2017 Fiscal Year Research-status Report
Identification of the causative gene and analysis of its role in glucose metabolism in antiobesity and high glucose tolerance mice.
Project/Area Number |
17K09893
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
佐藤 貴弘 久留米大学, 分子生命科学研究所, 准教授 (50368883)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 矮小 / 高耐糖能 / 抗肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で使用した抗肥満高耐糖能マウスは、グレリン遺伝子欠損マウスを作出する過程で偶発的に得られたマウスである。グレリン遺伝子のヘテロ欠損マウス同士を交配したときに、眼間が広く、鼻部の短い頭部形成に異常の見られる矮小雄マウスが一個体だけ生まれた。このような特徴的な外見だったことからC57BL/6Jマウスとの戻し交配をN12世代まで実施し、グレリン欠損の影響を完全に取り除いて遺伝的な背景をC57BL/6Jマウスに均一化したコンジェニック系を樹立した。コンジェニック化されたマウスは外見的な異常形質をすべて引き継いでいたことから、何らかの遺伝子変異によってこれらの異常形質が誘導されていると考えられた。 そこで、遺伝子マッピング解析及び次世代シークエンシング解析を進め、これまでに1ヶ所の変異箇所を抽出することができた。この変異は第16番染色体のCrebbp遺伝子上にあり、CTのTが欠損していることによってフレームシフトを起こしていると推定された。そこで、本研究ではCRISPR/Cas9システムによる人為的な変異をC57BL/6Jマウスに導入した。その結果、眼間が広く、鼻部の短い頭部形成に異常の見られる矮小雄マウスを得ることができた。今後、血液生化学的な解析も進める予定だが、現時点で、偶発的に得られた抗肥満高耐糖能マウスの責任遺伝子はCrebbp遺伝子であると同定でき、かつ責任領域の1塩基欠損に伴うフレームシフトが抗肥満高耐糖能マウスという表現型の原因であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の最大の研究目的は、責任候補遺伝子として見出した第16番染色体のCrebbp遺伝子が、抗肥満高耐糖能マウスの責任遺伝子であると同定することであった。そこでCRISPR/Cas9システムによる人為的な変異をC57BL/6Jマウスに導入するという手法で確認実験を進めた。 初回こそうまく導入できずに時間を要したが、最終的にはこれまで抗肥満高耐糖能マウスに見られた表現型、すなわち、眼間が広く、鼻部の短い頭部形成に異常の見られるマウスを人為的に作出することができた。 それゆえ、第16番染色体のCrebbp遺伝子が抗肥満高耐糖能マウスの責任遺伝子であると同定できたことから、本研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は「抗肥満高耐糖能マウスにおける責任遺伝子の同定と糖代謝における役割の解析」という研究課題のもとで研究を遂行している。特に前半の「抗肥満高耐糖能マウスにおける責任遺伝子の同定」は本研究の柱をなすものであり、これを明らかにできたことは大きな意義がある。 責任遺伝子が同定できたことから、今後は研究課題後半の「糖代謝における(責任遺伝子の)役割の解析」に進むことができる。これまで、責任遺伝子が未知のままパスウェイ解析など糖代謝関連の研究を実施してきた。得られた結果についてその都度考察してきたが、責任遺伝子としてCrebbp遺伝子の変異が明らかになったことにより、これまで得た結果の持つ意味が明確になると思われる。したがって、なぜこの遺伝子に変異が生じると血糖値が低い状態で生存でき、抗肥満や高耐糖能を呈するのかを明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
責任遺伝子を同定できたので抗肥満高耐糖能マウスの胚を保存する必要が生じた。しかし、時間的な理由から年度を跨ぐ必要が生じたため支払が次年度となった。したがって、次年度使用額は胚保存用の費用である。このため、当該年度以降分として請求する助成金は、責任遺伝子が糖代謝調節にどのように関与するのかを明らかにするために使用する。
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