2018 Fiscal Year Research-status Report
抗肥満高耐糖能マウスにおける責任遺伝子の同定と糖代謝における役割の解析
Project/Area Number |
17K09893
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
佐藤 貴弘 久留米大学, 分子生命科学研究所, 准教授 (50368883)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 矮小マウス / 高耐糖能 / 抗肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で使用した抗肥満高耐糖能マウスは、グレリン遺伝子欠損マウスを作出する過程で偶発的に得られた自然発生変異マウスである。したがって、このマウスを所有するのは国内外を見ても我々だけであり、もし責任遺伝子を明らかにすることができれば実験動物としても非常に貴重なマウスになると考えらえれる。責任遺伝子とは異常形質の原因となる遺伝子のことであるため、責任遺伝子が明らかになるとその後の学問が飛躍的に進む。 抗肥満高耐糖マウスは、矮小で、眼間が広く、鼻背長の短い特徴的な形質を示したが、このような形質はバッククロス交配を行なっても維持されたことから、何らかの遺伝子変異により生じる形質だと考えた。そこで、2018年度までに遺伝子マッピング解析及び次世代シークエンシング解析を進めたところ、第16番染色体のCrebbp遺伝子上にある1塩基が変異候補箇所として抽出された。そこで次に、CRISPR/Cas9法によってこの変異を正常なC57BL/6Jマウスに導入する確認実験を行ったところ、複数の個体において抗肥満高耐糖能マウスと同等の異常形質が観察されたことから、この変異が責任遺伝子であると同定できた。 次に、もう一つのサブテーマである「糖代謝における(責任遺伝子の)役割の解析」では、下垂体の組織学的解析を中心に実験を進めた。矮小という形質にも関わらず、正常マウスと比べ、GH細胞を含む全下垂体前葉細胞の分布や出現割合に差は見られなかった。すでに実施した血中GH濃度にも差が見られなかったことから、このマウスにおけるGH系は正常であると考えらえれる。したがって、新しい糖代謝調節機構が存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、抗肥満高耐糖能マウスにおける責任遺伝子の同定を目指して研究を進めてきた。前年に引き続き2018年度もCRISPR/Cas9法によってこの変異を正常なC57BL/6Jマウスに導入する確認実験を行った。その結果、十分な再現性が得られたことから、この目的は完全に達成することができたと考えている。 また「糖代謝における(責任遺伝子の)役割の解析」では下垂体前葉の組織学的解析を中心に実験を進めたところ、糖代謝の調節に関わるいくつかの系のうち、GH系の関与は少ないことまでわかった。 以上から、本研究はおおむね計画通りに進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「抗肥満高耐糖能マウスにおける責任遺伝子の同定」は達成されたので、2019年度は「糖代謝における(責任遺伝子の)役割の解析」を進める。 特に、抗肥満高耐糖能マウスの正常時あるいは絶食時の連続的な呼吸商を摂餌行動との関わりとともに明らかにする。また、得られた結果から責任遺伝子を中心とした糖代謝経路を網羅的に調べ、責任遺伝子が糖代謝調節系のどの経路に作用するのか、あるいは未知の経路に関与するのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験動物の繁殖が当初予定よりもわずかに遅れたため、飼料代などの動物維持費分として次年度使用額が生じた。現在、繁殖も順調で、遅れが生じた分も繁殖が進んでいるため、翌年度分として請求した助成金とともに使用する計画である。
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