2017 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of anti-inflammatory effect of protein S via regulation of macrophage activity in diabetic nephropathy
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17K09824
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
矢野 裕 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Gabazza Esteban 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00293770)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖尿病 / アポトーシス / 腎症 / モデルマウス / 凝固線溶関連蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は血中のプロテインSがTotal, Freeともに糖尿病患者で低下し、血糖の指標であるHbA1cと負の相関があることを明らかにした。RAW264.7 細胞を用いてプロテインSによりM2マクロファージへの分化は確認された。糖尿病患者の血中単核球でのTAM受容体の発現と、モデル動物を使用した腎臓におけるマクロファージに関しては検討中である。プロテインSの受容体であるTAM受容体がエンドペプチターゼの一種であるMatrix Metalloproteinase(MMP)で制御されているとの報告があり、更にMMPの糖尿病での意義が不明であるのでMMPに注目し、糖尿病との関係を検討した、MMPファミリーの一種であるMMP-2(Matrix Metalloproteinase-2)が糖尿病患者の血液中で上昇し、Cペプチドと正の相関が認められたため、MMP-2とβ細胞との関係を検討した。 まず、MMP-2過剰発現(MMP-2Tg)マウスを用い、β細胞に関する検討をおこなった。MMP-2Tgマウスをストレプトゾトシンで糖尿病状態とした検討では、野生型マウスに比較し、インスリン分泌能は残存し、組織学的にもβ細胞が多く残存していた。その理由としてβ細胞のアポトーシスが抑制されていることが明らかになった。次にβ細胞系の培養細胞であるMIN-6細胞を用いて、MMP-2が細胞膜上のインテグリンを介してAktとBADをリン酸化し、アポトーシスを抑制する機序を明らかにした。また、この機序がMMP-2特異的であることも確認した。 また、平成30年度に使用する予定であるポドサイト特異的ヒトTGFβ1過剰発現マウスでは、自然経過で腎臓の線維化による腎不全が起こることが明らかになり、今後の実験に使用できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテインSに関する実験について、腎組織に浸潤するマクロファージについては、F4/80陽性細胞がプロテインSトランスジェニックマウスと野生型マウスで有意差がないため更なる検討が必要である。また、RAW264.7 細胞を用いた実験では、ヒトプロテインSによりM2マーカーが上昇する可能性があり詳細な検討が必要である。また、今後ヒトの検体と用いたTAM受容体の発現も解析を継続する。 ポドサイト特異的ヒトTGFβ1過剰発現(Podocyte TGFβ1-Tg)マウスはヒトTGF-β1全長をポドサイトに過剰発現させたマウスで、TGFβ1のDNAから転写、蛋白への発現、活性化を再現しており、ヒトにおけるTGFβ1の発現過剰の病態を反映すると考えられる。ポドサイトでのTGFβ1の過剰発現は糖尿病腎症で認められ、ポドサイトの機能障害と分泌される過剰なTGFβ1による糸球体や間質を構成する細胞に影響を及ぼし腎症を進展させると考えられている。このマウスは、血中、尿中にヒトTGFβ1が高値で15週から腎臓の線維化を認め、週数とともに糸球体から始まる線維化が間質に及び腎不全に至るマウスである。従って、本マウスの線維化を抑制できれば、糖尿病腎症におけるTGFβ1が関与する線維化を抑制できる可能性があると考えられ、本マウスを用いて有効な蛋白のスクリーニングを行う。 また糖尿病状態でのプロテインSの作用として 抗アポトーシスの機序を介しての腎症進展抑制作用だけではなく、膵臓のβ細胞に対しても抗アポトーシス機序による保護作用が認められた。このような効果はインスリン分泌を維持しつつ、高血糖による腎症の進展抑制という複数の臓器に同時に糖尿病の治療を行うことになり有益性が高いと考えられる。今後、我々が研究してきた凝固線溶系蛋白及び、その関連因子を中心に糖尿病の際に複数の臓器に対する影響についても探索を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はプロテインSだけでなく、凝固線溶系因子及び関連蛋白を中心に腎症を抑制する蛋白を特定し、その機序を詳細に解析していく。方法としては、候補になる蛋白をポドサイト特異的ヒトTGFβ1過剰発現(Podocyte TGFβ1-Tg)マウスに対して投与し、線維化に対する効果を中心にアポトーシス、炎症、細胞外基質、成長因子の発現等の検討を行う。また、浸潤するマクロファージの解析も同時に行う。更に、糖尿病腎症を臨床的に抑制するとされるGLP-1やSGLT2阻害薬、降圧薬のARB,ACE阻害薬に関しても検討していく。Podocyte TGFβ1-Tgマウスに有効とされる凝固線溶系因子及び関連蛋白が探索されたら、複数の種類の培養細胞(HUVECs、NHMCsなど)を用いて、サイトカイン、成長因子、細胞外基質の代謝に関する因子の発現との関係や、経路も含めたアポトーシスとの関係をTGFβ1の刺激下に探索された蛋白を加え検討する。これらの解析で有効と考えられる蛋白が明らかになれば、その蛋白を糖尿病モデルマウスに投与し、血中Cr、尿蛋白の推移と腎臓の組織を解析し有効性を検討する。 また、プロテインSのように糖尿病状態において複数の臓器に対する保護作用についても探索して行く。Podocyte TGFβ1-Tgマウスにおいても血中のTGFβ1が高値であるため、腎臓以外にもTGFβ1の影響が認められる可能性があり、腎臓以外の組織に関しても解析を行う。更にPodocyte TGFβ1-Tgマウスに有効とされる蛋白を、糖尿病モデルマウスへ投与した際には、血糖の上昇程度を確認しながら、腎臓だけでなく、糖代謝に関係する臓器(膵臓、肝臓など)の解析を行う。
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Research Products
(6 results)