2018 Fiscal Year Research-status Report
虚血性脳損傷に対する腸内細菌叢制御による新規脳保護療法の開発
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17K09763
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
卜部 貴夫 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60291663)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳虚血 / 腸内細菌叢 / 酸化ストレス / 炎症 / リポポリサッカライド / 高脂肪食 / 活性化ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,腸内細菌叢の異常による酸化ストレスや炎症などの組織傷害性要因が虚血性脳損傷に与える影響を分子病態の面から明らかにし、ペプチド療法、プロバイオティクス、腸内細菌移植による防御メカニズム解明を目的とし、これら治療法の臨床応用を目指し立案した。平成30年度は慢性脳低灌流モデルを用いて、腸内細菌叢の変化および炎症との関連を比較検討した。特に炎症反応に関連する分子の評価をタンパク質レベルで検討したので,以下に研究実績を報告する。 糖尿病はアルツハイマー病のリスクとなることが知られて、最近ではアルツハイマー病でみられるアミロイドプラーク内でグラム陰性桿菌細胞壁外膜の構成成分であるLPS(Lipopolysaccharide)が検出される報告があり、認知症の患者も血中LPSが高いことが報告されている。糖尿病の動物モデルとして高脂肪食(high fat diet: HFD)を12週間摂取させたマウスと、対照として低脂肪食(low fat diet: LFD)を同様に摂取させたマウスに両側総頚動脈狭窄による慢性脳低灌流モデルを作製した。HFD群とLFD群において、炎症反応と関連する活性化ミクログリアの脳内分布と経時的変化の免疫組織化学的評価、および血中LPS値の経時的変化を検証した。その結果、虚血負荷後2週目、4週目においてHFD群ではLFD群に比較して大脳白質障害が強く、活性化ミクログリアが有意に増加し,血中LPS値が有意に高くなることを確認した。 さらにLPSの受容体であるTRL4とLPSの脳内での変化を検討した。HFD群ではLFD群に比較して脳内LPSとTRL4発現量が有意に多く、炎症が強くなっていることが確認できた。 HFD群とLFD群の腸内細菌叢の変化と炎症反応の経過を比較検討するために、糞便中腸内細菌のリボソームRNA解析を定量的RT-PCRを用いて開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度で慢性脳低灌流モデルにおける虚血脳での酸化ストレスの評価は完了し、平成30年度は炎症反応との関連の検討として、糖尿病に関連する腸内細菌叢のグラム陰性桿菌由来のLPSと受容体のTLR4の関与を明らかにした。このように脳虚血下での腸内細菌叢の変化による酸化ストレスと炎症が、虚血性白質障害に関与することが示され、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の推進方策; 脳内で検出されたLPSの由来を検証する。 その評価法としてFITCで標識したDextranをHFDマウスに経口投与し脳内への移行の状態を観察する。腸管傷害の評価が必要のため、タイトジャンクションの破綻状態を評価する。 治療法開発に向けて抗生物質を投与し障害に関与する細菌を抑制し、脳保護効果を検証する。 研究遂行での課題; HFDモデル作製には一定の日数が必要なので、効率よく各種サンプリングを実施する。
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