2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞と細胞外基質の物理的相互作用による肝臓の代謝機能異常と線維化の分子基盤の解明
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17K09820
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
土屋 恭一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (60451936)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満に伴う脂肪肝や糖脂質代謝異常において、肝実質へのCCR-2陽性骨髄系細胞の浸潤が促進的役割を果たしている。RMCが肝実質へ浸潤する機構及び肝細胞との相互作用について、細胞接着・接触の視点から検討した。 肥満マウス由来の肝類洞内皮細胞(liver sinusoidal endothelial cells:LSEC)では、ケモカインMCP-1の受容体CCR-2、及び接着因子(VCAM-1、Selectins)の発現が増加していた。肥満マウス肝臓の電子顕微鏡による解析では、単球・マクロファージがLSECと接着する像や、肝実質細胞間に浸潤している像が多数観察された。還流装置による細胞接着実験では、肥満マウス由来LSECにおいて単球の接着が著明に増加しており、接着因子VCAM-1のリガンドVLA-4に対する中和抗体の前処置により接着が抑制された。肝細胞とマクロファージ細胞株RAW264.7細胞の接触共培養では、糖新生関連遺伝子(Pck1, G6pc)の発現誘導と糖産生の増加が認められ、Notch阻害剤によりPck1, G6pcの発現誘導は抑制された。高脂肪食負荷マウスへの抗VLA-4抗体投与により、肝臓へのGr-1(好中球マーカー)およびCCR-2(骨髄系細胞マーカー)陽性細胞の浸潤が抑制され、MCP-1、CCR-2、TNF-αの遺伝子発現の減少とインスリン抵抗性および耐糖能の改善が認められた。肥満では、LSECにおいてMCP-1の発現が亢進しており、肝臓への骨髄系細胞の誘導に促進的役割を果たすことが示唆された。また、骨髄系細胞はLSECとの細胞接着亢進を介して肝実質に浸潤し、肝細胞との細胞接触を介して代謝異常を惹起する機構が推察された。以上の研究結果を責任著者としてCell Reports誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NASHモデルマウスであるMC4R欠損マウス(Am J Pathol 2011;179:2454-2463)、及びメチオニン・コリン欠乏食負荷による肝線維化モデルマウスの肝臓において、細胞接着分子、細胞外基質とその受容体関連分子等、細胞接着・接触に関連する遺伝子群の発現が著明に増加していたことから、前記の知見に基づいて抗VLA-4中和抗体を投与した。予想に反して、抗VLA-4中和抗体投与群では肝臓の炎症及び線維化が増悪していた。従って、少なくともマウスでは、肝線維化及びNASHの発症または進展においてはVLA-4は保護的に作用している可能性が考えられ、肝疾患の病期または病態において細胞-細胞間物理的相互作用の病態生理的意義は異なることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前記の進捗に基づき、今後はモデルマウスにおける肝疾患の病期または病態を選択し、その状況における細胞-細胞間及び細胞-基質間の物理的相互作用の病態生理学的意義を明らかにしたい。具体的には、前述のMC4R欠損マウス、メチオニン・コリン欠乏食負荷マウスにおいて、1)脂肪肝、2)肝線維化・炎症、3)肝細胞癌各々の病期・病態に対して抗VLA-4中和抗体、及び他の接着因子、接着因子リガンドに対する中和抗体を投与する。各々の肝病変の変化を評価し、改善が認められたモデルマウスにおいて中和抗体により阻害した分子の欠損マウスを作成する。
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