2019 Fiscal Year Research-status Report
ヘパリン起因性血小板減少症の免疫反応特異性解明とそれに基づく最適診断法の開発
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17K09912
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
宮田 茂樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 客員研究員 (20239411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 琢磨 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (20713126)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HIT / ヘパリン起因性血小板減少症 / 血栓塞栓症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に対する世界有数の大規模データベースを構築したHIT疑い患者全国登録調査を活用し、独自のエビデンスを用いた、より明確なHIT診断法の策定にある。 <HIT全国登録調査>様々な疾患領域における臨床的HIT疑い症例のレジストリーを継続し全国324施設から、835症例のHIT疑い患者の登録、ベータベース化を終了した。患者基礎疾患の違いにより、ヘパリン非依存性血小板活性化能を持つ強いHIT抗体の保有率、それに比例した血栓塞栓症合併割合、HIT発症やHIT関連血栓症の発症までの期間が異なることを明確にした。これらを反映させた臨床的HIT診断法の有効性を検討中。 <HITにおける免疫応答特異性の明確化>HITにおけるimmune reactionの特異性をより明確にするため、患者重症度とHIT抗体のseroconversion率の関係を検討するmulticenter prospective cohort studyを実施し、192症例を解析した。外傷重症度スコア(ISS)で15以下、16~24、25以上の3群に分けた場合、重症度が高いほどHIT抗体のseroconversion率が高いこと、また、ISS 16~24、25以上の患者では、ヘパリン投与がflushだけの群でも、seroconversion率が高いことを明らかにし、論文作成中。 <新たな機能的測定法の開発>洗浄血小板を用いない、簡便で標準化でき得る、新たな機能的測定法の開発を進めている。 <本邦の現状に合ったより最適なHIT診断指針の確立>日本血栓止血学会HIT部会において、1990年から2018年末までのHITに関する文献のsystematic reviewを行い、本邦の現状に配慮した、エビデンスに基づいた本邦におけるHIT診断指針に関するガイドラインの策定作業を行い、公開予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
希少疾病であるヘパリン起因性血小板減少症(HIT)について、世界的に見ても大規模な全国レベルでの患者登録(835症例)を得て、データベース化した。また、すべての患者で、機能的測定法による確定診断を得た。ただ、患者領域は多岐にわたり、難解な解析を必要とし、本邦で唯一のデータベースであるため正確性を期して精緻な解析を行っており、慎重に論文化を進めている。 <HIT全国登録調査>患者重症度を考慮に入れた診断法がより有効である可能性が高いため、心臓血管外科、外傷、血液透析患者、血栓塞栓症の治療、予防の目的など、様々な疾患領域で、臨床的にHITが疑われた835症例(全国324施設からの登録)を解析した。基礎疾患の違いによりHIT抗体保有率、HIT発症症状が異なることを見出した。また、患者血清を新たな機能的測定法の開発に利用できるよう倫理委員会の承認の上、患者同意を得て、収集し、感度、特異度を明確にし得るパネル血清を作製した。 <HITにおける免疫応答特異性の明確化>HITにおけるimmune reactionの特異性をより明確にするため、患者重症度とHIT抗体のseroconversion率の関係の詳細を検討するmulticenter prospective cohort studyを実施し、192症例の登録を終えた。外傷重症度スコア(ISS)で15以下、16~24、25以上の3群に分けた場合、重症度が高いほどHIT抗体のseroconversion率が有意に高いことなどを明らかにした。論文作成中。 <新たな機能的測定法の開発>全国登録調査により作製したパネル血清を用い、簡便で標準化でき得る新たな機能的測定法の開発を進めている。 <本邦の現状に合ったより最適なHIT診断指針の確立>日本血栓止血学会HIT部会において、本邦におけるHIT診断指針に関するガイドラインの策定を行い、公開予定。
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Strategy for Future Research Activity |
<HIT全国登録調査>様々な疾患領域における臨床的HIT疑い症例のレジストリーを継続し全国324施設から、835症例のベータベース化を終了した。心臓血管外科、外傷、血液透析患者、血栓塞栓症の治療、予防の目的など、患者基礎疾患の違いにより、ヘパリン非依存性血小板活性化能を持つ強いHIT抗体の保有率、それに比例した血栓塞栓症合併割合、HIT発症やHIT関連血栓症の発症までの期間が異なることを明確にした。国際血栓止血学会(ISTH)年次総会ならびに論文として報告するとともに、この結果を反映させた臨床的HIT診断法の有効性を検討している。 <HITにおける免疫応答特異性の明確化>HITでのimmune reactionの特異性をより明確にするため、患者重症度とHIT抗体のseroconversion率の関係を検討するmulticenter prospective cohort studyを実施し、192症例を解析した。外傷重症度スコア(ISS)で15以下、16~24、25以上の3群に分けた場合、重症度が高いほどHIT抗体のseroconversion率が高いこと、また、16~24、25以上の患者では、ヘパリン投与がflushだけの群でも、seroconversion率が高いことを明らかにした。よって、患者重篤度、ヘパリン投与状況いずれもがHIT抗体のseroconversionに重要であることになり、論文作成中である。 <新たな機能的測定法の開発>洗浄血小板を用いない、簡便で標準化でき得る、新たな機能的測定法の開発を進めている。上記、全国登録調査で収集した患者パネル血清を用いて、感度、特異度の最適化を図る。 <本邦の現状に合ったより最適なHIT診断指針の確立>日本血栓止血学会HIT部会において、エビデンスに基づいた本邦におけるHIT診断指針に関するガイドラインの策定作業を行い、公開予定。
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Causes of Carryover |
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)について、希少疾病にもかかわらず、本研究で世界的に見ても大規模な全国レベルでの患者登録(835症例)を得て、データベース化した。また、すべての患者で、機能的測定法による確定診断を得た。ただ、患者領域は多岐にわたり、難解な解析を必要とし、本邦で唯一のデータベースであるため正確性を期して精緻な解析を行った。この結果を2020年7月に開催される、この領域で最も重要な国際血栓止血学会(ISTH)で発表できるタイミングで解析を終え、抄録登録するともに論文化を進めている。ISTHは、HITの国際的専門家が全員集まる場であり、最終的な論文としてまとめる際に、貴重な議論、アドバイスが得られることから、本研究を延長した。 また、洗浄血小板を用いない、簡便で標準化でき得る、新たな機能的測定法の開発の目途がついた。これは、HITをどの施設でも的確に診断しうる検査ツールとしてとても重要となるため、上記、全国登録調査で収集した患者パネル血清を用いて、感度、特異度の最適化を図ることとする。
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Research Products
(4 results)