2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS/ES細胞からの副腎性腺原基の同定とその分化制御機構の解明
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17K09880
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曽根 正勝 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40437207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田浦 大輔 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (10558612)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | adrenal cortex, / gonad, / iPS cell |
Outline of Annual Research Achievements |
ステロイドホルモンはヒトの生存に必須のホルモンであり、アジソン病や先天性副腎皮質過形成で起こるコルチゾール欠乏は緊急治療を要する致死的病態として知られる。本病態における標準的治療はホルモン補充療法であるが、一生涯にわたる投薬が必要であるとともに投薬量の調整が難しく、不足しても過量になっても種々の合併症を引き起こす。これら臓器の機能障害に対する解決策として再生医療への期待が高まっているものの、幹細胞からステロイド産生細胞の誘導法の確立ならびにその分化機序の解明は未だ十分に行われていない。ステロイド産生細胞は中間中胚葉に由来することが知られており、これらは早期からOdd-skipped related 1 (OSR1)遺伝子を発現することから、我々は共同研究者らが樹立したOSR1レポーターヒトiPS細胞を用いてOSR1陽性中間中胚葉を誘導し、ここからステロイド産生細胞への分化誘導を試みるとともに、その発生分化機序の解明を目指すこととした。我々はケミカルスクリーニング法を用いた実験を行い、OSR1陽性中間中胚葉からステロイド産生細胞の誘導に、ドーパミンD1受容体のシグナルが関わっていることを突き止めた。さらに、ステロイド合成酵素の発現に重要な転写因子であるsteroidogenic factor 1 (SF-1)をOSR1陽性細胞に遺伝子導入すると、それらはACTH受容体を発現するステロイド産生細胞へと分化し、またこれらの細胞においてもドーパミンD1受容体のシグナルはACTH刺激と相乗的にステロイド産生を促進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では初めにOSR1レポーターヒトiPS細胞を用いてOSR1陽性中間中胚葉を誘導し、それらOSR1陽性細胞において、ステロイド産生細胞への分化を誘導する小分子を同定するため、化合物ライブラリーを用いたケミカルスクリーニングを行った。その結果、ドーパミン作動薬であるカベルゴリンは、OSR1陽性細胞においてドーパミンD1受容体に対する低親和性作動薬として作用し、副腎ステロイド合成に必須の酵素である3β-hydroxysteroid dehydrogenase(3β-HSD)の発現を上昇させることがわかった。さらに、ステロイド合成酵素の発現に重要な転写因子であるSF-1をOSR1陽性細胞に遺伝子導入し、ステロイド産生細胞として分化させてからドーパミンD1受容体作動薬を投与したところ、3β-HSD のみならず、steroidogenic acute regulatory protein、cytochrome P450(CYP) 11A1、CYP21A2、CYP11B1、CYP11B2、CYP17の発現が上昇した。またこれらの細胞ではACTH受容体を発現し、D1受容体作動薬はACTHと相乗的にステロイド合成酵素の発現を増強し、コルチゾールを含む各種ステロイドホルモンの産生を亢進させた。我々はヒトiPS細胞からACTH反応性を持つステロイド産生細胞を初めて誘導するとともに、ドーパミンD1受容体シグナルがヒトiPS細胞からステロイド産生細胞への分化に促進的作用を持つという我々の研究結果を報告した(Sci Rep. 2017;7:15120 )。さらに、我々はSF-1を導入したOSR1陽性細胞について追加解析を行ったところ、これらの細胞は17β-hydroxysteroid dehydrogenaseも発現し、テストステロンなど性腺ステロイドも分泌する能力があることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
我々がこれまでの誘導に使用してきたSF-1は副腎・性腺の両方で発現する遺伝子であり、またヒト副腎皮質は網状層から性腺ホルモンを分泌することからも、SF-1導入OSR1陽性細胞が混在したステロイド産生能を示すのは妥当な結果であると考えられた。過去の間葉系幹細胞を用いた研究報告では、ステロイド産生細胞が分泌するステロイドホルモンのプロファイルはその細胞におけるSF-1の発現量と相関していることが示唆されている。一方で、SF-1の発現を抑制する作用を持つDAX-1遺伝子は副腎被膜下に存在する副腎皮質前駆細胞での発現が認められる他、性腺でもその発現が確認されており、性分化への関与が報告されている。我々はこれらの研究報告から、DAX-1がSF-1の発現を調整することで性分化のみならず、副腎・性腺それぞれにおけるステロイド産生能を特徴づけているという仮説を立て、以下の通りに実験を計画した。まず初めにレトロウイルスを用いたSF-1発現ベクターを作成する。レトロウイルスベクターによる強制発現を用いることで、これまで我々が行っていたエレクトロポレーション法に比べ、OSR1陽性細胞において恒常的かつ高いSF-1発現が期待できる。異なる手法でSF-1を導入し、ステロイド産生細胞を誘導した上で、それぞれにおけるSF-1発現量・ステロイドプロファイルを比較することより、SF-1発現とステロイド産生能の関連を解明する。次に、DAX-1をはじめ複数の遺伝子をSF-1と同時にOSR1陽性細胞に導入し、それぞれの特徴を比較することで、それぞれの遺伝子がステロイド産生能に与える影響・役割を検討することとする。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果に基づき、レトロウイルスを用いたSF-1およびDAX-1の発現ベクターの作製を開始したが、作製が年度末をまたぐため、費用の請求が次年度になってしまい、翌年分として請求した。実験計画に大きな変更はない。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Significance of dopamine D1 receptor signalling for steroidogenic differentiation of human induced pluripotent stem cells.2017
Author(s)
Matsuo K, Sone M, Honda-Kohmo K, Toyohara T, Sonoyama T, Taura D, Kojima K, Fukuda Y, Ohno Y, Inoue M, Ohta A, Osafune K, Nakao K, Inagaki N.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: Nov 9;7(1)
Pages: 15120
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Significance Of Dopamine D1 Receptor Signaling For Steroidogenic Differentiation Of Human Induced Pluripotent Stem Cells2017
Author(s)
Koji Matsuo, Masakatsu Sone, Kyoko Honda-Kohmo, Takafumi Toyohara, Takuhiro Sonoyama, Daisuke Taura, Katsutoshi Kojima, Yorihide Fukuda, Youichi Ohno, Mayumi Inoue, Akira Ohta, Kenji Osafune, Kazuwa Nakao, Nobuya Inagaki
Organizer
ENDO2018(米国内分泌学会)
Int'l Joint Research
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