2018 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of anti-inflammatory effect of protein S via regulation of macrophage activity in diabetic nephropathy
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17K09824
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
矢野 裕 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Gabazza Esteban 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00293770)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 糖尿病腎症 / 線維化 / アポトーシス / 凝固線溶系蛋白 / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
TGF-β1 (transforming growth factor-β1)は、糖尿病においてポドサイトでの発現が上昇し、糖尿病腎症における炎症、細胞外基質の蓄積、線維化の進展に関与する重要な因子といわれているが詳細な機序は不明な点が多い。我々は、ポドサイトにエクソンとイントロン全長が組み込まれたヒトTGF-β1を特異的に過剰発現させたマウスを作製した(Podocyte-TGF-β1Tgマウス)。このマウスでは、TGF-β1のDNAからの転写、蛋白への発現、活性化の過程が再現され、より病態を反映していると考えられる、今まで報告がない新しいマウスモデルであり、ヒトにおける腎症における線維化の病態を再現すると考えられる。本マウスでは、血中及び尿中のTGF-β1は約2倍に上昇し、8-10週齢で野生型マウスに比較し、血中Cr、BUNが有意に高値を示し、20-22週まで経時的な上昇を認めた。また、尿蛋白は20-22週で高値を認めた。組織学的には、12-14週では糸球体硬化症の有意な悪化を認め、20-22週で有意な尿細管間質線維化の進行を認めた。20-22週で腎組織中ヒドロキシプロリン含有量が有意に高値を示した。以上よりPodocyte-TGF-β1Tgマウスポドサイでは、自然経過で腎臓の線維化による腎不全が起こることが明らかになった。 次に本マウスを用い、凝固線溶系蛋白で、プロテインSと密接な関係があるrecombinant human thrombomodulin(rhTM)を8-10週齢の本マウスに3回/週投与し、4週間後に検討したところ、組織学的には細胞外基質の蓄積の抑制と線維化の抑制が認められ、組織からの抽出液を用いての線維化のマーカーとアポトーシスのマーカーの発現解析では、アポトーシス、線維化ともに抑制されていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポドサイト特異的ヒトTGFβ1過剰発現(Podocyte TGFβ1-Tg)マウスについて、自然に線維化の進行と、腎機能の低下、蛋白尿の出現を認めた。TGFβ1は糖尿病性腎症において、ポドサイトで発現が上昇しており、腎症の病態に関与している重要な因子である。このモデルマウスでは、特に線維化の病態については、糖尿病腎症の病態を反映している可能性がある。なお、本マウスをSTZにより高血糖状態とし、腎病変への影響についての解析も現在進行中である。このマウスの腎臓の組織学的な検討による線維化の進行と、血液、尿検査での腎機能、蛋白尿の関係を解析では、8-10週齢で腎機能の悪化を認めている。この線維化を抑制する因子として、我々が従来検討してきたいくつかの凝固線溶系蛋白との関係が注目される。プロテインSも候補の一つであり、今後詳細な検討予定であるが、今回は他の細胞で抗アポトーシス作用が明らかにされているrecombinant human thrombomodulin(rhTM)を用いて検討を行った。rhTMの投与により、本マウスの腎臓の線維化とアポトーシスが抑制され、腎機能低下の抑制が認められた。糖尿病腎症の進展にポドサイトのTGFβ1過剰発現が関与していることから、rhTMが糖尿病性腎症の線維化に対して抑制する可能性がある。今後更に培養細胞、糖尿病モデルマウスで効果、機序を検討していく。また、プロテインSも含めた凝固線溶系蛋白についても更に検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
rhTMによる線維化抑制作用について、今後更に詳細なメカニズムも含めて検討していく予定である。本マウスによる実験で、ポドサイトでのTGFβ1の過剰発現による線維化とアポトーシスに対しrhTMにより抑制できることが明らかになった。糖尿病状態における抗アポトーシス、抗線維化作用に関する機序をin vivo, in vitroでの検討が必要である。更に炎症との関係も解析を行う。我々の従来の検討では、これらの蛋白は高血糖による腎症の進展抑制作用として、複数の経路を同時に改善する可能性があり、その機序と相互関係を明らかにしていく。凝固線溶系蛋白は、作用点が従来報告されている他の薬剤と異なるため、腎症に対し全く新しい機序による治療に結びつく可能性がある。更に、プロテインSでは、腎臓だけではなく、膵臓のβ細胞にも抗アポトーシス作用を介する保護作用が認められた。このように、糖尿病に関する複数の臓器に対して同時に有効な機序を有し、合併症を抑制する薬剤は、従来に報告はなく、ヒトに応用できれば有益性が高い。今後、更に凝固線溶系蛋白及び、その関連因子を中心に作用点明らかにし、複数の臓器に注目し、解析を行う。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 慢性腎疾患のマウスモデルの作成2018
Author(s)
竹下 敦郎 西濵 康太, 安間 太郎, 十時 利明、藤原研太郎、Buffour Tonto Prince,D'Alessandoro-Gabaza Corina,戸田 雅昭、小林 哲、矢野 裕、Gabazza Esteban
Organizer
第61回日本糖尿病学会
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