2017 Fiscal Year Research-status Report
SGLT2阻害薬による腎糖代謝の変化と糖尿病腎症発症への影響に関する研究
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17K09836
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
河島 淳司 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70467984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 栄一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (10253733)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SGLT2阻害薬 / 糖尿病腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト近位尿細管上皮細胞の継代培養細胞であるRPTEC/TERT1を用いて実験を行った。また、SGLT2阻害薬としてcanagliflozinを使用した。RPTEC/TERT1細胞を以下の4つの条件で24時間培養した後に細胞を回収し、メタボローム解析を行った。① 5.6 mM(100 mg/dL)のグルコース濃度で培養(LowG-Con)、② 5.6 mM(100 mg/dL)のグルコース濃度で培養した細胞に10μM canagliflozin(LowG-CAN)を添加、③ 27.8 mM(500 mg/dL)のグルコース濃度で培養(HighG-Con)、④ 27.8 mM(500 mg/dL)のグルコース濃度で培養した細胞に10μM canagliflozin(HighG-CAN)を添加。 メタボローム解析において、HighG-Con に比べ、HighG-CAN では解糖系の代謝産物であるグルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸、フルクトース-1,6-ビスリン酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸、ピルビン酸が有意に低下していた。さらに、canagliflozinはTCAサイクルにも影響し、HighG-CAN ではHighG-Con に比べ、細胞内のアセチルCoAやATP量も低下していることがわかった。また、canagliflozinはポリオール代謝経路やペントースリン酸経路にも影響し、HighG-CAN ではHighG-Con に比べ、細胞内のフルクトース-1-リン酸やジヒドロキシアセトンリン酸、NADPH量も低下していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病モデルマウスにおける腎臓内のグリコーゲン量を測定する前に、測定に時間を要するメタボローム解析を最初に行った。ヒト近位尿細管上皮細胞RPTEC/TERT1細胞において、グリコーゲン合成課程で生成されるUDP-グルコース量はSGLT2阻害薬canagliflozinによって減少していたが、低グルコース濃度の培養液でcultureされた細胞と高グルコース濃度の培養液でcultureされた細胞ではUDP-グルコース量に差がなかった。この結果から糖尿病モデルマウスにおける腎臓内のグリコーゲン測定は行わずに、糖尿病細小血管合併症の発症に関与していると報告されているポリオール代謝経路やAMPKにターゲットを絞って研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
メタボローム解析結果から得られた結果をもとに、糖尿病細小血管合併症の発症に関与していると報告されているポリオール代謝経路やAMPKに関する研究を進める。ヒト近位尿細管上皮細胞RPTEC/TERT1細胞を低グルコース濃度の培養液と高グルコース濃度の培養液でcultureし、ポリオール代謝経路の代謝産物やAMPK活性を測定する。これらの代謝産物がcanagliflozinによるSGLT2阻害により、どのように変化するかを検討する。また、ストレプトゾシン投与により糖尿病を発症させたマウスにSGLT2阻害薬を投与し、腎臓におけるポリオール代謝やAMPK活性の変化についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
ポリオール代謝経路の代謝産物を測定するキットを購入する予定であったが、キットの購入費が7万円以上であったため次年度に購入する予定とした。
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