2017 Fiscal Year Research-status Report
不均一反復磁気刺激法の長期効果と脳機能連関:正常者と薬剤抵抗性てんかん患者の比較
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17K09804
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
榎本 雪 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80396374)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不均一反復磁気刺激法 / 薬剤抵抗性てんかん / 長期効果 / 運動閾値 |
Outline of Annual Research Achievements |
不均一反復磁気刺激法(quadripulse transcranial magnetic stimulation, QPS)による1次運動野(M1)刺激は、M1にhomotopic effectを、1次感覚野にはheterotopic effectを誘導する。4刺激の刺激間隔を50msとしたQPS(QPS-50)によるM1刺激は、健常者の脳機能を抑圧する。 我々は、ミオクローヌスてんかんや薬剤抵抗性てんかんを有する患者のM1をQPS-50で刺激することにより、てんかん抑制効果を呈するのではないかと考えた。しかし、逆に、脳機能を賦活化させるというパラドキシカルな結果に終わった。興味深いことに、QPS-50による脳刺激は、薬剤抵抗性てんかん患者の運動閾値(active motor threshold, AMT)を継続的に低下させており、患者脳の異常な興奮性が示唆された。従来、健常者に対するQPSのM1刺激はAMTに影響しないと考えられていた。しかし、健常者において、QPSによる定期的なM1刺激が脳に与える長期的効果は今まで検討されておらず、患者群での長期効果が疾患特異的なものなのか、健常者でも生じる変化なのかという点は不明であった。 平成29年度は、週に1回のQPS-50刺激を4人の健常者に対して連続12週間行い、健常者の脳機能に与えるQPS-50の長期刺激効果を検証した。その結果、QPS-50は健常者のM1機能を抑圧したが、AMTは全く変化させなかった。QPS-50によるM1の長期刺激効果は、健常者とてんかん患者とで異なることが明らかとなり、難治性てんかん患者の脳機能の恒常性に、健常者とは異なる変化が生じているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4人の健常者に対して12週間のQPS刺激を行った。薬剤抵抗性てんかん患者のAMTは継続的に低下したが、健常者のAMTは全く影響を受けず、両者の違いは明らかであった。被験者数は少ないが、十分に論文化可能な結果であり、論文作成を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、QPSの大脳刺激が脳波に与える影響を検証する。また、抗てんかん薬の薬効を明らかにするために、QPS刺激による脳機能の変化を検証する。
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Causes of Carryover |
ディスポーザブルの電極やアースの使用量が当初の計画よりも少なかったため、差額が発生した。今後、精力的に実験を進める予定であり、文献収集や論文校正などの費用に充てる予定。
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