2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K09868
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
櫻井 裕之 杏林大学, 医学部, 教授 (00508294)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 尿酸 / トランスポーター / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ゲノムワイド関連解析により、高尿酸血症や痛風に関連する遺伝子が同定された。中でもABCG2とSLC2A9の2つの尿酸トランスポーター遺伝子領域の一塩基多型(SNP)と尿酸値との関連が強いことが報告されている。ABCG2の主な機能部位は腸管であり、その機能低下は、腎排泄低下型でなく、腎負荷型の高尿酸血症となる。一方SLC2A9は尿酸再吸収トランスポーターであるが、尿酸の腎排泄低下を説明できる変異は同定されておらず、臨床上大多数を占める排泄低下型高尿酸血症の原因は未だ解明されていない。そこで、家族性尿酸排泄低下型高尿酸血症を呈する患者とその家族で遺伝子解析を行い、その病態解明を目指した。 家族性高尿酸血症の家系で、同意を得た後全遺伝子解析を行った。高尿酸血症と慢性腎機能障害の20代男性患者とその父、母である。患者の父と父方の祖父に高尿酸血症と痛風があり、患者の母の尿酸値は正常であった。血清尿酸値と関連するアミノ酸置換をともなう既知のSNPで、母にはなく父と患者にあるものを調べたら、ABCG2のQ141K変異とSLC16A9のK258T変異が同定された。いずれも腎負荷型の高尿酸血症と関連する変異であり、この患者の尿酸排泄低下は説明し難い。そこで、SLC2A9のアミノ酸置換を伴うSNPについて解析したところ、患者と母でP350Lが、患者と父(ホモ)と母(ヘテロ)でG25Rが見つかった。これらの変異mRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させて、野生型のSLC2A9と尿酸輸送機能の解析を行ったが、親和性、最高輸送速度とも変化が見られなかった。現在尿酸排泄トランスポーター遺伝子変異をさらに詳細に解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、家族性尿酸排泄低下型高尿酸血症の家系の遺伝子解析、それにより同定された、SLC2A9変異体の発現及び機能解析を行った。予想通りアミノ酸置換を伴う変異では、SLC2A9の発現や機能に影響を及ぼすことはないようである。実績に報告した1家系の他にも解析を行ったが、うまく遺伝子配列が読めず、サンプルのとりなおしを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
家系を増やして遺伝子解析を行い、SLC2A9、ついでSLC17A1,SLC17A3に着目して解析を進める。またSLC2A9のコード領域以外の変異について、その発現や機能に与える影響を細胞株を使って検討する。これらはすべて当初の計画どおりであり、現時点で研究計画に変更はない。
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Causes of Carryover |
患者家系の遺伝子解析を外注したが、そのうち一部のサンプルで解析がうまくいかず、その解析結果により、遺伝子解析を行うサンプルを決めることにしていたので、あと数例の遺伝子解析にあてる予定の予算が残ってしまった。本年度には失敗した例を再解析し、その結果により追加するサンプルを決めて遺伝子解析を行う予定である。他の予算に関しては当初の申請どおり使用する予定である。
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