2019 Fiscal Year Research-status Report
ライソゾーム酸性リパーゼによる冠動脈疾患進展の機序解明と制御
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17K09859
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
野原 淳 金沢大学, 保健学系, 研究協力員 (50313648)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Lysosomal acid lipase / 家族性高コレステロール血症 / コレステロールエステル化率 |
Outline of Annual Research Achievements |
LIPA遺伝子がコードするLysosomal Acid Lipase (LAL)の遺伝的完全欠損は,コレステロールエステル蓄積症(CESD)およびWolman病を来すが,近年はLAL酵素補充療法が著効することが報告されている.LALはLDL受容体を介して取りこまれたLDLおよびVLDL由来の細胞内コレステロールエステルの水解に作用,このLDL受容体とLALの協調が,LDLの代謝利用に必須と考えられている.遺伝疫学においてLIPA遺伝子は複数のGWASにて冠疾患リスク関連遺伝子とされているが,LAL活性が冠疾患発症にあたえる影響の機序は十分に解明されていない.成人期CESDは高LDL血症および動脈硬化性疾患,同時に脂肪肝も呈する.CESDは臨床的には,家族性高コレステロール血症(FH)が鑑別疾患のひとつであり,実際FH疑い症例から同定されることが報告されているが,脂質異常症を合併するNASHやNAFLDと認識されている場合もあるとされる.400例以上の冠疾患ハイリスク患者血液サンプルにおけるLAL活性を測定した.予測に反し冠動脈造影施行症例においてはLAL活性と冠動脈硬化性所見は正の相関の傾向であった.またFHにおけるアキレス腱厚測定ではLAL活性は正相関の傾向を示した.LAL活性はBMIおよびメタボリックシンドロームの有無で有意に高活性を示しており,またHbA1cとも正相関を示すことから,間接的な影響を表している可能性がある.一方で肝酵素との相関は不明瞭であった.Free cholesterolについてはLAL活性と有意の負の相関を示しており,細胞内における役割は血清中脂質に直接反映をするものでは無い可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画に準じて患者エントリーは進んだが、研究代表者の所属が異動となり,一時的に業務が多忙であった.現在は臨床像について検討が実施されてきている.
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Strategy for Future Research Activity |
患者エントリーを重ね研究の順調な遂行に努める。また近年PCSK9阻害薬やMTP阻害薬といった新たな脂質異常症治療薬によりLAL活性がどのように変化しているかを検討する。血液で測定されるLAL活性と細胞内におけるLALの役割について,遺伝素因および冠疾患リスクの点から解明を進め研究の総括を行う.
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属が異動となり,一時的に業務が多忙であったこと,研究室の引っ越しが必要となったこと,また新たな施設における研究計画の承認および倫理委員会審査が必要となったこと,協力機関の責任者が異動となり再開されるまで時間を要したことで,最終年度における研究の実施に遅延を来したため,補助事業期間の延長が必要となり,次年度使用額が生じた.次年度使用額の使用計画については細胞機能評価および脂質分析などのために必要な消耗品,研究成果発表のための旅費,英文校正および論文投稿料に使用予定である.
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