2017 Fiscal Year Research-status Report
小胞体カルシウムイオン調節を基盤にしたアルドステロン合成制御機構の解明
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17K09883
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
沖 健司 広島大学, 病院(医), 助教 (30638995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原発性アルドステロン症 / アルドステロン / アンギオテンシンII |
Outline of Annual Research Achievements |
1.アルドステロン産生腺腫 (APA) における網羅的遺伝子発現解析とCYP11B2発現解析の統合解析 細胞内カルシウム調節に携わるEF-handをもつ155分子を抽出し,APAに高発現する遺伝子を複数抽出した.それらの中から,CYP11B2発現と最も正相関する遺伝子としてCALN1を同定した.qPCRによるCALN1 mRNA発現はAPAでは,アルドステロンを産生しない (非機能性副腎皮質腺腫) と比較して3.5倍に増加しており(P <0.001),CALN1とCYP11B2の発現には有意な正相関がみられた(r=0.310, P<0.05).APA は,細胞膜に存在するいくらかのチャネルやポンプに遺伝子変異が起こり,アルドステロン過剰症がもたらされることがわかっている.遺伝子変異を認めないwild type群 (n=12),KCNJ5変異群 (n=30),ATP1A1変異群 (n=5)に分類したが,CALN1発現量の差は認めなかった.免疫組織化学では,APAにおけるCYP11B2とCALN1の発現部位は一致し,非機能性副腎皮質腺腫においては両者の発現はみられず,副腎皮質球状帯にCALN1とCYP11B2の発現を認めた. 2.アンギオテンシンII (A-II) およびKCNJ5変異によるCALN1発現調節 A-II (10nM)刺激下の副腎皮質癌細胞株 (HAC15) で,CALN1発現は1.5倍に増加した (P<0.05).レンチウイルスベクター pLX303-KCNJ5-T158Aを用い,HAC15にKCNJ5変異を導入したところ,アルドステロン合成はコントロールに比較し5.6倍に上昇した.さらに,KCNJ5変異を導入したHAC15においてCALN1 mRNAは1.3倍に増加していた (P <0.05).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における当初の計画では,試験①:アルドステロン合成に関わる新規小胞体Ca2+貯蔵因子の同定.試験②:アルドステロン合成に関わる小胞体因子の発現解析.試験③:アルドステロン産生腺腫におけるステロイド合成酵素との関連を予定していた. 試験①の「アルドステロン合成に関わる新規小胞体Ca2+貯蔵因子の同定」においては,アルドステロン産生腺腫を用いた網羅的遺伝子発現解析からアルドステロン合成の律速酵素であるCYP11B2と強い正相関のあるCALN1を同定した. 試験②に示す「アルドステロン合成に関わる小胞体因子の発現解析」においては,アルドステロン産生腺腫において,CALN1が蛋白レベルで発現しており,アルドステロンを産生しない副腎腫瘍 (非機能性副腎皮質腺腫) においては,CALN1が発現していないことがわかった.さらに,正常副腎において,アルドステロンを合成する副腎皮質球状帯のみにCALN1は発現していることもわかった. 試験③の「アルドステロン産生腺腫におけるステロイド合成酵素」については,試験②にもちいた組織標本を用いて,CYP11B2発現との比較検討を行った.アルドステロン産生腺腫と副腎皮質球状帯にCYP11B2は発現しており,CYP11B2とCALN1の蛋白レベルでの発現も類似していることを確認した. つまり,当初予定していた計画を遂行できており,順調に進んでいると考える. さらに,アンギオテンシンIIやアルドステロン合成をもたらす遺伝子変異を副腎皮質癌細胞株に導入し,アルドステロン過剰合成時のCALN1が高発現することも同定している.これらの結果は,当初の予定以上の内容である.
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Strategy for Future Research Activity |
試験④ CALN1の細胞内局在の検討.神経細胞において,CALN1はトランスゴルジネットワークを担い,分泌蛋白輸送に関わることが報告されている.しかし,副腎皮質において,分泌顆粒は存在しないため,CALN1の細胞内局在を明らかにする.CALN1遺伝子のN末端側にGFPを癒合したpLVSIN-Nと細胞構造標識試薬CellLight ER-RFPあるいはGolgi-RFPを用いて,ゴルジ体または小胞体における細胞内局在を明らかにする.さらに内因性のCALN1発現をHAC15を固定の上,免疫染色を行い,細胞内局在を明らかにする. 試験⑤ In vitroでのCALN1遺伝子操作による機能解析.アルドステロン合成に関わると考えられるCALN1の過剰発現,ノックダウンを副腎皮質癌細胞株 (HAC15) で行う.ステロイド合成酵素やアルドステロン合成に与える影響を検討する.また,CALN1発現を調節したHAC15において細胞内カルシウム濃度の測定を行い,細胞内カルシウム濃度の違いを検討する.小胞体からのカルシウム輸送を担うイノシトール3リン酸受容体や小胞体へのカルシウム流入を担うsarco/endoplasmic reticulum Ca2+-ATPase (SERCA) を調節し,CALN1遺伝子発現調節したHAC15において,アルドステロン合成に関わるステロイド合成酵素発現,細胞内カルシウム濃度の測定を行う.
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] NFIA co-localizes with PPARγ and transcriptionally controls the brown fat gene program2017
Author(s)
Hiraike Y, Waki H, Yu J, Nakamura M, Miyake K, Nagano G, Nakaki R, Suzuki K, Kobayashi H, Yamamoto S, Sun W, Aoyama T, Hirota Y, Ohno H, Oki K, Yoneda M, White AP, Tseng YH, Cypess AM, Larsen TJ, Jespersen NZ, Scheele C, Tsutsumi S, Aburatani H, Yamauchi T, Kadowaki T.
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Journal Title
Nat Cell Biol
Volume: 19
Pages: 1081-1092
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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