2018 Fiscal Year Research-status Report
乳癌の増殖進展のドライバーシグナルの可塑性と治療耐性
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17K09871
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 慎一 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60144862)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エストロゲン / ホルモン療法耐性 / MCF-7細胞 / T47D細胞 / シグナル伝達 / エピゲノム制御 / 乳がん / 癌幹細胞性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はエストロゲンシグナル経路やPIK/Akt/mTOR経路の下流に位置し、細胞の分裂・増殖を調節する細胞周期制御因子であるCDK4/6-Cyclin Dについて主に検討を行った。最近、CDK4/6阻害薬が臨床開発され、ER陽性進行再発乳癌を対象に臨床に供されるようになってきた。そこで、我々の各種耐性株についてCDK4/6阻害薬、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブの効果を検討し、またCDK4/6阻害薬耐性株の作製を試みた。リボシクリブはER陽性乳癌細胞であるMCF-7やT-47D細胞に対して強い増殖抑制効果を示したが、SKBR3やBT-20、MDA-MB231細胞のような非luminal型細胞に対しては効果が弱かった。MCF-7やT-47D細胞ではCDK4が高く発現しており、他の非luminal型細胞ではCDK6が過剰に発現していた。このことはCDK4とCDK6の発現比がその阻害剤感受性に関連している可能性が示唆される。そこで、CDK6を発現ベクターを用いて人工的に過剰発現させたMCF-7細胞を作製し、検討したところ、リボシクリブの増殖抑制効果が減弱することを確認した。一方、リボシクリブの効果は各種ホルモン療法耐性株間で大きな違いはなく、いずれに対しても効果的であった。このことは上位のドライバーシグナルの変化、可塑性に関係なく、CDK4/6-Cyclin Dが機能していることを示唆している。また、リボシクリブ耐性株を樹立し、その性質を解析したところ、p21タンパクの著しい減少を見出した。p21はCDK2-Cyclin Eの内在性inhibitorであり、その減少によりCDK2-Cyclin Eが活性化し、Rbタンパクのリン酸化を進行させることで耐性に寄与していると考えられる。また、CDK4/6阻害薬耐性には複数の機序が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように、昨年検討したエストロゲンシグナル耐性、リン酸化シグナル耐性の下流に位置する、細胞周期制御機構を標的とした治療薬、CDK4/6阻害薬について、その作用、耐性獲得機序等について検討を行い、興味深い結果を得た。これらは乳癌の新規治療戦略、治療耐性克服を考える上で重要な知見と考える。このように本研究目的に沿った結果が得られつつあり、順調に推移していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、臨床応用が期待されているPI3K阻害剤と細胞周期を標的としたCDK4/6阻害剤について、それらの薬剤の耐性メカニズムについてさらに検討を行って行きたい。さらにこれらの薬剤の併用、使用順などをin vitroで検討を行い、またこれらの耐性に対する化学療法の効果等も検討したい。これらの研究結果から乳癌細胞のドライバーシグナルの可塑性の全容を明らかにし、新規治療開発、耐性克服の戦略の構築に役立てたい。
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Research Products
(13 results)