2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the pathophysiological role for ectopic fat accumulation in the regulation of glucose and lipid metabolism
Project/Area Number |
17K09827
|
Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
日下部 徹 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究室長 (60452356)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 異所性脂肪蓄積 / 肥満症 / 脂肪萎縮症 / 脂肪肝 / インスリン抵抗性 / インスリン分泌 / リポプロテインリパーゼ / ANGPTL8 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満症は、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの脳心血管病リスクファクターを合併する解決すべき健康障害である。最近の研究の進展により、「異所性脂肪」蓄積が注目されている。現在のところ、糖・脂質代謝調節における異所性脂肪蓄積を検討するための良いモデル動物が存在するとは言えない。ヒト肥満症の病態に則した異所性脂肪蓄積モデル動物が開発され、異所性脂肪蓄積の病態生理的意義が明らかにされることが望まれている。平成29年度は、食餌性肥満ラットをゴールデンスタンダードとして、全身性脂肪萎縮症モデルラット(セイピン欠損ラット)、肥満症ラット(レプチン欠損ラット)における異所性脂肪蓄積および糖・脂質代謝パラメータの関連などを検討し、異所性脂肪蓄積モデル動物としての妥当性を示した。 平成30年度は、セイピン欠損ラットに対してニコチンの持続皮下投与を行い、摂食量、体重増加を起こさずに、随時血糖値、随時インスリン値、総コレステロール値、中性脂肪値が上昇すること、さらに、肝臓脂質含量の増加とともに肝臓が腫大し、肝中心静脈周囲の線維化が促進、炎症マーカー(IL6、TNFα)、線維化マーカー(Col1A1)の遺伝子発現が上昇することを見出した。このことから、ニコチンは脂肪肝を非アルコール性脂肪肝炎へ進展させる作用を有すると考えられた。また、肝膵臓β細胞増殖作用を有すると報告されたAngiopoietin-like protein (ANGPTL) 8のノックアウトラットの解析を通じて、ANGPTL8遺伝子をノックアウトすることで、リポプロテインリパーゼを活性化し、心筋、骨格筋における脂肪酸β酸化を亢進させ、血中中性脂肪TG濃度を低下させることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セイピン欠損ラット、レプチン欠損ラットはいずれも、通常食飼育下でも著しい脂肪肝を呈し、異所性脂肪蓄積の良いモデル動物になると考えられた。高脂肪食で飼育したセイピン欠損ラットにニコチンを4週間持続皮下投与し、摂食量、体重増加を起こさずに、随時血糖値、随時インスリン値、総コレステロール値、中性脂肪値が上昇すること、さらに、肝臓脂質含量の増加とともに肝臓が腫大し、肝中心静脈周囲の線維化が促進、炎症マーカー(IL6、TNFα)、線維化マーカー(Col1A1)の遺伝子発現が上昇することを見出した。このことから、ニコチンは脂肪肝を非アルコール性脂肪肝炎へ進展させる作用を有すると考えられた。 また、肝膵臓β細胞増殖作用を有すると報告されたAngiopoietin-like protein (ANGPTL) 8のノックアウトラット(KO)を作製し、解析を行った。Angptl8 KOラットは、野生型ラットと比較して体重減少、脂肪組織における脂肪蓄積の低下が認められ、ANGPTL8は脂肪細胞での脂肪合成を増強させ、体脂肪量を増加させる可能性が示された。また、Angptl8 KOラットの血中TG濃度は低下が認められ、心筋でLPL活性の上昇と、心筋、骨格筋で脂肪酸β酸化の亢進が認められ、ANGPTL8はLPL活性の抑制因子として作用し、心筋、骨格筋における脂肪酸β酸化を亢進させることで、血中TG濃度を低下させると考えられた。Angptl8 KOでは、異所性脂肪蓄積の増加、糖代謝異常は観察されなかった。 以上のように、異所性脂肪蓄積モデルになりうる動物について、解析がおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)異所性脂肪蓄積モデル動物の確立 平成29年度、平成30年度と同様に、セイピン欠損ラットとレプチン欠損ラットを用いて、肝臓、骨格筋、膵臓における遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて網羅的に解析する。 2)糖・脂質代謝調節における異所性脂肪蓄積の病態生理的意義の解明 セイピン欠損ラットとレプチン欠損ラットの2種類の異所性脂肪蓄積モデルラットを用いて、肝臓、骨格筋におけるインスリンシグナル、膵臓におけるインスリン分泌能を、個体レベル、細胞レベルで評価する。最近、糖尿病や肥満症におけるサルコペニア(骨格筋量減少や筋力低下)は、病態の悪循環を形成することが注目されている。糖尿病や肥満症においてサルコペニアが進展する分子メカニズムは十分には解明されていない。そこで、これら異所性脂肪蓄積モデルを用いて、骨格筋脂肪蓄積がサルコペニアに及ぼす影響についても解析を加える。また、これら異所性脂肪蓄積モデル動物に対して、摂餌制限やレプチン治療による治療介入を行い、異所性脂肪蓄積および糖・脂質代謝パラメータ、サルコペニア関連指標(骨格筋量、筋力)に及ぼす影響を検討する。異所性脂肪蓄積に関わる鍵分子を明らかにすることで、新規創薬ターゲットを見出すことを目標とする。
|
Causes of Carryover |
動物実験施設の移動に伴い、ラット飼育数を一時的に減らしていた。現在は、ラット飼育数を増やし当初の実験計画を大きく変更することなく、実験遂行が可能と考えている。
|
Research Products
(11 results)
-
[Journal Article] A potential novel pathological implication of serum soluble triggering receptor expressed on myeloid cell 2 in insulin resistance in a general Japanese population: The Hisayama study.2018
Author(s)
Tanaka M, Honda T, Yamakage H, Hata J, Yoshida D, Hirakawa Y, Shibata M, Inoue T, Kusakabe T, Satoh-Asahara N, Ninomiya T.
-
Journal Title
Diabetes Res Clin Pract.
Volume: 146
Pages: 225-232
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] Role of serum myostatin in the association between hyperinsulinemia and muscle atrophy in Japanese obese patients.2018
Author(s)
Tanaka M, Masuda S, Yamakage H, Inoue T, Ohue-Kitano R, Yokota S, Kusakabe T, Wada H, Sanada K, Ishii K, Hasegawa K, Shimatsu A, Satoh-Asahara N.
-
Journal Title
Diabetes Res Clin Pract.
Volume: 142
Pages: 195-202
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] α-Linolenic acid-derived metabolites from gut lactic acid bacteria induce differentiation of anti-inflammatory M2 macrophages through G protein-coupled receptor 40.2018
Author(s)
Ohue-Kitano R, Yasuoka Y, Goto T, Kitamura N, Park SB, Kishino S, Kimura I, Kasubuchi M, Takahashi H, Li Y, Yeh YS, Jheng HF, Iwase M, Tanaka M, Masuda S, Inoue T, Yamakage H, Kusakabe T, Tani F, Shimatsu A, Takahashi N, Ogawa J, Satoh-Asahara N, Kawada T.
-
Journal Title
FASEB J.
Volume: 32
Pages: 304-318
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-