2018 Fiscal Year Research-status Report
Semaphorin3Aを標的とした脳虚血後軸索再生の分子病態解明と治療応用
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17K09764
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上野 祐司 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00349002)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳血管障害 / 脳虚血 / 軸索再生 / Semaphorin3A / エクソソーム / microRNA / 初代培養神経細胞 / ラット中大脳動脈閉塞モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
初代アストロサイト培養を作成し、アストロサイトにおけるGFAPの発現は3時間の無酸素無糖条件(OGD)後増加したが、Semaphorin3A(Sema3A)阻害薬であるSM-345431投与にて減少した。同様に、Sema3Aの発現もSM-345431投与で減少した。アストロサイト由来のエクソソームに着目し、アストロサイト内とアストロサイトの培地からそれぞれエクソソームを抽出した。エクソソームのサイズ、量は非OGD群、OGD群、OGD後SM-345431投与群の3群間で変化なかった。しかし、SM-345431投与の虚血アストロサイトから分泌されたエクソソームをOGD後の培養神経細胞に投与したところ、非OGD群、OGD群に比して軸索伸長促進効果が得られた。Microarrayで網羅的に解析したところ、OGD後SM-345431投与群のアストロサイトから分泌されたエクソソームでは、OGD群に比較して、rno-miR-30c-2-3p、rno-miR-326-5pの有意な発現低下が見られた。SM-345431投与の虚血アストロサイトから分泌されたエクソソームを投与した培養神経細胞では、prostaglandin D2 synthase (ptgds)の発現が上昇していた。 9週雄性Wistarラットを用いて永久的中大脳動脈閉塞モデル(Middle cerebral artery occlusion: MCAO)を作成した。Peri-infarct areaを標的にOsmotic mini-pumpを用いてSM-345431と共にPTGDS阻害薬であるAT-56を投与したところ、Peri-infarct areaの神経細胞に発現するPTGDSは低下したものの、GSK-3βの発現には影響しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、ラットMCAOモデルにおいてperi-infarct areaにおけるSema3Aの発現を解析した。また、MCAO後にSM-345431を投与することにより、peri-infarct area でのpNFH(軸索マーカー)の発現が上昇し、神経徴候や運動機能が改善すること、In vitroではSM-345431が虚血後の神経細胞内の情報伝達系(Rnd1/R-RAS/Akt/GSK3β)を介して軸索再生作用があることを確認した。 脳梗塞慢性期には、アストロサイトが集簇しグリア瘢痕を形成し、軸索再生の障壁となる事が知られている。平成30年度では、SM-345431のグリア瘢痕への作用をラットMCAOモデルとIn vitroで検証した。In vitroでは、虚血後のアストロサイトにおいてSM-345431はアストロサイトの活性化をすること、虚血後にアストロサイトから放出されるエクソソームにおけるrno-miR-30c-2-3p、rno-miR-326-5pの発現を抑制することを確認した。また、虚血後にSM-345431を投与したアストロサイトから放出したエクソソームは、軸索にエンドサイトーシスにて取り込まれ、ptgdsを介して虚血後の軸索再生を促進させる作用機構が明らかにされた。これまでSema3AはRnd1/R-RAS/GSK3β/CRMP2を介したシグナル経路を介して軸索進展を制御することが知られているが、本研究ではmicroRNAやptgdsを介して虚血後の軸索再生に関わる新たな分子病態機構が解明された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、脳梗塞慢性期のperi-infarct areaにおいてSema3Aを機能阻害することが、軸索再生、機能回復を促進する上で重要であると考えられた。一方で、脳梗塞の亜急性期から慢性期にかけてアストロサイトが集簇するグリア瘢痕形成を制御することも、軸索再生において非常に大切であるという結論に至っている。エクソソームのグリア瘢痕形成の制御に関わるメカニズムの解明を進めていく。
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