2017 Fiscal Year Research-status Report
体細胞モザイシズムを呈する原発性アルドステロン症の病変・病型形成機構の解明
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17K09890
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
向井 邦晃 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80229913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 紘嗣郎 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (00365363)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ステロイドホルモン / 副腎 / アルドステロン / 高血圧 / 内分泌腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体構想は、副腎皮質が正常構造・機能から逸脱して、アルドステロン(ALDO)の過剰産生による原発性ALDO症(PA)の種々の病変・病型形成に至る分子基盤を理解することである。近年ALDO産生腺腫にイオンチャネル・ポンプ遺伝子群の体細胞変異が判明し、病変形成へ関与することが示された。一方、研究代表者らは正常副腎に自律的ALDO産生細胞集塊を発見してこれが片側過形成病型に関与すること、“移行性病変”を検出してALDO産生腺腫へ至るスキームを示した。しかし、腫瘍形成及び両側過形成の詳細を含む病態全貌の解明には至っていない。 若年性PAの副腎は過形成部と腫瘍部を持つ。両者は共通の第1変異を持ち、腫瘍部には第2要因が加わって腫瘍形成を起こす可能性がある。本課題では腫瘍部と過形成部の差異を見出すことにより第2要因、すなわち腫瘍化の要因の解明を計画した。 若年性・両側性のPAの1例は、当初、両親がPAを示さないことから非家族性病型で、発生過程において副腎が左右分離する前(中胚葉形成期)までに体細胞変異が生じたことが推定された。変異の分布は副腎皮質においてモザイク状であることが想定されたが、変異解析により過形成部、腫瘍部を含めてどの部位にも同一変異が検出された。外胚葉由来の細胞にも同一変異が判明したので家族性が疑われたが、両親は変異を持たなかった。これらの結果から、本症例は患者両親の配偶子形成過程で生じた生殖細胞系列変異によることが推定された。本症例は、変異の特定により日本における最初の「家族性ALDO症3型(FH-3)」と判明したが、de novo変異であることから患者子孫に初めて遺伝しうる。本症例について詳細に解析することにより、腫瘍形成の制御などPAの新しい診断・治療法につながる成果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析を開始した若年性PAは、変異細胞の副腎内分布に関してはモザイクではなかったので想定と異なっていたが、原発性アルドステロン症の病型として希少な家族性アルドステロン症3型(FH-3)であることが示され、日本で初めての症例となった。本症例は家族性病型ではあるが、両親は変異を持たないことから、両親の配偶子形成過程で生じた生殖細胞系列変異による可能性が高い。過形成部と腫瘍部の比較解析を進めることにより、腫瘍形成機構の解明が期待できる。 本症例は、若年で両側副腎から過剰ALDO産生するPAを発症し、両親がALDO過剰産生を示していない点は、最近研究代表者らが報告した若年性PAとよく似ていた。そのため、本症例は当初、家族性病型ではなく、患者の胎生初期、特に副腎が左右分離する前の段階(中胚葉形成期)に体細胞変異が起き、変異細胞の増殖により生じた子孫細胞が両側副腎皮質に分離したことが想定された。従って副腎皮質は、正常細胞と変異細胞が混在するモザイクであることが予測された。ところが、患者の副腎皮質はどの部位にも特定のカリウムチャネル遺伝子に同一の変異が検出されただけでなく、外胚葉由来細胞にも同一変異が検出されたことから、変異は全身にあること、すなわち体細胞変異ではないことが示唆された。これらの結果は、変異は両親の配偶子に由来することを示唆した。しかし、両親は変異を持たないので、患者の変異は生殖細胞系列変異に由来するが、患者両親いずれかの配偶子形成過程においてde novo 変異により生じたことが推定された。本症例は、変異が検出された遺伝子・塩基配列から、家族性ALDO症3型(FH-3)と判明した。 以上のように新規の病態が明らかになったが、当初の研究計画を継続することにより腫瘍形成機構の解明が可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 上で述べた若年性両側性PAの1例は、発生初期の体細胞変異によるのではなく、親の生殖細胞形成時に生じたde novo変異であることが示唆された。副腎皮質組織は、変異を持ちながら腫瘍形成しなかった部位と第2の要因により生じた腫瘍から構成されることが推定される。従って、計画は変更せずに、これらの2通りの部位を比較することにより腫瘍化機構を解析する。 (2) 成人で発症する両側過形成型は症例数が最も多いが、病変形成機構は未解明である。最近研究代表者らが報告した非家族性若年性病型では、中胚葉形成期までの発生過程に変異が生じ、その子孫細胞が左右副腎に分配されたことが示唆された。これと同様に、両側過形成病型においても中胚葉形成期までの副腎皮質原基の左右分離以前に生じた体細胞変異が成人の両側過形成の発症に関与することが考えられる。両側過剰産生の症例の中で、左右比が大きい場合などに摘除された副腎を使用し、病変を同定した上で病変における体細胞変異の解析を行う。さらに病変と同一変異が末梢血DNAに検出されるか解析する。 (3) APCC形成とその消長については未知の点が多い。APCCは被膜下に形成されるが、皮質全体を横断するほど内奥方向へ進展したAPCCはこれまで検出されたことはない。最近研究代表者らは、50歳未満の正常副腎に生じたAPCCの数、サイズを解析した結果、加齢に伴って増加することが明らかになった。50歳以降の正常副腎を対象としてAPCCの消長について同様な解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)主に次の2点による。微小な組織を用いる変異の検出では、試料の調製、増幅、塩基配列解析などで実験条件の検討を繰り返す必要性や代替法の導入を考えていたが、予想ほど困難を伴わずに解析を行うことができた。この結果、物品費(消耗品等)の使用額が減少した。計上していた研究打合せや試料の運搬のための費用を減らすことができたため、計上額を下回った。 (使用計画)次年度には、新規に抗体の作製を予定している。新しい解析方法を導入し、同時に解析対象とする例数、試料数を増加させる。次年度使用額を必要な試薬等の物品費(消耗品等)、その他に計上する。品目としては、修飾PCRプライマー合成、組織染色試薬、遺伝子配列解析関連試薬、抗体作製試薬、ステロイドホルモンの定量等である。
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[Journal Article] Cortisol overproduction results from DNA methylation of CYP11B1 in hypercortisolemia2017
Author(s)
Kometani, M., Yoneda, T., Demura, M., Koide, H., Nishimoto, K., Mukai, K., Gomez-Sanchez, C.E., Akagi, T., Yokota, T., Horike, S.I., Karashima, S., Miyamori, I., Yamagishi, M., Takeda, Y.
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 7
Pages: 11205
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] A novel case of somatic KCNJ5 mutation in pediatric-onset aldosterone-producing adenoma2017
Author(s)
Uchida, N., Amano, N., Yamaoka, Y., Uematsu, A., Sekine, Y., Suzuki, M., Watanabe, J,. Nishimoto, K., Mukai, K., Fukuzawa, R., Hasegawa, T., Ishii, T.
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Journal Title
J. Endocr. Soc.
Volume: 1
Pages: 1056-1061
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] APCC Regresses and Incidental APA Appears with Senescence2018
Author(s)
Hayashi, T., Zhang, Z., Al-Eyd, G., Sasaki, A., Yasuda, M., Oyama, M., Gomez-Sanchez, C.E., Asakura, H., Seki, T., Mukai, K., Nishimoto, K.
Organizer
The 100th Endocrine Society Annual Meeting (ENDO 2018)
Int'l Joint Research