2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞と細胞外基質の物理的相互作用による肝臓の代謝機能異常と線維化の分子基盤の解明
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17K09820
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
土屋 恭一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (60451936)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
顆粒球特異的にEGFPを発現する遺伝性肥満マウス(ob/ob; Lysozyme M-EGFPマウス)の生体イメージングにより、対照の非肥満マウス(WT; Lysozyme M-EGFPマウス)と比較して多数の顆粒球が肝類洞に接着し、肝臓内に浸潤していることを見出した。肥満マウスの肝類洞内皮細胞(LSEC)では、ケモカインや炎症性サイトカイン、接着因子の遺伝子発現が上昇し、LSECの細胞表面において接着因子のひとつであるVCAM-1(vascular cell adhesion protein-1)の発現が増加し、VCAM-1と結合するVLA-4(very late antigen-4)を介した白血球との細胞接着が亢進していることを明らかにした。肥満マウスにVLA-4の阻害抗体を投与すると、顆粒球とLSECの接着および肝臓への白血球の浸潤が抑制され、高血糖が改善した。肥満マウスの肝臓では浸潤した白血球が肝細胞と接触している様子が電子顕微鏡で観察され、マウス肝臓内の白血球と肝細胞を実際に接触させて培養すると肝細胞からの糖の産生が増加した。この時、細胞同士の接触により活性化されるシグナルであるNotchシグナルを介して、糖の産生を促進する酵素(グルコース-6-ホスファターゼ)の遺伝子発現が増加することがわかり、肝臓に浸潤した白血球が肝細胞と接触し、Notchシグナルを活性化して高血糖を引き起こす機構が解明された。 本研究により、肥満を原因とする糖代謝異常において、LSECと白血球とのVLA-4を介した細胞接着、および浸潤白血球と肝細胞とのNotchシグナルを介した細胞接触の意義が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外基質による細胞接触シグナルの活性化と糖・脂質代謝への影響については未解明であり、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
NASHモデルマウス等を用いて、細胞外基質が肝細胞に物理的に接触することに起因するシグナル活性化が糖・脂質代謝に影響する機構を明らかにする。
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