用によるペプチド断片のスクリーニング、(1-2) 受容体の同定とシグナル経路の解析 (2) Neurovascular unit概念に基づく解析 具体的には、(2-1)マウス脳梗塞モデルでの運動機能評価、脳梗塞縮小効果、(2-2)脳血管、グリア細胞、細胞外基質、脳浮腫、神経再生に対する影響評価である。 (1-1)に関しては、当該年度は予定どおり、VGFの断片ペプチド断片のうち、2種類のペプチド断片がChemical ischemia(化学的虚血)において、ラット神経系PC12細胞の生存率を改善する効果を確認した。しかし、これらのペプチド断片をPC12細胞へ投与しても、神経突起進展作用は認めなかった。以上より、今後はこれらのペプチド断片が関与するシグナル経路や受容体の解析を生存率を評価基準として解析する。併せて、これらのペプチドが神経突起伸展作用を有する神経細胞株を検索する。(1-2)に関しては、ペプチド断片のスクリーニングに時間が掛かり解析が進んでいない。(2)に関しては、マウス脳梗塞モデルを用いて、運動機能評価系の準備を行い、また、形態学的解析のための抗体を準備した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究は、(1) 神経保護・神経突起作用を有するペプチド断片の同定と解析 と、(2) Neurovascular unit概念に基づく解析、を中心に進める物である。今後は、当該年度に神経保護作用を認めた2種類のペプチド断片を用いて、その受容体の同定とシグナル経路の解析を進める。また、神経保護作用に加えて、神経突起進展作用を認める神経系細胞を検索し、神経突起進展作用による評価系も確立する必要がある。in vivo実験系に関しては、ニューロンのみならず、脳血管、グリア細胞、乏突起膠細胞を包括したNeurovascular unitの概念に基づく脳保護作用が肝要である。当該研究も、in vitro実験系に加えてマウス脳梗塞モデルを用いて、そのグリア-血管、グリア-ニューロンの機能関連を解析することでNeurovascular unitの観点から研究を進める。具体的には、マウス脳梗塞モデルでの運動機能評価、脳梗塞巣の縮小効果の解析や、脳血管-グリア細胞の形態学的解析、細胞外基質、脳浮腫、神経再生に及ぼす影響の解析を予定している。
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Research Products
(2 results)