2018 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス機構による造血幹細胞の老化制御メカニズム
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17K09900
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
仁田 英里子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (80401123)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / エピジェネティクス / 老化 / ポリコーム複合体 / クロマチンリモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
Bmi1過剰発現マウスについて、造血幹細胞の加齢に伴う変化を解析した。 Bmi1を過剰発現することにより、マウスは約2年の老齢でも貧血や血小板減少の進行が軽度で、造血が維持される。骨髄移植解析により、このときBmi1過剰発現 マウスでは造血幹細胞の幹細胞機能、すなわち長期再構築能と自己複製能が増強していることを明らかにした。 老齢マウスにおける骨髄造血細胞分画の詳細な解析を行うと、Bmi1過剰発現マウスでは最も未分化な静止期幹細胞が含まれるCD41陰性分画が減少し、加齢に伴っ て増加することが知られるCD41陽性の分画が増加しており、造血細胞分画の構成はむしろ老化形質が増強する様に見られた。しかしその中で幹細胞の長期再構築 能を保持している細胞は、野生型同様CD41陰性分画に存在しており、Bmi1は造血幹細胞の見た目上の形質は変えずに幹細胞機能を増強していると考えられた。 つまりBmi1は加齢に伴って造血幹細胞を数的に制御するのではなく、元々存在する少数の造血幹細胞の機能を増強することに貢献しており、また分化については 関与しないか、むしろ老化に似た方向へ制御している可能性を示唆した。これらのマウスの造血幹細胞 を用いたChIPシークエンス及びRNAシークエンスを行ってBmi1の標的遺伝子を同定し、さらには野生型では加齢に伴ってこれらのBmi1標的遺伝子のいくつかが脱抑制して発現が増加することを明らかにした。造血幹細胞は老化に伴ってこれらの分子が発現することで幹細胞性が失われることを示し、Bmi1の過剰発現により抑制を保つことで造血幹細胞が維持できる可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bmi1過剰発現マウス造血幹細胞の加齢に伴う変化について、その生理学的機能や性質についての解析を順調に遂行した。 さらにChIPシークエンスやRNAシークエンスを行い、分子生物学的にもアプローチして分子機構についても明らかにして、結果を論文としてまとめて投稿し、現在査読である。また、代表者は29年度に所属を千葉大学から神戸大学へ変更し、モデルマウスなど動物の移動手続きに数ヶ月を要したが、既に立ち上げに成功し、マウス実験を再開・継続できる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、Bmi1による老化の分子機構を解明し、結果を論文としてまとめて投稿し、査読中である。今後、査読の結果により実験を追加し、来年度中には論文掲載にまで至る予定である。 また、クロマチンリモデリング因子BRMノックアウトマウス造血幹細胞を用いたChIPシークエンス等を行ってBRM欠損によるヒストン修飾の変化を調べ、またBRM ノックアウトマウスとBmi1ノックアウトマウスを掛け合わせてBRMノックアウトマウスの表現形のレスキューを試み、クロマチンリモデリング因子の造血制御に おけるポリコーム複合体PRC1/2の関与の詳細にまで研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
代表者は、29年度7月に所属を千葉大学から神戸大学へ異動しており、実験動物の移動手続きに約半年を要したため、その間、研究費使用計画の大きい部分を占 める動物実験を一時停止している。またそれ以外の実験についても一時中断した期間が生じたため、当該実験にかかる予定であった研究費を翌年度に繰り越し て使用する計画とした。
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