2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病治療を目指したヒト膵α細胞分化転換機構の解明・ARX阻害低分子化合物の探索
Project/Area Number |
17K09830
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小澤 純二 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80513001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩橋 博見 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60397627)
福井 健司 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (60513009)
木村 武量 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70770171)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 膵島構造異常 / ARX / 脱分化 / 分化転換 / 膵α細胞 / 膵β細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は耐糖能悪化過程でみられるヒト膵島構造異常の実態および転写因子ARXを介した脱分化・分化転換機構の寄与を明らかにし、ARX標的物質の探索とARXを介した分化転換機構制御による膵島構造異常および耐糖能異常の改善を図ることで、新たな糖尿病治療への可能性を見出すことを目的とする。 2017年度は詳細に耐糖能区分(正常型、境界型、新規診断糖尿病、長期経過2型糖尿病の4群)された43例の膵臓切除症例を対象として膵組織学的検討を行った。その結果膵α細胞面積率は血糖コントロール(HbA1c)と正相関すること、長期経過2型糖尿病群で膵β細胞面積率に対する膵α細胞面積率が他群と比較して優位に増加し、罹病期間が長いほど増加していること、この増加は膵α細胞の増殖促進が関与することを示した。さらに膵α細胞に本来発現している転写因子ARXがみられず、膵β細胞特有の転写因子NKX6.1を発現するグルカゴン陽性細胞、膵β細胞に本来発現しているNKX6.1がみられず、本来発現していないARXを発現するインスリン陽性細胞が存在することを確認、膵島構造異常に膵島細胞の脱分化・分化転換が寄与している可能性も示した(Fujita Y, et al. Journal of Diabetes Investigation, 2018)。報告を行った43例中12例において膵α細胞および膵β細胞におけるARX陽性率の形態計測を行い、加齢に伴う耐糖能悪化に対する代償機転として膵α細胞におけるARX陽性率が低下している可能性を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度は詳細に耐糖能区分(正常型、境界型、新規診断糖尿病、長期経過2型糖尿病の4群)された43例の膵臓切除症例を対象とした膵組織学的検討を行い、膵島構造異常に対する血糖コントロール(HbA1c値)、罹病期間の寄与、膵島構造異常のメカニズムの一旦を明らかにして論文投稿を行い受理された(Fujita Y, et al. Journal of Diabetes Investigation, 2018)。さらに2017年度は膵島構造異常における膵島細胞の脱分化・分化転換の寄与を組織学的に明らかにするため膵α細胞および膵β細胞におけるARX陽性率の形態計測を試みている。ARX免疫染色のため、抗原賦活化時間、1次抗体選定などの条件検討を行っているが、安定した染色結果が得られず条件設定に時間を要している。 膵組織学的検討の論文作成から改訂・受理に伴う時間、ARX染色条件設定に時間を要したため、2017年度に終了させる予定であった耐糖能区分別の膵島細胞におけるARX陽性率の検討が終了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
ARX免疫染色のための条件検討を行い、染色性の安定性向上が得られるようになった。今後は残り31例において免疫染色を完了させ、膵α細胞、膵β細胞におけるARX陽性率と膵α細胞面積率、膵β細胞面積率およびこれらの比といった膵島構造のマーカーとの関連を検証、耐糖能悪化過程で見られる膵島構造異常に対するARXを介した脱分化・分化転換の寄与を明らかにする。さらに当研究室でヒトiPS細胞から分化誘導したインスリン陽性細胞、グルカゴン陽性細胞においてARXの強制発現、ARXの発現抑制を行うことでの分化転換をin vitroで検証する。これらによりこれまで実験動物で示されてきたARXを介した分化転換の存在をヒト由来膵島細胞において示す。またARXを標的タンパク質として結合する低分子化合物のスクリーニングにも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度はヒト膵組織を用いた膵島の形態学的検討、論文作成、ARXの染色条件の検討を中心に行ったため、ヒトiPS細胞を用いたvitroの実験が十分行えていない。従って当初使用予定であったヒト由来iPS細胞の分化誘導に必要な因子、培地などの購入に要する費用が少なくなった。2018年度はこれらvitroの実験に本格的に着手する予定であり、予算使用が見込まれる。
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Research Products
(2 results)